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第6話 美味しい能力

「さっきまで土、美味しかったんですが、今食べたらとってもマズイです」


 少女の言葉に俺は「それだああ!」と叫んだ。


「分かった! 多分、そうだそれしかない! 『yummy(ヤミー)の能力』つまり英語で『美味しい』って意味。土が美味しいと感じたのはそのせいだ」


「なんのことか分かりませんが、今は美味しくないですよ」


「そう。それなんだよ」


 俺はそう言って考え込む。


 土が美味しく感じる前、確か辺りが光ったなあ。あれが能力が発動した瞬間だと考えればしっくりくる。


 問題は発動条件だが、特に変わったことはしていない。


 少女にパンをあげ、好物を聞かれて答えたら……そこか?


「モリグマの肉、白パン、豆のスープ、ポポロンベリーのパイ、ジンジャークッキー」


 そう言うと、突然辺りがぱあっと光る。


 今度は二人で落ちている枝を美味しくいただきました。



 うん。これで確定。


 俺、闇の能力じゃなくてヤミーの能力だ。


 ってゆーか、発動の呪文って俺の好物なの? まあいいけど。


 しかも、だ。


 俺はさっきよりも、少しだけ元気を取り戻した少女を見る。


 自分だけではなく、彼女にも効果があった。


 まさかこれって範囲魔法なのか?!


 そう思って、再び呪文を唱えてみる。


 足元にあった石ころが、ものすごく美味しそうに見えた。


 これ、砕けるのか?!


 そんなことを考えていると隣からガリガリと言う音が聞こえてきた。


 少女は夢中で石ころを食べている。


 この能力なら、硬い石も歯で砕けるのか……。


 俺はそう思って石をかじる。


 なんだこれ、砂糖みたいだ! うんまーい! あまーい! 砂糖よりももっとコクがあって、噛めば噛むほど石本来の味が口いっぱいに広がった。


 ってゆーか、石本来の味ってなんだよ。


 でも、うまいからいい。



「ふう。お腹いっぱい」


 俺はそう言って腹をさする。


 何だか体中から力が湧き上がるようだ。


「私、何だか元気が出てきましたっ!」


 そう言った少女は、にっこりとほほ笑んだ。


 彼女もずいぶんと顔色が良くなったなあ。


「私、エスティエインといいます。エスって呼んでください」


 エスはそう言うと、ぺこりと頭を下げる。


「俺はコメル。よろしく」


「ええっと、コメルさんは魔法使いなんですか?」


 エスはそう言うと俺を見上げて首を傾げる。


「えっ?! ああ、うん。まあ、そんなところだ」


 ……土やら石が美味しく食べられる魔法しか使えないけどな。


 俺は慌てて話を変える。


「で、エスはこの村の人間じゃないよな? 最近、越してきた、とかじゃないだろうし」


「あー……。ちょっと、その、散歩に出たら、道に迷って、山を越えて、崖から落ちて、命からがらなんとかこの村についたんです」


「どういう経緯を辿ったら、散歩で山越えて、崖から落ちるんだよ!」


「私、昔からドジで……」


「いや、ドジとかいうレベルじゃねえ。ってゆーか、怪我は?」


「それは大丈夫です。崖から落ちた時、運良く木にひかかったので。でも、もう十日以上、し、家に戻っていません」


 エスはそこまで一気に喋るとふう、と息を吐く。


 彼女は銀髪の長いストレートヘアに白い陶器のような肌をしており、おまけに恐ろしく整った顔立ちの美少女だ。


 今まで変な奴に襲われなかったのはラッキーだったのかもしれない。


 いや、そんなことを考えている場合じゃない。


 この能力をどう生かして、これからどうするか、だ。

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