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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第三章「コンビニオーナーの異世界改革!」

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第三十二話「今日も僕らは平常運転」①

 でも、帝国の侵攻は……あれを予見しろとか、そこまで求めるのは酷じゃないかな?

 とも思う……それに、アージュさんも思いっきり自分のこと棚上げしてるんじゃないかなー。

 

「まぁまぁ……。こんな小さい子に、そんな多くを求めちゃ駄目だろ……。それこそ、そんな国一つを取り仕切るなんて、大人のフォローが必要。アージュさんだって、色々憂いてたみたいだけど、だったら、進言したり、苦言を呈する義務があったんじゃないの? なんかもう言いたい放題言ってるけど、それだけ解ってて、これまで何も言わずに黙って見てたとか、それも問題じゃないの?」


「その通り……我にも大いに責任がある。本来は、誰か大人が支えてやるべき……ごもっともな話じゃ。我もコヤツが赤子の頃から知っておる故、何とか支えてやりたかったのじゃがな。我は長生きしているだけの古エルフ故、どうしても他者とは価値観が違う。人のまつりごとや経済などと言う話となると、我は門外漢……故に余計な口を挟むべきではないと考え、実際、さしたる力になってやれなかった……。ウルスラ達も似たようなものだ。奴らは戦の事しか考えておらんからな……師とするには、話にもならん。我らは、リョウスケ殿と言う偉大な指導者がいて、始めて一つにまとまり、各々の才覚を発揮するそう言う集まりに過ぎん。リョウスケ殿に後を託されたものの、我らはその不甲斐なさを晒すだけであったのだ……無能と笑うがよい」


 アージュさんの苦悩……。

 まったく、世の中ってのはままならない……誰もが上手くやろうとして、それが上手くいかない。

 良くある話だけど……それで済ませていい訳がないよな。


「まったく、宮仕えってのは大変よね……。生まれながらの王様ってのも。けど、アージュちゃんって、長いお耳の通りエルフって訳なのね。ランシアちゃんとか同じって訳か……。それで人間の国の王様に、あれこれ口出しってのも難しいでしょう」


 俯くアージュさんの隣に和歌子さんが座り込むと、優しくその背中に手を置く。


「いえいえ、アージュ様は私達と違って、古エルフと呼ばれる特別な種族です。不老不死とも言われています……かれこれ、1200年前の神の時代から現存している数少ないお方です。その権威は相当なものなのです。もっとも、指導者的な役割とか、のらりくらりと逃げちゃって、皆がっかりしてるんですけどね。もっとも、古エルフの方々って皆、そんなのばっかり……。無駄に、長生きしてると、その辺どうでも良くなっちゃうんでしょうね……」


「ラ、ランシア……貴様も、容赦ないのう……。む、無駄とか酷いんと違う? のう、ちょ、ちょっとくらい誉めてくれてもいいのだぞ?」


「まぁまぁ、でもそうなると、あたしなんて若造もいいとこよね! なんか、ちっこくて可愛いから思わず、ちゃん付けで呼んじゃったけどさ」


「ん? ああ、ワカコになら別に構わんかな……そもそも、お主も只者ではあるまい? 先程は、忙しいところに酒を寄越せなど、わがままを言ってすまんかったな……っとと、悪いな」


 和歌子さんがアージュさんの髪の毛をタオルでゴシゴシと拭きながら、櫛で髪を梳いてくれている。


 ……つか、何なの? 和歌子さんって、こんな一面もあったのか……まるで、いいお母さんみたいだ。


「あとで、お着替えもしようね。これじゃ、風邪引いちゃうでしょ」


「重ね重ねすまんな……。まったく、日本の酒という物は美味すぎる。ついつい飲みすぎてしまって、醜態を晒してしまった」


「あははっ! あたしもお酒大好きだからさ! まぁ、1200歳なんて言うんなら、色々おもしろい話とか知ってそうだよね。あとで一緒に飲もうか! アージュちゃんとなら美味いお酒が飲めそうだわ! クロイエちゃんはお子様だから、一杯って訳にもいかないけどね……あとで色々話くらい聞かせてね」


「そうだな……ワカコは話がわかるヤツよのう……」


 和歌子さんって凄いよなぁ……一瞬で誰とでも打ち解けちゃうし、クロイエ様も普通に子供扱い。

 てか、アージュさんって、1200歳かよ……1000歳どころじゃなかったのね。


 でも……考えてみれば、僕にとってはクロイエ様は、所属する国のお姫様って訳じゃないのか。

 

 もちろん、敬意は払うべきかもしれないけど、本人が気にしないでいいって言ってるなら、別にそこまで畏まったりする必要もない。

 

 さっきまでみたいな、いいトコの世間知らずのお嬢様でも相手するような気分で、接したって別に気分を害したって感じでもない……なら、それでいいんじゃないか?

 

 多分、和歌子さんみたいに、年上ぶって、思いっきり子供扱いしたって問題ないんだろう……。

 実際、そうなんだからさ……僕が色々、ややこしく考えすぎなんだ。

 

 子供には、無条件で頼れる大人ってのが必要……。

 クロイエ様も両親も居ない中、必死に良き君主であろうと……リョウスケさんって言う偉大な父親の背中を追って、頑張ってたんだからな。

 

 支えてくれる大人も……アージュさんの話だと、ほとんど居なかったみたいだしなぁ。

 

 けど、ロメオ王国の宰相とか……事実上の最高権力者じゃん。

 日本で言えば、総理大臣みたいなもん……それをいきなりやってくれなんて……ムチャだろ。

 

 そんなパッと出のヤツ……国内から、それなりの反発だってありそうだし……その辺は、織り込み済みなのだろうか……?


 そもそも、そんなの責任重大もいいところ……さすがに……ねぇ。


 チラッとクロイエ様を見ると、すっごい期待に満ちたような感じで目線を返される。

 思わずじっと見つめ合う。

 

「……よし、とりあえずご飯でも食べようか! サントスさん、ごめんね! もう準備できてるんだよね」


 ああ、もう難しく考えるのは止め止め!!


 もう、適当にご飯でも食べながら、ゆるーく今後の話でもすりゃいいんだ!

 先送りです! 先送りー!


「……何やら立て込んでた様子だったから、一応空気読んだんだが、出来れば冷める前に食って欲しいとは思ってた。つか、話は俺もここで聞いてたんだが、これは試食じゃなくて、むしろ、本番って事でいいんだよな?」


 厨房から、生真面目な顔でこっちの様子を伺ってたサントスさんが、苦笑しながらそんな事を言う。


「そ、そうだね! あははははっ! うん、本番、本番……違いないっ! あと、酒頼むよ! 酒っ! もうシラフじゃやってらんない! ウイスキー、暁ってのがあったでしょ! 知ってるよ? 料理しながら、時々カパカパ開けてるの! まったく、ドワーフってのは呑んべぇばっかりで困るね!」


「ん、ああ……暁か? あるぞ。珍しいなオーナーがこんな強い酒なんて……つか、意外と目ざといんだな。こっそり食材の発注表に混ぜて、日本から取り寄せて、一人でチビチビやってたんだが……バレてたのか。はははっ! すまんな……面目ない」


 言いながら、頭をかいてるサントスさん。

 

「僕が気づかないとでも思った? まぁ、別に気にしないけどね! ああ、クロイエちゃん、いいかい? これから始まるのは、駄目な大人の見本市だ! そこの三人、こうなったら酒盛りに付き合ってくれるよな?」


 言いながら、早速、どうぞどうぞ一杯……なんて、お互い始めてたアージュさんと和歌子さんを指差す。

 離れたところで、座ってたランシアさんが私も? と言いたげに自分を指差す。

 

「あら、暁なんていいのあるじゃん……。何よ、あたしを酔い潰そうとか考えてる?」


「いーえ! 僕は自分の命を惜しむタイプでーす! クロイエちゃん、君はオレンジジュースでいいかな?」


「あ、ああ……それでいいが。い、今、私のこと……」


「ああ、もういいよ! 僕にとっては、君は世間知らずのバイトお嬢様のクロイエちゃん! ちょっと呼び方が変わっただけ! 君も僕に言っただろ? 何があっても態度を変えるなって! だから、悪いけど今日の君の歓迎会は、国賓待遇とかよく解んないのじゃなくて、いつもの僕らの平常運転でやる! ランシアさんも、暇そうなヤツに声かけてきてよ! 食堂で飲み会やってるぞーって! サントスさん、今日はもう僕の奢りだ! まずは、クロイエちゃんにお子様ランチとバリヤースオレンジ! 僕はいつものサントスカレー! おつまみもジャンジャン作ってくれ! 酒が足りなきゃ、コンビニ行ってツケにしとけばいいよ」


 もう、堅苦しいことはやめやめ!!

 ヤケになったんじゃないぞ……! これが平常運転なんだよっ!

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