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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第三章「コンビニオーナーの異世界改革!」

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第三十一話「僕と、そして君の名は」③

 クロコちゃん=クロイエ様。

 

 気付くも何も……うん、思い当たるフシなんて、ものすごーくいっぱいあったよ?

 

 話をしてて、ところどころ引っかかってたところが、パズルのピースをハメるように全部埋まっていく。

 

 そうだよなぁ……空間転移とか出来るんだから、次の瞬間にひょっこりやってきても、不思議じゃないって自分でも言ってたじゃないか。

 

 ひとっ飛びでワープしてきたから、百キロ以上のジャングルの長旅なんて華麗にスルー!

 当然、服も汚れないし、疲れもしない。


 お供の連中なんて、居なくても別に困りゃしない……ヤバそうになったら、さようならーなんだもん。

 

 ……こんな人に護衛なんて、要らない。

 

 誰もついていけないんだもん。

 政務とかほっぽり出してても、その気になればどんな遠いところでも日帰り余裕。

 

 ラナさんも、二人きりになった時に、思いっきり気付いちゃったんだけど、口止めされてたとか、そんなんだったんだろう。

 お店で、クロコちゃんを見かけて、ワタワタとテンパってたお客さんもラナさんが、何事か囁くと素知らぬ顔になってたけど、あれもそう言うことか。

 

 ラナさん、クロコちゃんに、ミスを指摘したり、お説教してる時すっごいアワワって感じで、気にはなってたんだ。

 

 うーん、可哀想なことをした……僕だったら、胃に穴が空いてたな。

 考えてみれば、合間合間に聞いてたクロコちゃんのプロフィールも、事前に聞いてたクロイエ様のプロフィールと完全一致。


 ……なんで今の今まで、気付かなかったの? 僕は……。

 

 これはもう、アレだ。

 偉そうに説教とか、顎でこき使ったり、不敬の極みを散々やらかしてたから、その可能性を考えない、考えないようにってしてたんだ。

 

 典型的な、正常性バイアスってやつじゃん……!


 自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の心理的特性。

 自己弁護するつもりもないけれど……人間としては、至って普通の反応とも言える。


 この正常性バイアスと言う言葉が有名になったのは、東日本大震災の頃から。

 

 津波警報が出て、避難命令が出てるのに、二階にいれば大丈夫って、家に留まって呑気にネット中継してたら、二階まで沈んで、どうにもならなくなった。

 

 ……なんてのや、津波を撮影に行くと称して、避難どころか、津波に向かってタクシーを走らせ、案の定と言った調子で津波に巻き込まれそうになって、命からがら逃げ惑う羽目になったマスコミ人など。

 動画サイトで有名になったのだけで、いくつもの例がある。

 

 これらは、本人が生還できたと言う奇跡的な例で、あの地震では津波警報が出ている中、7割の人が自宅で動かないと言う選択をしたと言う……。 


 御嶽山の噴火の際も、この正常性バイアスによる犠牲者は確認されており、この噴火の死者は、58人と火山噴火での犠牲者数が戦後最大となってしまったのだけど。

 

 死者のうち、半数くらいがカメラやスマホで噴火の様子を撮影していて、音速近い火山弾の雨により致命傷を負い、命を落とした事が解っている。

 

 客観的に考えて、目の前で火山噴火なんて起こったら、次に起こるのは灼熱の火砕流か、火山弾の雨あられ、カメラで撮影とかそれどころじゃないはずなんだけど。


 少なく見積もっても、30人近い人々がその場で棒立ちでカメラを向けると言う自殺行為を選択している。

 

 その場に伏せるとか、頭部を保護する……それだけでも、少しは違っただろうに。

 いずれも傍から見たら、バカなの? としか思えない話なんだけど……。

 

 本人は、都合の悪い情報には目をつぶって、自分だけは大丈夫だって、自分に言い聞かせてるから、自分が如何に危険な状況なのか、理解しようとしなくなるんだ。


 ああいった非常事態で、自分の身を守るために冷静な行動を取れる人なんて、10~15%程度だと言われている……であるからこそ、これは至って自然な反応。

 要するに、現実逃避みたいなもんだ……人間ってのは、ヤバイ時ほど、バカになる……。


 いやはや……僕が陥っていたのは、まさにそれ……。

 ちょっと考えれば、クロコちゃん=クロイエ様って解りそうなものなのに……。

 

 全力で、その結論にたどり着かないようにって、必死で別の可能性を追い求めてたのだから、世話がない。


 だが……もう、逃げ場はない。

 

 僕は、自分でその結論に達していた……誤魔化しようもない。

 ……誤魔化しようが……ないんだ。

 

 うぉおおおおおっ!

 ……やらかした! やらかしてもうたよっ!!

 

 なんか、変な汗がダラダラと頬を伝っていく。

 クロイエ様の様子をチラッと見ると、思いっきり頭を抱えてる……。


 そりゃそうだよ……こんな無礼な狼藉者……こりゃもう、どうやって処刑しようかとか、考えてるに違いないって!

 とりあえず、ここはもう謝罪! 謝罪あるのみ!

 

「ハイィイイイッ!」

 

 奇声を上げつつ、その場で華麗にバク転をすると、つま先、膝の順番で地面に足をつき、流れるように正座の姿勢になると、腰を折りながら両手を付き、躊躇いなく畳に額を叩きつける。

 

 そう……僕は、完璧なバク転ジャンピング土下座をキメたのだ!!

 

 まだまだ不十分とは言え、鍛えあげビルドアップされた肉体と、魔猫族のハイスペックな身体だからこそ、出来るアクロバットDO・GE・ZA!

 

 ただの土下座じゃ駄目だ……難易度の高いアクロバティックな土下座でこそ、誠意が伝わるというもの!

 

 その様子を見て、和歌子さんがゲラゲラ笑ってる。

 ……けど、文句なんて言えないZE。

 

 クロコちゃん改め、クロイエ様がオロオロとしながら、アージュさんと僕を交互に見つめてる。

 僕は……もうひたすらに畳に額をこすりつけるだけの存在となるのみ!

 

「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ……無礼千万、ゴメンナサイ!!」

 

 こりゃ、軽く切腹物だ……ハラキーリ!!

 


「す、すまない……高倉先生、頭をあげてくれないか?」


 その呼び方はやめて。

 もう痛いから……勘弁してください。


「いえ、散々っぱら失礼を重ね、この高倉、どうお詫びしてよいか……お望みとあらば、死を以って償う所存……」


 頭を上げろと言われても、とても向き合えない。

 100%純粋に僕がギルティ!! やらかしまくりもいいトコだ。

 

 どこの世界に歓待すべきお姫様をバイトとしてこき使った挙げ句に、偉そうな説教をかまして、まだまだ君は子供だね! フフン……なんてドヤ顔でやらかすヤツがいる!!

 

 不敬罪で切り捨て御免。

 もしくは腹を切って詫びた上で介錯、さらし首上等なんである!!

 

「アージュ、それにワカコ……。わ、私はどうするべきなのだ? 高倉先生が一向に、頭を上げてくれないのだ。私は、これまでの無礼一切問わないと言っているのに……これ以上、どうすればいいのだ? ワカコは、高倉先生と付き合いも長いのだろう? それなりに扱いに長けているのではないのか? 何とかならんのか?」


「まぁ、ちょっと悪ふざけが過ぎちゃったかなー。オーナー君って庶民根性の固まりみたいな人だから、本物のお姫様に無礼千万の数々やらかしちゃったって、卑下しまくってるのよ。多分、頭の中はゴメンナサイでいっぱいで、完全にループ状態デッドロックになってんだろね……」


「別に、コヤツなんぞ、姫君など御大層なもんではないぞ。ただのやんちゃな神出鬼没のサボり魔じゃろ」


「アージュ、貴様こそ……政にも関わろうともせず、日々呑んだくれたり、引きこもってばかりの昼行灯であろうが……。暇つぶしで遠出するたびに、私を乗り物代わりにしていたのは、どこのどいつだ」


「お前の転移魔法は便利すぎるのじゃ。それに、我はこの大陸のどこでも行ったことがあるからな。我が居てこそ、お前の能力も生きてくるのだ。むしろ、見識が広がったと感謝すべきであろう?」


 とりあえず、アージュさん、このままだと僕はいつまで経っても、頭があげられないから、一度仕切り直してもらえないかな……なんてことを思う。


 まずは赤絨毯のロール敷いて、陛下ご入場ーからやり直し。

 リセットボタンがあれば、迷わずターンってやってるよ!


「ねぇねぇ、オーナー君……クロイエちゃん、困っちゃってるから、土下座はもうやめよう。クロイエちゃんだって、気にしてないんでしょ?」


「そうだな! 高倉先生はもはや、我が人生の師とよんで差し支えない。ほんの短い間に素晴らしく多くのことを学ばせてくれた。その数多くの経験と見地に基づくであろう深い言葉の数々は、我が人生にとって規範とすべくもの。感謝と敬意以外の何を持てというのか!」


「はっはっは! なんじゃ、クロイエ……お主もすっかり、この者が気に入ってしまったのだな。すまんが、我もこの者には命の恩義がある故にな。思わず、古エルフの忠義の誓いの言葉を口走ってしまったのだ。お主には色々世話になったが、我が残りの生涯……死が我らを分かつまで、この者の傍らにいる……我はもうそのつもりだ」


「ちょっ! アージュ……あんた、何勝手な事やってんのよ! と言うか、プリン買って来てって言っただけなのに、なんで高倉先生と一緒に帝国相手に戦って、戦友とか! それ……私がやりたかった! もし、それだったら絶対すんなり話もまとまってたのにー!」


「成り行きでそうなったのだから、仕方あるまい。なにより、古エルフのしきたりじゃからな……命を助けられたなら、その恩義は、生涯変わらぬ忠義を以って、全うする。お主への忠義は半ば、我が主君と認めたリョウスケ殿への義理であったからな。我は今後、ケントゥリ殿の軍師として、その覇道の助勢となる忠臣の一角を為すつもりじゃ……。さすがに伴侶として、などと厚かましい事は言えんが。いつでもこの身の純潔を捧げる所存ではある」


 言いながら、寄り添うように僕の背中にしなだれかかるアージュさん。

 なんか重いよ……物理的にもだけど、精神的にも。

 

 君の中では、もうそんな事になってるんだね。

 僕ね……全然、君のこと受け入れるとか言ってないんだ!

正常性バイアスって、初耳ーって人はググりましょう。

大抵の奴がいざって時は、そうなるんで、そう言うもんだと覚えておくだけでも違うかも?

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