やっぱり、俺はおかしいようです
…無理だ、これ…。大型の亀の悪霊を見下ろしながら私は呟く、一通り試せる攻撃手段は試したが、効果がない、絶望的に火力が足りない。
「ひなたちゃんがいても無理だろうなぁ…、光さんが卒業していなければ…」
今日は塾があるため早めに帰った友達がいても厳しいだろう。もともと、私とひなたちゃんの力はあまり強くないらしい。
「って触手!?」
亀の甲羅のてっぺんが開き、触手がたくさん出てくる。
「えいっ!!えいっ!!よけきれない!?」
いくつかの触手を風の刃で切り落とすが数が多すぎて避けるのも切り落とすのも厳しい。と考えていると足に触手が巻き付いた
「きゃぁぁぁっ!?」
動きが止められ、締め上げられる。恐らく、このまま絞め落とされるか、どこかへ叩きつけられるかはわからないが、その前に救援が来るのは絶望的だろう。という判断が頭をよぎる。
「間に合え!!『ボム』!!」
爆音と閃光、続いて触手の力が弱まり、私は落下する。箒が無いと飛べない…。
「…あの箒には意味があったんだな…」
仮面をつけた男の人に抱き留められた…え?
「誰ですか…?」
「フレアスリンガー…、まぁ、とりあえずは味方だ」
「あ…えっと…ヴェルデです」
「…わかった、ヴェルデ、とりあえず、聞きたいこともあるだろうけど、目下の問題を片付けよう。立てるな?」
「は、はい!!」
御姫様抱っこ、に気が付き慌てる、でも抜け出せる気がしない。
「降ろす、降ろすからちょっとおとなしくしてくれ!」
なんだか締らない初登場である。
―――――――――
さてと、登場から躓いたが、特撮や戦闘のあるアニメで、新キャラの登場回というのは、大抵、その新キャラの活躍が約束されている。…まぁ現実ではそんなこと無いんだけど。
「硬いなぁ…」
銃を撃ちながら呟く、仮面は何気に高性能らしく、弱点と思しき部分が光って見えたりするのだが、どうも威力が足りない…というより、敵の亀型悪霊は水属性のようだ、根本的に相性が悪い。先ほどの炸裂弾でよけいに警戒されて、防御主体の戦い方をされているのも問題か?
「あ、あの…、大丈夫ですか?」
「…あぁ、大丈夫だヴェルデ、攻撃が通用しない以外はな、そもそも、私は時間稼ぎを依頼されているのでこれで良いんだが」
速水が問いかけてくる。まぁ、元々時間稼ぎ目的なのだ、倒さなくていい。と言われていても、やっぱり攻撃が聞かないって言うのはちょっと…ストレスがたまる。
「『ペネトレイト』!!」
貫通する弾丸を意識して銃を撃つも、弾かれる。結局イメージが絶対になるというわけではないらしい。なんかこう…装甲を打ち砕くって感じの力が欲しい。
そう思うと、頭の中にあるイメージが浮かぶ。手甲を装備した男が、飛んできて岩盤を砕く…、特撮の見過ぎかなぁ…。ってこんなことしてる場合じゃないだろ僕!!
「手甲…?ってうわっ!?」
いきなり体が光り、コートの色が黄色に変色、二丁拳銃は二つの大きな金色の手甲に変わる。気付けば足にも足甲がついている
「何が何だかわからないけどッ!!」
動きの緩慢な悪霊に向けて、飛び上がり、拳を打ち下ろす。
「『ガイアクラッシャー!!』」
何故かわからないが自然と叫びたくなった技の名前を叫ぶ。拳はその重量と、落下、それから魔力によるブーストにより亀を地面ごと砕く…あ…やばっ!?
「大丈夫、修復班がいる、千本木担当の修復班は世界一優秀だ。この程度の損傷なら人間に気づかれることなんてない…君の母親のおかげで」
「あ…そう…」
「申し訳ないと思ってくれるのならそれでいいよ…君の母親は時に山すら吹き飛ばした癖に悪びれもしなかったから」
遠い目をしながらクマ吉が言う。うん、何やってるんだお母さん…。
「…そういえば、お母さんまだクマ吉が見えるってことは…」
まだ、魔法…使い?として戦えるんじゃないだろうか?
「やめて、僕もわかってるけどぜ絶対に嫌だ」
ですよねー…クマ吉のお母さんを見る目は恐怖の色が隠せていないし。…でも、まぁ…そんなにヤバイのなら、やめた方がいいんだろうなぁ…。
「それよりも、君の力は何だい?君の意識が力にはかかわるはずだから、何かイメージ元があるはずなんだけど…」
「わからない…、ただアレに通用する攻撃を、って思ったらいつの間にか…」
「うーん…、不確定要素が多すぎるなぁ、属性まで変わってるし…」
「そういえば、属性って何なの?」
「ん?あぁ、基本の地水火風、それから光、闇といった属性があってね。…、意味は大体予想通りだと思うよ。それ以外にも特殊なものがあるけど、それは珍しいし、話してたらキリがないから割愛するよ。君は火属性…みたいだったんだけど、今は地みたいなんだ」
成る程…、要するにその属性に類する力を使えるってことなんだろうけど…、変わるってあり得るのか?…僕も大概なんじゃないだろうか?ってそういえば。
「そういえば、なんか技名叫びたくなったんだけど」
「あ、それ仕様」
え?マジで?
「一定以上の攻撃技はある種の音声認証システムを使っててね、使おうと思うと叫ぶことを強制するようになってるんだ」
マジかー…。まぁ、あんまりカッコ悪い技名じゃなければ仕方ないかなぁ…、と思った瞬間、水の斬撃が飛んできた。