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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第三章「コンビニオーナーの異世界改革!」

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第三十五話「明日へのプロローグ」①

 ヘッドセットをむしり取るように投げ捨てて、ごろりと横になろうとして、すぐさま起き上がる。

 さすがに、これじゃカッコつかないから、頑張る!

 

「ふぅ……お疲れ様でした。二人共すまないね。結局、僕が全部仕切ってしまったけど、アレで良かったのかい?」


「いや、実に見事なものだった……。お主の言う通り、奴ら揃いも揃って手練の交渉人共だったが。それをああも容易く手玉に取って、最終的にはすっかり場を和ませて、相手と信頼関係を成立させ、相手方の要求……軍事同盟とやらを取り下げさせて、こちらの一番の要望、リョウスケ殿の安否確認の約束をきっちり取り付ける……。しかも、これならば相手への表敬訪問も兼ねることになるから、相手もちゃんと面目が立った……。お互い、損はしていない上に、双方納得の結果。……うーむ、ここまで見事な成果を見せつけられると、ぐうの音も出んわ。お主もとんだ食わせ物じゃな」


「そ、そうですね……高倉先生! さすがです! 最高でしたっ! 交渉ってのは、こうやって信頼関係を築き上げて、歩み寄って、最後にお互い笑顔で納得、それが理想……言うのは簡単だけど、それがどれだけ難しい事か……。いやはや……もう私は、隣で黙って座っているだけで、十分でした。まさに置物だったけど、置物上等って感じです。この分だと、オルメキアとの直接交渉も高倉先生がいれば、すんなり話が進みそうよねー」


 クロイエ様、すっかり口調がお子様モードな上に、やたら雑になってる。

 なんかもう緩みきって、陛下モードもすっかりオフになってしまったようだった。


「ああ、お隣さんね……そんなに難儀してるの?」


「うむ、帝国の属国ルメリアとの戦いで大勝した為に、例の使徒が先頭に立って、煽りまくっておってな。国家元首たる者もいることはいるのだが、完全に使徒と聖光教会に国を乗っ取られたような状況になっているようなのだ。むしろ帝国側から、我々に停戦の取りなしをして欲しいと秘密裏に訴えかけてきていたくらいなのだ……」


 うわぁ……完全に泥沼になってるじゃないか……それ。

 

「なるほど……今の帝国の状況からすると、もう属国の支援なんてやってられる状況じゃないから、全力で足抜けしたいんだけど、オルメキアは、水に落ちた犬は叩けとばかりに、調子乗ってイケイケって訳か……。そうなると僕らへ仲介を求めてくるってのは納得だ。上手く仲介して停戦交渉をまとめれば、今回の件も含めて、帝国への大きな貸しになるな……」


「お主もさっそく色々考えておるのじゃな……。もっとも、このコンビニのおかげで、オルメキアとの物のやり取りが停滞しておってな。挙げ句に今回の件で、完全に物流が絶たれておるから、向こうも物資が干上がりかけているようなのじゃ。あの国は戦の強さと、強兵に定評があるのだが……不毛な山ばかりの地であるから、食料生産力となると常に心許ないのじゃよ。さすがに、ようやっと向こうもこちらの話を聞く気になってくれたようでな……緊急会談の要請が届いておる。まぁ、そう言う話なら、そっちから出向けと言っておいたから、そのうち代表者がここまで出向いてくるであろう。その時は、またよろしく頼むぞ」


「なるほどね……この調子じゃ、僕の仕事は山積みだ……。それに、コンビニの仕事もあるしなぁ……二足わらじも、相当きつくなりそうだな。……まぁ、引き受けたからには目一杯頑張るけどね」


「安心せぇ……我らもお主に全て頼り切るつもりは無い。細かい政務や雑務は今までどおり、官僚や貴族共に任せておけばいい。お主はクロイエの名代……国内の有力貴族や外国勢との交渉が主な仕事と思って良い。親衛隊の奴らも我が相手するから、今まで通りコンビニの仕事も続けてもらって構わない。もちろん、何か思いついたら、いくらでも提案してもらって良いぞ?」


「ははっ……まぁ、これまで通りでいいってことなら、そうさせてもらうよ。要は対外的な要職……そんなもんなんだろ? でも、コンビニの仕事も少しは楽がしたいところだねぇ……」


「なぁに、我々もこれまで以上に、高倉オーナーのお店のお手伝いはさせていただきますよ。明日辺りに、我々商人ギルドの精鋭達の第一陣が到着しますからね。従業員不足については、一気に解決すると思いますよ。私もやっとワンマン体制から、開放されて多少手が空きますから、今までオーナーがやっていた日本への発注や資材管理、シフト管理などもお任せしてもらって構いませんよ」


 パーラムさんが良い笑顔で僕の肩を叩きながら、頼もしいお言葉をかけてくれる。


「それまじ? いやぁ……パーラムさん、ホント助かるなぁ……精鋭ってどんな人達なの?」


 パーラムさんは腹黒い人だけど、逆に信頼を裏切ることは絶対にしないって、僕も断言できる。

 信頼関係はお金じゃ買えない……その事を知るが故にだってのは、解るからね。


「そうですね……。私直属の事務員やギルド専属の商人、派遣従業員と言ったところで、ざっと十人ほど手配させてもらいました。いずれも何処へ行っても即戦力のベテラン揃い……派遣従業員への給金については……こんなもんでどうでしょう?」


 言いながら、なんかもうすっかりパーラムさん愛用品になってるソーラー電卓にパチパチと数字が打ち込まれる。

 時給換算1200円相当……ロメオ王国の一般アルバイト店員の相場の二倍ってとこか、それなら、悪くない……。


 サービス価格やら、無償でとか言わない辺り、パーラムさんもよく解ってる。

 ただより安いものはない……ただで庇を貸して、いつのまにか母屋を取られる……とか、僕だって御免被るからね。


「まぁ、妥当なところだね。ただ、10人も寝泊まり出来るような宿舎までは、さすがに用意できないよ?」


「ああ、その辺りは問題ありませんよ。村の外れに大きめの丸太小屋がありますよね? アレ、うちの方でドランさん達に依頼して作ってもらってたんですが、そこを商人ギルドの宿舎として使わせてもらいます。それにラキソムから数社ほど建築業者を回してもらってるんですよ。ドランさん達の負担も少しは減らさないといけませんし、これから道路整備に建物の増築と色々需要がありそうですからね。それに日本から小型の重機ももっとたくさん取り寄せません? お試し用のショベルカー……非力なエルフやミャウ族でも、ドワーフ並みに働けるって、評判なんですよ?」


 そういや、そこそこ大きい倉庫みたいなのを作ってたなぁ……。

 何のために作ってるのかと思ったら、そう言うことだったのか。


 それにすでに建築業者まで、呼び寄せてるとか……手回しがいいなんてもんじゃないな。

 ……やっぱ、すげぇな……この人。


「相変わらず、用意と手回しがよろしいことで……さすがパーラムさん」


「いやいや、それほどでも……用意の良さに関しては、高倉オーナーには敵いませんよ。まったく、向こうの世界で魔法のように大金を用意して、金の力で日本政府すら黙らせるとか……ああ、例の日本政府にも解らない隠し口座の話、私も興味あるんですが。向こうの世界で、普通に銀行口座作ると税金取られたりするんですよね? 所得税に消費税、法人税……何でも色々な税金があるそうで……実は、鹿島さんに決済用の口座の話をしたら、そんな話をされて、煙に巻かれましてね」


 おう……さすがパーラムさん、すでに打診してたのか。

 たぶん、こっちの物を売った際のお金をどう扱うかって話で、そんな流れになったんだろう。

 

 どうも、鹿島さん達も僕のコンビニへ商品代金とかを全部肩代わりしてるのは、こちらの世界の金などが流入して、相場が崩れるのを予防するって意味もある……僕はそう言うふうに見ていた。

 

 だからこそ、僕の闇ルートでの換金……金や宝石の横流しってのは、向こうにとっては相当な脅威だと踏んだんだけど、案の定って感じだった。

 向こうがお金の話を今後しません宣言したのは、そう言う意味なんだろう。


 まぁ、今頃躍起になって、僕の資金の流れを追ってるかも知れないけど、闇の世界は表の世界と違って、割とアナログなんで、さすがに追いきれないだろう。

 そんな甘い相手じゃないからねぇ……。


「……思いっきり、脱税前提じゃないですか。パーラムさん、真っ当に取引する気あるんですか?」


「そりゃ、真っ当に取引するに決まってますよ。けど、何事も表があれば、裏もある……そこはそれ。適材適所で使い分ける……当然じゃないですか」


 日本と正式に取引しながら、裏ルートの交易ルートも構築して、ダブルスタンダードでの交易を始める気だな……こりゃ。

 

 ……さすが、下衆いよ! パーラムさん!


「パーラムさん、そちも、ワルですのう……はっはっは! けどまぁ、節度のある取引をお願いしますね。向こうもそんな派手に金とかが流入すると、大変なことになったりしますからね」


「あはは……お互い悪でございますなぁ。そうですねぇ……商売とは清濁併せ呑むもの……悪人も善人も等しく商売してこそ、公正な商売人と言うべきでしょう。もちろん、相手を困らせるような商売はご法度……なるべく皆が、お互いよい取引だったって言えるような商売が理想ですよね。そう言う点では、高倉閣下の交渉は実に良かった……満点でしたよ」


 パーラムさんがそう言うと、お互い笑い合う。

 うん、パーラムさん、貴方は僕と完全にご同類だよ……始めて会ったときから、そう思ってたけど。

 

「……まったく、貴様らこそ、以心伝心で仲がよいのう……。パーラム殿、何かと助かるぞ。先の交渉も……お主らがケントゥリ殿を宰相として、真っ先に認めてくれたおかげで、話がスムーズにまとまったようなものじゃからな」


「いえいえ、うちとしては、もう高倉閣下に全力で乗っかっていく方針ですから。日本政府もなかなか、交渉しがいのある相手ですから、全く面白くなってきましたね。どうも、こっちでは二束三文のゴミ同然のモノが、向こうでは莫大なお金になることもあれば、逆もまた然り……高倉閣下の話からすると、そんな儲け話の匂いがしてましたからね。向こう側の裏の世界の住人とやらとも、是非コネを持ちたいところですね」


 やっぱ、パーラムさんって、こええぇえええっ!

 

 さっきの僕の話から、もうそんな儲け話を見出したのかよ……。

 しかも、メチャクチャ鋭いところを突いてきてるし……。


 恐るべき嗅覚……まさに商才の鬼。

 こんな人を敵に回すなんて事にならなくてよかった……。


 もう絶対……今後共、仲良くしないとだねっ!


 持ちつ持たれつ、末永く……商人ギルド、万歳ーっ!

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