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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第三章「コンビニオーナーの異世界改革!」

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第三十四話「ロメオ王国宰相高倉健太郎」③

 まぁ、勝ちと言ってもドヤったりはしない。

 だから、僕は鹿島さんへ敢えて軽く笑いかける。

 

「まぁ、とにかく、お金のご心配は要らないって事ですよ。いざとなれば、僕はそちらの世界のお金をいくらでも用意する手立てがありますから。ただ、今の鹿島さん達とのお付き合いも僕としては、さしたる不満は持ってませんからね。何も喧嘩別れしたいなんて言ってません。ただ、僕らも席を立とうと思えば、いつでも出来る訳なんですよ……そこは、重々承知頂いた上で、お話合いをしたいと思いまして……。帝国のスライム対策も熱反応で判別できるなら、こちらの世界側の魔術技術を応用すれば、独力での対策も不可能じゃない……ですよね? アージュさん」


 まぁ、スライム対策云々は、ハッタリなんだけどね。

 アージュさん、ちゃんと乗ってこいよ?


「う、うむ……そうだな。我もその研究に着手した所で、実現の目処もついておる! 上空から熱で見分ける……その発想には驚いたが。似たような事なら、我らエルフにも出来る……暗視能力の応用、あれはそう言うことであろう?」


 うん、アージュさん……ナイス、ハッタリ。

 しかも、ちゃんとサーモビジョンの本質を理解してる……さすが、さすが。

 

 そんな話、これっぽっちもしてなかったけど、上手くそれっぽく話を合わせてくれたな、上出来。

 さて、これで更に一枚向こうのカード……軍事支援カードを無効化したぞ。


 僕ら側の戦力自体もアージュさんと、テンチョーと言うSSR級の強豪がいる上に、日本側が開発したスライム対策すらも取り込んでいるとなれば……日本側の軍事支援がなくとも、十分以上に戦えると向こうも理解しただろう。


 当然、過大評価されているだろうと言うのは解っているし、ここで日本側の軍事支援を失うのは、ちょっと厳しいのも事実なんだけど、そこは微塵にも出さない。


 クロイエちゃん……交渉ってのは、こうやるんだっての。

 

 嘘やハッタリ、札束、コネもフル動員、時には武力すらもチラつかせて……テーブルの上ではニコニコ笑顔で、水面下で無言の応酬。

 

 そんな中で、互いの譲れないラインを見極めた上で、最終的な合意ラインでの妥協。

 そこに辿り着くまで、どこまで有利な条件を勝ち取るか……それが交渉ってもんだ。

 

 こればっかりは、どれだけ修羅場をくぐってきたか……人生経験がものを言う世界だ。

 

 もっとも、勝ちすぎない……これも、また重要。

 相手に禍根を残したり、不満を与えたままだと、後々の付き合いに響く。


 だから、譲れるところは気持ちよく譲ってやる……相手にも華を持たせた上での、双方納得の合意を目指す。


 これが理想的な交渉ってもんだ。

 まさに、狐と狸の化かし合い……こんなもん、子供の出る幕じゃないわな。

 

 ちらっと視線を送ると、クロイエちゃんももう、呆然と僕らの交渉を見守ってるだけ。

 

 微笑みかけると、大きく頷かれる……御大将は、ドンドン行けとのお達しだ。


「やれやれ。さすが、高倉様……噂通り、お見事なまでの交渉手腕です。異世界で宰相を任ぜられるだけはありますね。クロイエ様もなかなかどうして、人を見る目があるのですね。私どもとしては、もう完敗です」


 鹿島さんがため息と共に、完敗宣言……さすが、引き際を心得てるねぇ……。


「わ、私も思いつきとか、好みで決めた訳ではないからな。この者は何が何でも臣下に迎え入れるだけの価値がある……そう思わせるほどの男だっただけの話だ。すまぬな……鹿島殿、この者日本政府の中枢にでもいれば、さぞかし貴国の力となっていただろうに……」


「いえいえ、高倉閣下が我々の敵に回らなかった事に、胸をなでおろしております。そう言う訳ですので、正直に申し上げますと、高倉閣下へのご支援は、我が国の安全保障上の保険と言う意味合いもあるので、それを一方的に打ち切るなどとんでもない話です。上の方も出来る限り、穏便な安全保障を求めておりますので、出来れば、今度も変わらぬお付き合いをお願いしたいのですが、如何でしょう?」


 ……要するに、日本側の支援を交渉材料にするつもりはない……鹿島さんはそう宣言している。

 その言質を取れただけでも、まずまずと言っていいだろう。

 うん、ここがお互いの妥協ラインってとこだな。

 

 あとは、こっちが頭を下げる番……これで良い。


「ええ、そこら辺はこちらこそよろしくと言った所です。それでは、改めてご相談なのですが……。そちらは我が国の先王、涼介陛下の情報をお持ちのようで……。その情報は僕らにとっては、極めて重要な情報です。ただで教えろとは言いません。何かご要望や条件があるならお聞きします。こちらで出来る範囲なら、相応の譲歩も辞さない構えです」


 ここは、完敗宣言とかされたからって、調子には乗らない。

 相手に、華を持たせるべき局面だ。

 

 考えてみれば、向こうには僕の両親だっている……人質に……なんてやられたら、僕としてはお手上げだった。

 

 そこまでするとは、あまり考えたくはないけど、穏便な安全保障と言う言葉の意味……多分、それがないと穏便でない手段に走る可能性があると言う、鹿島さんなりの良心的なメッセージだ。

 

 形式上でもいいから、僕が弱みを握られているような状況にする事で、なりふり構わない横暴を止められる……そう言う事なら、現状維持が一番だった。

 

 まったく、鹿島さんの相手なんて、脳ミソフル回転させないと追っつかないな。

 出来れば、あんまりやり合いたくない相手だ……向こうもそう思ってくれたなら、幸いなんだけど。


「かしこまりました。……との事ですので、笹崎さん、これから先は誠心誠意、人の足元を見るような事は止めましょうか。脅すような事を申しあげてしまった事を、心から謝罪いたします」


「そうですな……高倉閣下、私もこれまでの非礼を詫びよう。すまなかった……以降、私は口出ししないつもりだ。それでいいかな?」


「はぁ、その辺は別にご遠慮なさらずに……。怒鳴らなきゃ、いくらでも口出ししていただいても構いませんよ」


「ははは、強面の恫喝担当としては、これ以上、口出しする必要なぞ無いからね。重ね重ねすまなかった」


 ありゃ、自分で恫喝担当ってぶっちゃけちゃったよ。

 やっぱ、そう言うことだったのね。


「解りました。では、お互い交渉のテーブルに付いた所で、ひとまず、そちらの要求を聞きましょう」


「こちらの要求ですか……。我々としては、異世界の住民相手の商売のモデルケースデータと、交易の窓口たる商人ギルドの皆様とのコネと信頼関係が得られた事、新型無人戦闘システムの異世界での実戦データだけでも、十分な収穫ですからね。戸塚一佐、現状の帝国のテロ対策については、どうでしょう? ここ数年、大人しいものですが、今回の件や、高倉閣下のコンビニからの日本の商品の流入で、我々の介入に帝国が勘付いている可能性がありますので、報復テロの可能性もあるかと思いますが」


「……そうですな。あそこまで大規模の擬態生物との交戦データが取れたのは、非常に大きいですね。副産物とは言え、無人兵器群の搭載AIの劇的進化も、これは画期的どころの騒ぎではありません。それにアレだけの数の擬態生物を駆除出来たのであれば、当面、帝国も我が国へちょっかいを出すどころではないでしょう。帝国も商人ギルドの度重なる経済制裁で大きく力を減じた上に、報復をしようにもその手駒がないのでは、為す術などないと考えてよいかと。現状、我が国に対する帝国の脅威を大きく減じたと考えても良いかと」


「それは実にいい話ですね。つまり、我々はすでに十分に見返りを得ている……。出来れば、帝国との直接交渉の上で、不可侵条約程度は結びたいところでしたが。お話を聞く限りでは、なかなかに難しいようですね。ひとまず、当面の安全は確保できているなら、そのあたりで妥協すべきですね。笹崎さん、ここで無理を言って、先方の機嫌を損ねるのは、かえって損だと思いませんか? むしろ、こちらが礼を尽くす番ではないでしょうか?」


「そうですな……鹿島儀官。ははは……貴女がそう言うのであれば、そう言うことですな」


 うーん、派遣オペレーターみたいな雰囲気だけど、鹿島さん自体が、相当なポジションなんじゃないかな……。

 多分、この三人の力関係としては、鹿島さんぶっちぎりのトップだ。

 

 どうみても20代で、若そうな人なのに、外務省のベテラン事務官を上回る権限とか、ホント何者なんだか……。

 

「はい、そう言うことですね。確かに、クロイエ陛下の肉親たる涼介氏の情報……それを交渉材料にするのは、人道的見地にもとると言えますからね。ただ、この場で私達がいくら事実を説明しても、その真偽を証明するのは難しい……故に涼介氏の安否について判断する材料にはならない……違いますかね?」


 うん、鋭いところを突いてきたね。

 まぁ……そんなもんだよな。

 

 状況的にリョウスケさんが、生きていないってのは、何となく解る。

 それは、当然クロイエ様も言われるまでもないんだろうけど。

 

 どんな状況で、亡くなったのかとか、ちゃんと説明の上で、遺骨なり、お墓の一つでも見せらないと、肉親の死なんて受け入れられない。

 

 僕だって、親しかった爺さんが亡くなった時、その知らせを聞いても全然ピンと来なくて、涙一つも出なかったんだけど……。

 

 仕事を早めに切り上げて、その日のうちに群馬にとんぼ返りして、居間で白い布を被せられて、横たわる爺さんの亡骸を見て、やっと涙が出てきて、子供のように声を上げて泣いた……。

 

 ああ、爺さんとは、もう二度と話も出来なくなったんだと……そう実感して、始めてその死を受け入れる事が出来たんだ。

 

 葬式もだけど、死者の遺体との対面……それは、死を実感するためには、大切なプロセスだと言える。

 人間、身近な誰かの死を受け入れるには、相応の決定的な何かがないと、納得なんて出来ない。


 だからこそ仮に、この場で涼介さんが亡くなっていると言われても、クロイエちゃんが信じるかどうかは別問題なのだ。

 

 嘘を付いているのではないか? 本当は生きていて、都合が悪いから、或いは本人の意思で死んだことにして欲しいと言われている……そんな可能性だってある。


 残されたものは、物的証拠を突きつけられない限り、心の何処かで希望を持ち続けてしまう。


 否定しようと思えば、いくらでも否定する余地がある以上、多分、クロイエちゃんは絶対に納得しない……まったく、難しい問題だった。

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