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第5話 転生自覚したら、人生詰んでた。

「な、なんだ今の?」


 驚いて辺りを見るが、俺と少女以外は誰もいないし、魔物がいるわけでもない。


 天気もいいから雷ではないようだ。


 ふと隣の少女を見ると、一心不乱に何かを食べている。


 彼女が口に運んでいるのは、土だ。


「お、おい! やめろ! 頭がおかしくなったのか!」


 そう言っても少女は食べるのをやめない。

 

 もしかしたら、空腹のあまり精神がおかしくなってしまったのか。

 

 そう考えたら、痛々しくて少女を見ていられない。


 俺は、地面に視線を落とす。


 ふと、何だか土がおいしそうに思えてきて、土を手ですくってみる。


 ごくり、と唾を飲み込む。


 手の中の土が、この世で一番美味いもののように思えた。


 恐る恐る口に運ぶ。


「うまい!」


 思わず声に出た。  


 土はいろいろな味がする。


 野菜っぽい味とかきのこっぽい味とか。


 それでいて、それぞれの味が主張し過ぎず、すべてが土のダシとなっているようだ。


 俺と少女は腹がいっぱいになるまで土を食べた。


 しばらくすると、口に入れた土を吐きだしてしまった。


「うわっ。俺、こんなもん食ってたのかよ!」


「でも、美味しいと思いましたよ」


 何だかちょっと元気になったらしい少女がそう言った。


「うん。確かに。この世で一番美味いって思えたもんな」


「はい」


「でも、一体、どういうことだ? 俺達は頭がおかしくなったのか?」


 そう言って、考え込んだ。


 どうも今朝の夢から何かが引っかかる。


 だけど、その原因が分からない。


 ただ一つ分かるのは、この引っかかりが取れたら、何かもがうまくいく気がする。


「なんだ。一体、何が引っかかるんだ?」


 必死で考えた。土を食べたおかげで頭が回る。


 ああ、土よりも米が食べたいな。


 米?!


 そうか! 俺は、米田太だ!


 コメルという少年に転生して、この世界の村で十四年生きてきたんだ。


 ああ、ようやく思い出した。


 ってゆーか、転生して前世の記憶を取り戻した途端に人生詰んでるし。


 転生したら、チート能力でハーレムとかほのぼの異世界ライフが自動的に送れると思っていたが甘かったのか。


 それにしても、土を食べただけで、絶賛詰んでる人生に何ら変わりはない。 


 なにか突破口はないか……。


 ああ、そうだ、俺には闇の能力が備わっているってじーさん……いや、神様が言ってたな。


「でも、闇の能力って今、使えるのか?」


 俺がそう呟くと、隣で土を口に入れ、その不味さぺっぺっと吐き出していた少女が聞き返す。


「ヤミーの能力ってなんですか?」


「いや、ヤミーじゃなくて闇だよ……」


 そこまで言ってハッとする。


 神様は『ヤミの能力』と言った。そのイントネーションは『闇』というより『ヤミー』と表現した方がしっくりきた。


 ……ん? ちょっと待てよ。ってことはなんだ。ヤミーの能力かよ。


 なんだそれは。

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