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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第三章「コンビニオーナーの異世界改革!」

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第三十話「灰色の正義と悪」①

「まぁ、そう言うこと。将来、執政者の立場に関わるなら、覚えておいて損はないよ。もっとも、領民が貧しい中、一人贅沢三昧で利益も全部独り占め……とかやってたら、正義の味方とかやってきて成敗されちゃったりするかも知れないけどね」


 なんか、話によるとロメオ王国ってそんな感じらしいんだよね。

 

 私腹を肥やす悪徳貴族に官僚や、暴利を貪る悪徳商人とかが派手にやってると、親衛隊の武闘派連中とかが押しかけてきて、成敗されるとか何とか。


 そんな時代劇みたいな真似がまかり通ってる……これは、ロメオ王国の暗部の一つだと僕は思う。

 

 それなりの抑止力にはなってるかも知れないんだけど、やられる方はたまったもんじゃないだろ。

 

 実際、色々罪状をでっち上げられて、成敗されて、財産も没収されて、旅商人からやり直してるなんて人にも会ったけど……。

 別に悪人って感じじゃなかったもんな……。

  

「ふむ、そのような悪人共は……成敗されて然るべきだと思うぞ。世の中には正義という物が存在するべきだ。私はそう思う」

 

 正義か……確かに、子供のシンプルな世界観だと、正義の味方ってのは肯定すべき存在なんだろうな。


 その商人にしたって、周囲の評判とか考えず、利益だけを考えて、商売相手やお客の事を考えてなかったとか、そんな話をしてたからね。

 

 本人も色々思うところがあったようで、成敗されたのも仕方なかったって受け入れてた。


 けど、僕はその話を聞いて、理不尽だろうって思った。

 色々大変そうだったから、身の上話みたいなのを聞いてあげたんだけど、別に法に触れる真似もしていなかったし、シンプルに安く買って、高く売る……それをやってただけらしいんだけど。


 まぁ、病気の人に高いお金で、効くかどうか解らないような薬草を売りつけるとか、詐欺まがいの商売とか、足元を見て値段を吊り上げるとか、そんなだったみたいではあったんだけどね。

 

 もっとも、本来そんなアコギな商売って、自然淘汰されるもんなんだよな……。

 

 例えば、すぐ壊れるようなガラクタを売りつけて、特に保証もしなければ、不良品交換にも応じない業者とか、アマゾニアとかでたまに混ざってたりするけど、そんな業者からは二度と買わないってだけ。

 

 アマゾニアって、業者自体も評価対象になるから、その手のポンコツ業者って、クソミソにこき下ろされて、撤退ってなるのが関の山。

 

 悪徳商売って、結局長く続けても、自然とお客も離れていって続かなくなったり、方向性を変えざるを得なくなるんだから、別に正義の味方が成敗とかするまでもないんだよなぁ……。

 

 日本でも災害のドサクサで、便乗値上げとかしたようなコンビニやガソリンスタンドなんかも、実際にあったけど。

 そう言うのって、年単位で客も覚えてるから、一時の利益と引き換えに、やがて閑古鳥が鳴くようになって潰れたりとかしてたからね……。

 

 逆にそう言うときに、格安で物資を放出したり、炊き出しとかやってたような商売人の事は皆、覚えてるから、前より売上が良くなったなんて話もあった。

 

 信用や、人と人との信頼関係ってもんは、金では決して得られない……。

 それこそ長年かけて培うもんだから、大切にするべきなんだよな……その辺は、僕も実体験で思い知ってる。


 世の中ってのは、得てしてそんなもんだから、正義の味方気取りの偏った視点の連中なんて、本来要らんのだよ。


「うーん、正義の味方ってのは、要らないと思うんだ。世の中には、社会的信用という目に見えない価値感があるからね。悪い奴らってのは、その社会的信用を引き換えに荒稼ぎしたりしてるから、ほっといても自滅する……そう言うもんだからね」


「そ、そうなのか? だが、悪人がのさばって、真面目な善人が損をするとか……おかしいではないか。悪を裁く絶対なる正義……それは、世の中に必要だと思うぞ」


「正義の味方はともかく……。悪人とか善人とかって、その線引きってなかなか難しいと思うよ。僕が日本にいた頃、悪人って呼ばれる人達とだって付き合いあったけど。あの人達はあの人達なりに、義理とか信用を重んじるところがあってね。まっとうな人達より、その点では信頼できた。真面目に商売してたような人の方が、追い込まれると借金踏み倒して逃げちゃったりするんだよ。そうなると、どっちが善人で悪人なんだか……少なくとも僕の目線だと、まるっきり逆に思えてきちゃうよね」


 実際、銀行マン時代にも、ヤクザ屋さんとか相手に、裏帳簿使ってお金貸したりもしてたけど。

 相手は、こっちも後ろ暗い事やってるのも解った上で、きっちり利子も付けて、必ず返してくれていたからね。


 なにせ、本来、ヤクザ屋さんにすんなりお金を貸すのは同業者くらい……足元見られて、暴利取られるのもザラの中、格安の一般向け金利でお金を貸すようなのは、向こうからしてみれば貴重な存在。

 

 お互い、ここでのやり取りは部屋から出たら、忘れましょう……なんて前置きで、薄暗い別室での融資相談。


 ヤクザ屋さんは、いつも期日になると、ニコニコ笑顔で利子にイロをつけて確実に返済してくれて……良いお客さんだった。

 僕としては、それなりに仲良くやって行きたかったから、割と頻繁にご利用いただいていた。

 

 そのコネは、その後も生きていて、地下銀行にお金を預けたり、ダーティなお仕事をお願いしたり、それなりの付き合いがあったからね。


 僕自身そんな調子なんで、世の中善人も悪人も居ないってのが、自説になっている。

 結局、純白も漆黒もない……全部皆、灰色で、白に近いか黒に近いか……それだけの話なんだよな。

 そして、状況に応じて、白に近づいたり、黒に近づいたりもする。


 だからこそ、善悪の線引きは難しいし、するべきではない……これは、僕の人生経験での実感ってとこだ。

 

「善人も悪人も目線次第で変わると? 確かに悪徳貴族や商人と言えども、それらと付き合いのある者達からすれば、お得意様だったりもする……のか。無償の施しを行う善人も商売人からすれば、ただでモノをばら撒くようなもので、商売の邪魔であろうからな……そう言った観点からすると、善意ですら悪となる場合もある。店主殿が言いたいのはそう言うことか?」


 おお、良く解ってるじゃないか。

 僕の言いたい事をこれ以上無いほど、解りやすく例えてくれた。


「うん、そう言うことだね。善悪の判断基準ってのは、価値観や目線でいくらでも変わるんだよ。だからこそ本来は、悪事は誰にとっても平等な価値観……つまり、法で裁くべきであって、正義の味方みたいなのがしゃしゃり出て、勝手な一方的な判断で成敗とかやっちゃいけないんだよ。正義の味方の正義が本当に正しいのか? それは誰にも解らない。なにせ、成敗される悪の側からしたら、正義の味方のほうが、自分達に仇なす悪って事になるだろう? それに、正義の味方のしでかした悪事は誰が裁くんだい?」


「ほ、法は、絶対ではないだろう……法で裁けぬ悪と言うものだって、世の中には存在するのだ!」


「それは、事実だけど、法治国家の治世に携わるべき者が、間違っても口にしていい言葉じゃないよ。そんな法の網をくぐり抜ける悪党が堂々とのさばってるなら、法の方に問題あるって事だろう。その法を改めるだけの権限が、本来執政者にはあるんだから、法の方を改める。それがスジってもんだろ」


「そ、それはそうなのだが……しかし、法を改めるとなると、相応の手続きもいるし、反対意見などで潰されたりもするだろう……そんな簡単な事ではないのだぞ。なにより、執政者がのんびりやっている間にも、数々の悲劇が起き、泣くものが出る……それでも、スジを通すべきなのか?」


「そう、それでも……だよ。それが執政者ってもんだろ? そもそも、そんな簡単にコロコロ変えられたら、法の意味がないからね。なにより、煩雑な手続きも反対意見を持つものを納得させるのも、それは当然のことだよ。法を絶対なものとする法治国家ならば、それは避けて通ってはいけない道だ。個人のわがままや、偏った視点での法を無視した正義なんてのがまかり通るようじゃ、その国はただの無法の独裁国家と変わりなくなってしまう……。もちろん、国とか、さすがに大袈裟だけど、領地経営なんかだと領主が法とかそんな感じなんでしょ? 要するに小さな国……そんな風に聞いてるよ」


 まぁ、そう言いながら、僕は法と言う秩序の外側に居たってのは、大いに自覚ある。

 彼女の言うところの悪人側と言われても、本来文句の一つも言えない。

 

 それもあるから、パーラムさん達みたいに腹黒い商売人の腹黒さを見せつけられたり、帝国がメチャクチャやってるのを見ても、僕は嫌悪感や敵意とかはあまり抱いてない。

 

 パーラムさん達は商売人として至って真っ当な考え方だし、帝国には帝国の事情があるんだろう。

 独裁国家がトップのトチ狂った判断で暴走とか良くある話だし……世の中得てして、そんなもんだ。


 それに、独裁者だって絶対の存在じゃない。

 失敗続きだと、部下や国民にだって、見限られてしまう……独裁者の最期ってのは大抵、背中から部下にズドンとやられるか、四方八方を取り囲まれて、残念無念の最期だって、相場が決まってる。

 

 ワーテルローの決戦で敗れ、エルバ島で、失意の底でその輝かしい生涯を閉じたナポレオン・ボナパルト。

 連合軍に取り囲まれて、絶望の中、自ら死を選んだアドルフ・ヒトラー。

 

 その最期の瞬間に彼らが何を思ったのか……それは、誰にも解らないのだけれども。

 そんな終わり方だけはしたくないよな……。

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