第二十九話「プリンちゃんとWith ME!!」④
「そ、そうだな。庶民並みの暮らしをするとなると、まず使用人は軒並み不要となるな。それに大きなお屋敷は不要となるから、離れの小屋にでも住むとなってしまうだろうな……。そうなると、調度品や照明も最小限で構わないとなる。食事も最低限質素なものか……正直、ここが一番難しそうだな」
「あはは……倹約すると言っても、やっぱりご飯は重要って訳かな?」
「う、うるさいな! 私も旅くらい経験してるけど、一番困ったのは食べ物が美味しくないことだったからな。そ、育ち盛りなのだ……悪いか!」
「いやいや、全然。けど、そんな風にケチケチ質素な暮らしを始めちゃったら、誰が困るかな?」
「そうだな……そうなると、使用人は路頭に迷うし、職人達も物を売る相手が居なくなっては、やはり路頭に迷う……料理人も不要となって、食材を売りつけに来る業者も、農民も途方にくれる……か。確かに、多くの者達が我ら貴族の暮らしに関わっている以上、その影響力は相当なものとなる……そう言うことか?」
「そうなんだよね……。貴族様って言う、贅沢しまくりの一大消費者が節約三昧に走ると、大量の失業者が出るし、色んな人が困る。高いものをポンポン買ってくれてたお得意様がケチって物を買わなくなると、職人や商人も商売にならないって、出ていっちゃう。そうなると、どんどん領地がどんどん寂れて、お金が回らなくなって、皆貧乏になっちゃう。そうなると、どうなるかな?」
「う、うむ……皆、貧乏になると、当然その領地の税収も減る。そうなると、道の整備や、開墾、治水……警備に回す予算も減り、治安も悪化し、洪水や土砂崩れも起きて、田畑が潰れたり、人が大勢死んだりする……完全に、悪循環だな。要するに、貴族や領主が下手に質素な暮らしをしたりすると、結果的に節約した以上に損をする……そう言うことか」
おーおー、一人でほぼ正解に辿り着いたよ。
まぁ、多分に大袈裟な話なんだけど、筋道としては大体合ってる。
「うん、正解。領地の代表……貴族って、要は看板みたいなもんなんだ。看板はいつもピカピカにする……これ、商売の常識だよ。本来、政府とか支配者ってのは、皆の代表なんだからさ、常にピカピカで小奇麗なくらいでちょうどいい。お金ないってのなら、もうジャンジャカ借金してでも、お金派手に使って、皆にお金を回す義務があるって言ってもいい……ある意味、損な役どころだけど、それこそ、ノブリス・オブリージュの心意気ってもんだろ?」
ちなみに、日本の借金が天文学的な額になっててヤバいとか言ってるけど。
アレって、要するに国民から借金して、国民の懐を潤わせてるだけだからね。
国の予算的には、大半を借金の返済と利息の支払いに回して、足りない分は借金でって、まるで自転車操業みたいに見えるけど。
国という大枠と、個人や企業のお財布を一緒に考えるから、そう見えるだけの話で、国としては全然まともな運営をしているんだよな……なにせ、お金を刷ってるのも、国なんだからね。
国がその気になれば、お金をどばーんと大量に刷って、ハイ、借金、全額返済したよ! ってことだって、やろうと思えば出来るし、実際にそんな事をやってエライことになった国だって、世の中にはある。
それやっちゃうと、相対的にお金の価値が暴落して、円の暴落、ハイパーインフレ突入ってなるからやらないだけ。
第一世界大戦後のドイツなんかは、それやって賠償金とかが、はした金になって、ちゃっかり完済とかしちゃったけど、本来それは邪道っちゃ邪道。
日本くらいの経済力で、そんな事やったら、確実に世界的な経済パニックになるから、海外主要国やIMF(International Monetary Fund)なんかも黙ってない。
なりふり構わないほどジリ貧なら、そんな手だって使えるけど、敢えてやらない……。
つまり、ジリ貧でも瀬戸際でもない……実は、全然余裕な状況だったりするのだよ。
これが外国に借金してるんだったら、かなり不味い状況なんだけどね。
なにせ、借金して利息を払ったり、借金を返すとそれが全部、国外に出ていっちゃう。
そうなると、ドンドン日本は外貨を失って、ジリ貧になる。
国内からお金を借りてる分には、そのお金はむしろ、溜め込んでお金を回そうとしない人達から、お金を分捕って世の中に還元してるようなもんなんだよな。
だから、借金の額だけ見て、いたずらに騒ぎ立てたり、緊縮財政とか増税とかやる方が、実は間違ってるのだよ。
財務省とかIMFとか、借金を減らさないとーとか、御高説を述べてたりするけど、そんなもんクソ食らえで派手に借金して、減税して、公共事業に回すとか、実はそっちの方が正解。
経済にとって、忌むべきは皆が揃って、お金を使わないこと……つまり、ケチ、節約、エコロジーなんて言葉そのものが敵なんだ。
……宵越しの金は持たないとばかりに、皆、派手に散財してくれたら、不景気なんて一瞬で吹っ飛ぶ……なんと言うか、ものすごく気分の問題っぽいけど、景気ってのは気分の問題なのだよ……実は。
皆、増税したくてしょうがない政治家や財務省に騙されてるけど、日本の状況としてはそんな調子なんで、実は大袈裟に騒ぐほどじゃない。
まぁ、少子高齢化による人口減とか別のもっとヤバい問題もあるけど……。
ゼロワンとか見てると、知らん間にロボットやAIがどんでもなく進歩してるみたいだし、そっちはそっちで解決しそうな気もしないでもない。
なにせ、こんなジャングルの道なき道を自律稼働して、勝手に動き回れるほどなんだから、無人自動車だって余裕だろうし、コンビニ業務程度なら、ロボット従業員みたいなので、行けるんじゃないかって気がする。
それくらいゼロワンは、ハイレベルなAI……ホント、なにあれ?
どっから、あんなもん湧いてきたんだか……。
そうなると意外と、僕のいるこのコンビニは、何気に日本の命運を左右しかねない様々な試みの実験拠点にもなってるのかも知れない。
潤沢な予算を惜しみなく投入したり、ジャンジャカ兵器とか送ろうとしてるのも、色々先を見据えてってのもあるんだろう……。
なんとなく、色々見えてきたなぁ……デカい借りも作っちゃったし、ちょっと向こうのリクエストとかも少しは、聞かないといけないかもしれない。
「なるほど、施政者とは、突き詰めると世の中にお金を回すのが仕事……。父上もそんな事を言っていたが。ようやっと意味が解った……店主殿と話していると、父上の話でよく解らなかった話が次々と氷解していくな……礼を言わせて欲しい」
クロコちゃんがなんとも感慨深げに呟くと、丁寧に頭を下げて、お辞儀をしてくれる。
なんとなく、照れくさくなったので、頭をかいて誤魔化す。
……ふむ、子供の割に経済への理解がやけに深いと思ったら、それなりに解ってる人が親御さんだったのか。
ロメオ王国ってのは、意外と人材が厚い国なのかもしれないな……けど全然、親御さんの名前が出ないし、迎えに来るとかそんな様子もない。
本人の話だと、そこは気にしなくても良いとのことで、敢えて名前を伏せてる様子から、結構な名家とかそんななのかもしれない。
けど、親御さん……どっかその辺で、ハラハラしながら見守ってるとか、だったりして!
いずれにせよ、そう言う事なら、これは是非、その親御さんとコネの一つでも作って、今後も仲良くしたいところだね。
コネやお友達が重要ってのは、どこの世界でも一緒! 権力持ったお友達とか、ホント最高なんだぜ?
アップ分、少々長くなりすぎたので、分割しますた。




