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12 魔女とご機嫌な私


「……あら、ミラ。貴方なんだか機嫌が良さそうね?」


久々に私の所を訪れた魔女の第一声はそんな感じ……あ、間違えた。魔女の第一声はいつも「鏡よ鏡~」ってやつだから、第二声か第三声だった。


とにかく、今魔女は、何処か機嫌の良さそうな私を見て、不審なものを見るようにそのお綺麗な顔を歪めている。


……ヤバい。最近、イージオ様と話せるのが嬉しくて、気付かない内に浮かれてたみたい。


気を付けなくちゃ。



「そうですか?う~ん、この前ちょっと面白い鏡を見つけたからかなぁ?」


魔女の指摘に内心ちょっと焦りつつも、しらばくれて首を傾げながら適当な理由を挙げる。


下手に「そんな事ありません!」と否定するよりも、こうやって別の理由にすり替える方が、嘘を吐かなくて済むから、誤魔化しやすい。


「ふ~ん、面白い鏡ねぇ」


魔女が妖艶さを漂わせる流し目を私に向けた。


もし私が男だったらイチコロレベルの代物だけど、当然、この魔女が大嫌いな私には通用しない。


若干の疑いと興味を宿し、私に「詳しく話せ」と求めているその目に、ニッコリと笑顔を返して、常にいくつかストックしてある誤魔化し用ネタ鏡の中から1枚の手鏡を適当に選んで魔女に見せる。


「この吟遊詩人が織り成す修羅場劇場が面白くて面白くて!」


「貴方、そういうの好きねぇ」


魔女は呆れたような表情を浮かべつつも、横目で私の示した手鏡をしっかり見ている。


私も昼ドラ的なのは嫌いではないけれど、私がこういうのを提示する比率が高いのは、あくまで魔女の好みに合わせているからだ。


私個人の趣味の問題ではない。



まぁ、敢えてそれを言葉にして、魔女の不況を買うような事は当然しないけど。


だから、私は魔女の言葉に否定も肯定もせずに、笑顔で鏡の説明をし始める事にした。


「この吟遊詩人、見目麗しい事を良い事に、あちこちの女性と関係を持って、修羅場になっては逃げるように別の町へと移動しているんですよ~」


そして、自分の見た目が大好き彼は、よく私の鏡と繋がっているこの手鏡で自分の顔をチェックしている為、私がその修羅場を覗ける機会もとても多い。


正直、私からしたら見た目以外に少しも良いところを感じられないこんな男は論外なんだけど、口が上手いのもあって、彼に騙され惚れてしまう女性は後を絶たない。


ちなみに、現在は4股……あ、この前初心そうな食堂の看板娘さんを口説き落としてたから、5股になったのかな?……とにかく、複数の女性と交際中だ。


……うん。正真正銘のクズ男だね!女の敵だ。



「見目麗しい……ねぇ。悪くはないけれど、この程度の軽い男は興味ないわ」


サッと手鏡に映る男の顔に視線を走らせ、興味を失ったかのように私に手鏡を下げるよう手で追い払うような仕草をする魔女。


まぁ、私もこの男単体じゃあ、魔女の興味は惹けないと思っていたけどね。



「そうですね。王妃様レベルの女性が相手するような男じゃありませんよね~。私も正直、この男自身はクズだと思ってるんで。でも、この男にハマる女性も結構いるんですよ。……しかも、何故か気が強かったり粘着質な女性が多いんで、修羅場になった時の様子は見物ですよ~」


ニヤリッとわざと黒い笑みを浮かべると、手鏡と私の顔を交互に見た魔女は「あら、そうなの?」と言って手の動きを止めた。


1度は主役となる男の見た目がお気に召さず、話を聞くのを止めた魔女だったけれど、私が言った本来の「面白い理由」を思い出して、気のないふりをしながらも、耳をこちらに向ける事にしたようだ。


もう嫌という程魔女の扱いに慣れてしまった私は、素直じゃない魔女の態度に嘆息しつつも、意気揚々と男が今まで引き起こしてきた修羅場について少し話を盛りつつ語りまくる。



「フフフ……。男を見る目がない女は大変ねぇ。まぁ、それだけの能力がないのだから仕方がないわね」


「ですよねぇ」


憐れむように眉尻を下げつつも、口許には満足げな笑みを浮かべている魔女に愛想笑いを浮かべて頷く。


正直、男を見る目がない女性以上に、いろんな女性にちょっかいを出す男の方に私は問題に感じるんだけど、敢えて魔女の言葉はそのまま肯定する。


否定しなくても後々困らない事であれば、適当に相槌を打って、違うと思っても聞き流すべし。


お局様と接する中で私が学んだ教訓だ。


……お局様が好きなご当地キャラの話になった時に、何の気なしにそのキャラの相方の方のキャラの方が好きだと言ってしまったせいで、同じ課の人全員に配られたはずのお局様のお土産が、私の分だけ貰えず、代わりに嫌味を頂戴するはめになった事を私は今も忘れない。……ご当地キャラ饅頭、食べたかった。



「その男、この王宮に招いても面白そうね」


はい、修羅場が見れて「面白そう」って意味ですね。


「アイアフール侯爵夫人辺りを落としてくれたら面白いのに……」


アイアフール侯爵夫人……あのおしどり夫婦で有名なご夫妻の奥方様の方ですね。


よくメイドさん達の間で『憧れの夫婦像』として語られているのを鏡から見ていたんで知ってますとも。


ちなみに、国王様と魔女は魔女が一方的に溺愛し、国王様は適当に甘い言葉を良いながらあしらっている感じ。


王宮の人がこそこそと話しているのを聞き齧った感じだと、はじめは前王妃様を亡くして深く落ち込んでいた国王様を魔女が慰め、結ばれたって感じだったみたいだけど、その後に国王様の心は離れていったっぽい。


成長するにつれ前王妃様に似ていくスノーフィア王女を見て、次第に元気を取り戻していった国王様は「前王妃以上に愛せる女性はいない」と痛感したようだ。


ただ、この時点では本当に辛い時期に寄り添ってくれた魔女への感謝の思いは強く、それなりには愛していたし、妻になった魔女の事も大切にしようとしていたらしい。


ところが、その後、自分より娘のスノーフィア王女の方が溺愛されている状況に腹を立てた魔女が、スノーフィア王女に冷たくあたるようになり完璧に気持ちが冷めてしまったようだ。


ただ、国王である以上そう簡単に離婚は出来ないし、可愛い娘に危害を加えられても困るから、今は適当に相手をしてるという状態みたい。


まぁ、それはあくまで噂であって、国王様の本当の気持ちはわからないけれどね。


ちなみに、これだけ聞くと、国王様にも非があるように思えるけど、王妃となってからの魔女の態度は目に余るものがあり、周りは「国王様は弱っているところに付け込まれた」「気持ちが離れても仕方ない」という認識のようだ。


マージア王妃が悪い魔女だと知っている私からしたら、実は変な魔法を使って一時的にでも国王様の気持ちを操作したんじゃないかなぁなんて可能性も捨てきれない。


ほら、魔女は『魔女』だからね。


で、そんなこんなで、国王陛下に思いを寄せつつも、自分への対応に不満を募らせている魔女は、本当の意味で仲が良い夫婦を見ると、嫉妬からか仲違いをさせたくなるようだ。


自分は幸せである事があたりまえ。他人が幸せなのは気にくわない。


彼女はまさにそういう考えの持ち主。




……本当にはた迷惑な性格をしている。



「残念ですけど、彼、根無し草で国を跨いでチョロチョロと移動してるんで捕まえるのは面倒だと思いますよ?」


所詮、一般人だから一国の王妃の権限を使えば出来なくもないかもしれないけれど、その目的はあくまでただの娯楽だ。


そんな事の為に、多大なる労力を使うのは時間と労力の無駄だ。



「まぁ、確かにそうね。それなら見目の良い男を国内で見付けてアイアフール侯爵夫人にけしかけた方がよっぽど効率的ね」


ニタリッと深紅の唇を歪める魔女はまさに魔女らしい魔女だ。


背中に嫌な汗が伝うのを感じて、慌てて話の方向転換を行う事にした。


「そんな事より、王妃様、本日はどのようなご用件で?」


話題を変えたところで、どうせまたろくでもない要求をされるだけだろうとは思うけれど、今はこれ以上おしどり夫婦の中を裂く計画を考えさせないようにする方が大切だ。


そりゃあ、私だってラブラブなカップルを見れば、「リア充爆発しろ」と思う事はあるけれど、それは思うだけだから許されるのであって、実際に行動に移したら大惨事だ。


そんな事をするのは悪者以外の何者でもない。


あ、魔女は正真正銘『悪者』だから、役柄的には間違ってないのか。


もちろん、人として間違っている事には変わりないけど。



「そうだったわ。こんな雑談をしに来たんじゃないのよ。ミラ、スノウフィアの最近の様子について教えて頂戴」


「え~、スノウフィア王女についてですか?何も知りませんよ。だって、女の子見てても楽しくありませんもん」


魔女の口から『スノウフィア』の名前が出た途端、ドキッとした。


もちろん、恋のときめき的なものではない。聞かれたくない事を聞かれた事への焦りからくるものだ。


体の芯が緊張で強張るのを感じつつも、至って何でもない事のようにだるそうに答える。


過剰反応厳禁。


ここは落ち着いていつも通り、やる気がなさそうに答えるべし。



「自分の好みで仕事選ぶんじゃないわよ」


自分の好みで部下を選んでる魔女にだけには言われたくない台詞だ。


「まぁいいわ。これから素敵な結婚を控えているスノウフィアの動向が気になるのよ。見張っておいて頂戴」


『素敵な結婚』のところでにんまりと意地悪げに笑う魔女は、まだ相手のイージオ様が婚約者すら得る事の出来なかった生き遅れ王子だと思っているのだろう。


状況的にはあながち間違ってもいないけれど、本当の理由は『美し過ぎるから』だという事に、彼女はいつ気付くのだろうか?


出来れば、2人の結婚が済んだ後だと有難い。


白雪姫の本来の物語とは大分変ってしまうけれど、同じ「めでたしめでたし」ならそこに行きつくまでの過程も、出来るだけ平穏な方が良いに決まっている。


山あり谷ありで楽しいのは物語の中だけだ。



「え~、無理です~」


「ミラ、貴方は私の鏡でしょ?言う事をお聞き!」


「痛っ!!」


私の返答を聞いた魔女が、眉尻を吊り上げてキツい口調で私に命じる。


すると、それに呼応するように私の右手首に痛みが走る。


まるで熱湯を掛けられたかのようなひりつく痛みに、私は左手で右手首を押さえて蹲る。



……魔女め。契約の力を発動しやがった。


今でこそ、魔女の取り扱いに慣れ、怒って『命令』を行使するラインを越えないギリギリのやり取りを出来るようになってきたけど、初めの内はよく魔女の不興を買って、こうやって体罰代わりに契約の力を行使されていた。


これがまた本当に痛いんだよね。


全身の毛穴から一気に汗が噴き出てくるレベル。


ただ、契約が不完全なせいもあってか、「すんごく痛い」けど「死ぬほど痛い」というレベルには到達していない。


それでもやっぱり痛いものは痛いから、内心「チッ」と舌打ちしつつも魔女に許しを乞うように「ごめんなさい」と繰り返す。


こうして謝らさせられる度に不快なものを感じつつも、謝るだけで苦痛な時間が減るのなら別に良いかとも思う。


お局様にクレーマーなお客さんの対応を何度もやらされている身として、この程度の事は何でもない。


ちなみに、魔女への対応マニュアルとしては、こういった時はわざと憐れっぽく振る舞うと早めに満足してくれる。


演技力も魔女への対応には必須なのだ。



暫く蹲って痛みに耐えている私を見て笑っていた魔女は、満足したのか契約の力を行使するのを止めた。


私は「フゥ」と大きく息を吐いて魔女を見上げる。



「わかってくれれば良いのよ、私の可愛い鏡」


妙に甘ったるい声で私に囁き掛ける魔女。


飴と鞭効果を狙ってるのかもしれないけれど、そんなのに引っ掛かる程、私は単純でもバカでもない。


むしろ自分で痛めつけておいてそんな甘い声を向けられるその神経に反吐が出る。



「でも、王妃様、実際問題スノウフィア王女の部屋には私の鏡と繋がっている鏡がないんで見張ることは出来ないですよ?」


困ったような表情を作って首を傾げてみせる。


実際問題、彼女の部屋に私の鏡と繋がる鏡は『今は』ない。


「嘘を仰い。私が国王陛下に嫁ぐ時に、主要な部屋には全て鏡を配置したのよ?」


魔女が私の言葉に眉を寄せる。


けれど、私が嘘を吐くことが出来ないのは魔女が1番よくわかっているはずだ。


だって、私は嘘を吐くと痛みに悶えるようになっているのだから。



「あれねぇ。割っちゃったみたいですよ」


……私がね。


さすがに、スノウフィア王女の周囲の鏡を全て割るのは不自然すぎるから止めたけど、1番彼女が映り込む可能性の高い自室の鏡は、早々に始末させてもらった。


もちろん、バカ割った事を正直に魔女に報告するなんて事はしていない。


他にも何枚か偶然や故意で割っちゃった鏡もあるし、外側から割られた鏡もある。


でもその事について魔女に何か言われた事はないから、こちらが自己申告しなければ魔女が気付く事はないん思ってたんだけど、この反応からして間違いではなかったようだ。


「何ですって!?」


キュッと眉尻をつり上げた魔女だけど、上手いことスノウフィア王女自身がうっかり割ってしまったのだと勘違いしてくれたみたいで、私を責めるような事はしない。


「ですから、彼女の部屋には今、普通の鏡しかありません。国王様の部屋とかちょっと離れた廊下とかそういう所にはありますけど、たまに映る程度なんで、見張ってるだけ無駄だと思います」


それでも彼女が映る可能性のある周囲の鏡を見張れと言われたら、見張らざるを得ないけれど、出来るだけそうなる事は避けたい。


スノウフィア王女はもう結婚出来る年齢だ。


それはつまり、白雪姫の物語でいうところの「世界で1番美しい」と称される状態になっている可能性が高いという事。


このままなるべく姿を見ないように過ごし続ける方が、彼女の身の為にも、イージオ様が平穏無事に可愛いお嫁さんを迎えられるようにする為にも良いに決まってる。


「それなら新しい鏡を……」


「今のこの敵対状態で素直に受け取って飾ってもらえると思いますか?」


魔女が王妃になってまだ間もない頃だったら、そこまで関係も拗れてなかったから簡単に受け取って貰えただろうけれど、今はもう無理だ。


国王様に溺愛されるスノウフィア王女に嫉妬して、散々意地悪をした後なんだから。


そんな相手からの突然の贈り物を警戒せずに受け取るなんてまずあり得ない。


あ、でも、白雪姫ってどう考えても怪しいお婆さんから貰った林檎を食べちゃう迂闊な人だったっけ?


スノウフィア王女が物語の中の白雪姫らしい白雪姫だったら受け取って飾っちゃう可能性も……いや、やっぱりないな。


彼女の世話をするメイドさん達が止めるだろうし、何よりも娘大好きな国王様がそんな事を許すはずがない。


林檎と違って、その場ですぐにどうこうなるわけじゃないから、もしも万が一1度スノウフィア王女が受け取っちゃったとしても、飾られずに後で何処かに捨てられるのがオチだと思う。


私の指摘に魔女は否定する事が出来ず苦々しい顔をした。



「まぁ、そういう事なんで、私はこの任務に不適切というです!他あたって下さい!!」


ニッコリと笑顔で宣言すると、魔女も今度は「命令違反だぁ!」と理不尽にキレたりはしなかった。


ただ……


「……ミラ、貴方やたらと嬉しそうじゃない?」


私の反応に何か思うところがあったのが、魔女が訝しげな表情を浮かべる。


それにドキッとしつつも、「そうですかぁ?」といつも通りの調子で惚けて見せる。



「そういえば、貴方、他の情報は持って来るのにスノウフィアの情報は持ってきた事がないわね?」


私の反応に何かを感じたのか、或いはちゃんとした理由があるとしても私に仕事と断られたのが気に食わないのか、魔女がやたらと絡んでくる。


背中に冷たいものを感じつつも、私はいつも通りの何処か気だる気でやる気のない自分を演じ続けた。


「だって、女の子見てても楽しくないですし?それに、部屋に鏡がないのに、身入りの薄い廊下の鏡を見張ってるなんてかったるいじゃないですか。それより、イケメンのいそうな所で情報収集しながら目の保養した方が楽しいですしね~」


「……だから、自分が楽しいかどうかで仕事選ぶんじゃないわよ」


再度魔女に呆れ顔で突っ込まれつつも、「あはは~」と笑って受け流す。


私自身も、仕事中にこんなアホな事を言っている人がいたら「おい!」って突っ込むと思うけど、もうこのキャラをつき通すしかない。


ってか、まともに給料も休みも貰えない時点で、これはもう『仕事』じゃないしその点は許して欲しい。


「まぁまぁ。とにかくそういう事で、これからはスノウフィア王女様関係は他に振って下さいな。私は別の人観察するんで!」


念の為、再度「これからもスノウフィア王女の事は調べられない」という事を宣言する。


こうしておけば、似たようなやり取りを繰り返す事をきっと避けられる……はずだ。


「……ねぇ、ミラ。貴方から見たスノウフィアってどんな子かしら?」


「……見てないんでわかりません」


私の態度にまだ何か引っかかりを感じているのか、魔女がチラリッと横目で見て訊ねてくる。


けれど、本当にまともにスノウフィア王女を見た事がない私にはわからない。


それに、下手に周囲の人が言っている高評価を伝える事も、魔女の中の黒い気持ちに火を点ける事になるだろうから駄目だ。


でもだからといって、嘘情報を口にする事は鏡の制限に引っ掛かる為出来ない。


何とも不便な身の上だ。



「……ふぅん、そう。なら今度見掛けたら感想を教えて頂戴。折角とても良い縁談が決まりそうなのですもの、しっかりと準備をしなくちゃね?」


「はいはい、了解しました」


一瞬私をジッと見つめた後、小さく息を吐いた魔女が諦めたように嘆息する。


まぁ、実際見た事がないのなら仕方がないと思ってくれたのだろう。


これ以上ここにいても意味がないと思ったのか、魔女はいつも通り来た時同様パッと身を翻して私に背を向け歩き出した。


緊張から解放された私は、表情を緩めて小さく息を吐いて警戒を解いた。


解いてしまった。



……魔女が一瞬だけ足を止め、チラッと振り返って私の様子を確認していた事にも気付かずに。

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