1.4.火の魔法使いが身に纏っているものの正体とは?
というわけで、前回にも指摘したとおり、「魔力」を物質として定義できない以上、必然的に火の魔法使いが身体に帯びているものは“炎”でなくなります。
そして、火の魔法使いは“炎”を身にまとっているわけではないため、1.1.で取り上げた疑問「火の魔法使いは、着ている服に引火しないのか?」という問いも一応解決します。
これで考察を終了してしまってもよいのですが、「火の魔法使いは、結局のところ何を身に纏っているのか?」という根源的な問いは残ったままになります。
火の魔法使いが身に纏っている「炎のようなもの」の正体――。それを「オーラ」として解釈してみることを、ここでは試みようと思います。要するに、火の魔法使いは魔術を発動する際に、あたかも炎そっくりの見た目をした「オーラ」を身に纏うことによって、炎を誘引するのです。
火の魔術師は、身に纏っている「オーラ」を、上手く可燃物まで操ります。「オーラ」を受けた可燃物はそれによって発火し、激しく燃焼する――。このような筋書きにするのはどうでしょうか。
「オーラ」を導入することによって、火の魔法使いに関する様々な設定が矛盾なく成立します。「オーラ」が魔術師の周囲を取り巻いているわけですから、魔術師自身の衣服に引火する怖れは無くなり、魔術師は火に対して安全になります。燃え盛る炎の中で、身体に炎(炎ではなく、「オーラ」ですが)を帯びた火の魔術師が立ち尽くす様子は、比較的書き手にとっても描写しやすいものと思います。
またここで、「火の魔術」そのものについてある程度定義することが可能になります。「火の魔術」そのものが可燃性であるわけではないので、
「火の魔術≡可燃物が燃える可能性を操っている」
と定義することが可能なのではないでしょうか。