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異世界コンビニ、ネコ耳おっさん繁盛記! ハードモードな異世界で、目指せっ! コンビニパワーで、皆でハッピーもふもふスローライフ?  作者: MITT
第三章「コンビニオーナーの異世界改革!」

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第二十六話「おもてなし大作戦!」②

「ごっついスライムの話はうちも聞いたことあるで! 眉唾っぽいのも多いんやけど、オルメキアの国境の町やったかな? 警備隊長がレベル3ってのと入れ替わとって、女神の使徒が討伐するまで、誰も気付いとらんかったんやって! けど、その女神の使徒でさえ倒すのに、結構苦労したって話なんやで……」


 女神の使徒って、要するにチート持ちか……そんなのでも、倒すのに苦労するのか……。

 実際、普通に戦ってたら、あんなのどうしょうもなかった。

 

 氷漬けにされたり、ミニガンで蜂の巣にされようが、再生するって凄すぎるだろう。

 テンチョーも最終的には、天使の鎧だかなんだかチート臭いのを持ち出してカタを付けた感じだったし……。

 

 そんなのがあと10だか20もいる?

 ……帝国ヤバいだろう。

 

「しかし、そのレベル4ですら、テンチョー殿の敵ではなかったのじゃがな。あの者は凄まじい……女神の使徒の中でも最強と言ってもいいだろう。もっとも、魔術も戦い方も素人と大差ないのはいただけんぞ。言ってみれば、野獣のような戦いっぷりじゃ……」


「うーん、ここだけの話。あの娘……戦士とか魔術師みたいな戦いの専門家じゃないから。野生の本能で戦ってるとかそんなんだと思ってくれ」


 ……日本の飼い猫とか、どう考えても野生動物以下だろう。

 高い身体能力と野生の本能的な戦闘能力はあるだろうけど……あくまで、自分より小さくて弱い相手を狩るとかそんなもんだ。

 

 それでも、人間よりも強いのは確かなんだけどな……。


「……良かったら、我が弟子として、魔術の基礎や戦い方を叩き込んでやろうか? あれ程の逸材でありながら、あまりにも荒削りで危なかっしい。もちろん、強制はせんがな……」


 アージュさんがテンチョーに戦い方を仕込んだら……テンチョー、ますます無敵なんじゃ?

 

 でも確かに、魔力配分とか全然考えてないから、今回だって結構、危なかったからなぁ……。

 それに、魔法習得でごっそり魔力失うなんて、欠点も見えてきた。

 

 睨み合ってる最中にガス欠とかなってたら、絶対負けてたよな……アレ。

 ちょっと、考えてみよう……アージュさんも先生役としてもこの世界でも指折りの程の魔術師なんだしね。


「ちゅーか、さっきから気になっとったんやけど、アンタ。やたらオーナーはんに馴れ馴れしいけど、なんなんや? 今も当然のように隣に座っとるけど……オーナーはんの隣はうちかランシア、テンチョーはんがいたら、テンチョーはんに譲る……そう言う決まりなんやで!」


 今更のように、キリカさんがアージュさんに絡む。

 

 キリカさんから見たら、戻ってきたら、当たり前のように僕の隣をキープしてる奴がいるって感じだろうから……。

 当然、そうなるよな。

 

 と言うか、その謎ルール……なに? 僕、初めて知ったんだけど……。


「今更、それを聞くのか? 犬娘……?」


 呆れたように返すアージュさん。

 そもそも、撤退中にキリカさんが合流してきてから、何度も顔を合わせてるはずなんだよな。


「ちゅうか、道に迷ってたから保護したって、聞いとったんやけどな。当たり前のように仲間ヅラしてオーナーはんの隣で飯食っとるとか、そりゃどう言うことなんや? 言っとくけど、うちはオーナーはんの筆頭奴隷! つまり、一番の側近って事や! 新入りなら、うちに挨拶くらいするのが先やろ!」


 ……なんか、変な雲行きになってきた。

 けど、上手い説明が思いつかない……どうしたもんか。


「我は、ロメオ王国親衛隊最古参のアージュ・フロレンシアじゃ! 先の戦いではケントゥリ殿に命を救われ、軍師として、あの戦いを仕切らせてもらい、勝利へと導かせてもらった。言ってみれば、戦場で生死を共にした盟友と言えるであろう。軍師とは常に将の傍らに控えるのが常。我がこの席に座るのは当然であろう?」


「な、なんやそれ! パッと出の分際で、いきなり軍師ってなんやそれ! おう、ランシア! お前もコイツに一言言ってやれ!」


 僕の向かいの席で、黙々とカレー食べてたランシアさんがいきなり話を振られて、アタフタしてる。

 けど、立ち上がって、凛とした顔で、僕を挟んだ席に座るアージュさんをじっと見つめると、たちまちあわわって感じの狼狽した表情になっていく。


「え? このちっこいのがあの……アージュ様って? それ……まじですか?」


「マジなのじゃよ……ちっこいのは事実じゃが、余計じゃぞ。お主は森エルフであるな? ……見た所、100年程度しか生きとらん若造のようじゃが……。とは言え、我の名を知っとるとは感心、感心。イルハドの小僧ッコは息災かな? と言うか、貴様も我に文句でもあるのか? ん?」


 イルハードさんって、確か森エルフ族の長老さん。

 

 400年くらい生きてるエルフでも長寿の部類に入るような人、なんだけど……あの人ですら、小僧呼ばわりかよ。

 でも、イルハドさんの倍以上長生きしてるってなると、小僧呼ばわりも当然だよな……。

 

 改めて考えると、アージュさんってとんでもない人だ……。

 

「いえいえ、我らエルフ族の中でも、最古の生ける伝説とも言われるアージュ様に、文句などあるはずありませんよ! この犬っ娘は少々学が足りない故に、無礼のほど、お許しを……」


 言いながら、ランシアさんが立ち上がると、キリカさんの髪の毛をひっ掴んで、強引に頭を下げさせようとする。


「あいたっ! ランシア、お前! 何してくれてるんや! なんで、うちがこんなのに頭下げんといかんのや! だいたい、なんであっさりヘタレっとるんや! お前も気に食わんとか、言っとったろ!」


「キリカ……さすがに、相手が悪いですよ。この人……いえ、この御方は我々、エルフ族にとってはもはや、生き神様のような方ですから。生涯独身を貫いているので、直系の子孫こそ一人も居ませんが。幾多の伝説にその名を残しているような方なのです。この方の言う事は、我々にとっては絶対の神の言葉に等しいのです。重ね重ねご無礼、大変失礼しました」

 

「……それって、全然男に縁がなかった究極レベルにモテないヤツなんとちゃうか……」


 言いかけたキリカさんの鳩尾に、ランシアさんの渾身のエルボーが炸裂し、キリカさんが身体をくの字に折り曲げると、ゆっくりと沈んでいった。

 

「あら、キリカさん?  大変っ! お酒飲みすぎたんじゃないですかっ! 向こうでお水でも飲んで少し休みましょう! 後始末は私がやりますから……」


 ランシアさんが何事もなかったかのように、リバース中のキリカさんの背中をさする。


「ラ、ランシア……お、お前、今、モロに入ったで……あぶっ!」


 まだ何か言おうとしたキリカさんの口を、ランシアさんがガッツリと塞ぐと、半ば強引に引きずっていく。

 ランシアさん……キリカさん強制退場させやがった……。

 

 アージュさん、どうやらエルフ族に対しては、絶対的な権威があるらしい。

 あのランシアさんが、媚び媚びなんである。

 

「それでは、アージュ様……ごゆっくり、オーナーさんも失礼のないようにお願いしますね!」


 笑顔のまま、ウィンク一つ残して、ランシアさんが引っ込んでいった。

 入れ替わりで、ククリカちゃんが飛んできて、キリカさんの後始末を始めてる……。


 うわぁ……である。

 

 かくして、なんとなく、アージュさんと僕だけが取り残されてしまった。

 

 ミミモモは食べるだけ食べたら、力尽きたみたいで折り重なるように、居眠りしてるし……。

 まぁ、しょうがないか。


「ははは……アージュさん、すまないね。色々と……と言うか、これからどうするんだい? 本当はすぐにでも、例のお姫様にご挨拶に行きたいんだけど、ちょっと今、僕がここから離れる訳にはいきそうもない……。プリンが必要なら、常温保存できる缶プリンってのがあるから、それを僕からの贈り物って事で、持てるだけ持っていってくれて、構わないよ。帰りの足は、グリフォン便をうちでチャーターするから、それでいいかな? 多分、最速便で明日の朝一になると思うけど」


「ふむ、気遣いすまんな。じゃが、プリンの件はもう良いぞ。実は、すでに我から姫様にも今回の件の詳細を報告済みでな。さすがに前代未聞の国難に直面しておるということは解ってくれたようじゃ。今日中にでもウルスラ達を拾って、ここまでご足労いただくことになっておる。すまんが、取り急ぎ歓待の支度でも、整えておいてくれんかな? それとそれなりに立派な寝所のひとつでも用意しておいて欲しいんじゃが……こちらも急な話じゃが。気持ちって事でそれなりのモノを用意してくれれば、我としても顔が立つからのう」


「今日中って! なにそれ! どうやって来るつもりなんだよ……」


 今からだと、グリフィン便だって間に合わない。

 

 グリフィンはちょっとでも暗くなると飛べなくなるので、帰りのことを考えると午前中に向こうを出発するくらいのスケジュールでないと、絶対に引き受けてくれない。

 

 なんでも、グリフィンは自分の巣でないと寝れないとかで、出先で夜になってしまうと、ろくに休めないまま翌朝に出発となるので、そうなると当分使い物にならなくなってしまうらしいのだ。

 

 繊細すぎるだろ……。

 便利そうで、意外と使えない……まぁ、生き物相手の商売だから、そんなもんなんだろうけど。 


「ああ、あの姫君は、父君……リョウスケ殿から受け継いだ特異魔術の転移の法を使えるのじゃよ。自分が知ってる者や場所はもちろん、専用の補助魔法陣を展開しておけば、姫様が行ったこともない場所へも瞬時に飛べる。その気になれば、異世界間すら転移出来るような代物なんじゃがな……。本来、国家最高機密じゃから、これだけは他言無用として欲しい。理由はこの事実が公になると姫君の命の危険が増える。国家安全保障上の問題にすらなりかねん。……これで納得してはもらえんかな?」


 ……なんだそりゃ。

 要するに、その気になれば、今すぐ隣にひょっこり湧いてくるかも知れないとか、そんなのかよ!

 

 おまけに、異世界間の転移も出来るなら……日本にだって、ひとっ飛びって訳か。

 

 国家最高機密ってのも納得だ……神出鬼没、彼女がその気になれば、要人暗殺、破壊工作、情報収集だって、何だって出来る。

 どんなセキュリティだって、彼女の前では何の意味もない……恐るべき能力だ。

 

 リョウスケさんもロメオ王国を建国し、国を運営しながら、遠くバランティアへ遠征している義勇軍を最前線で指揮してたりしてたらしいし……。

 日本へ気軽に戻ったり、その行動と神出鬼没さには謎が多かったらしいんだけど……。

 

 転移魔法って言うチート持ちだったのか。

 それなら、納得だ。

 

 そして、その魔術を受け継いだ姫様も……。

 

「……わかった。色々納得がいったよ。他言無用と言うのも納得だ。彼女を敵に回すことのヤバさもよくわかった。そうなると……色々手配しないとなぁ……。御寝所の件も……一応、宿屋を作りかけてたところだったから、それで良ければって感じかな」


「すまんのう……。皆が色々甘やかして育ってしまったので、枕が変わると寝られんとか、色々ワガママ言うかも知れんのでな。我も手伝ってやるし、これでもすぐに来ると言っておったのを色々言って、夜まで待つように言いくるめたのじゃよ」


「そっか……アージュさんも苦労してるんだねぇ……。そう言う事なら、僕らとしては、全力でおもてなしすべきだよね。そこは、僕がなんとかするよ! 正直、戦争なんかより、そう言う事のほうが僕は得意なんだ」


 そんな訳で、僕は帝国軍との死闘を繰り広げた直後に、一睡もせずに今度はクロイエ姫の歓待準備に取り掛かることになるのだった!

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