1.3.魔力は燃えたりするのか?
前回の最後に提示したとおり、今回は「魔力は燃えるのか?」という問いに挑戦してみたいと考えます。
ただし、この問いが問うに値するだけの価値を有するときというのは、すなわち火の魔法使いが体に炎を身にまとっているときだけだということは、あらかじめ読み手の皆様にもご理解していただきたいと思います。
今のはかなり分かりにくい説明だということは、重々承知しています。なので、これから設定をベースにして話を進めていきます。
ファンタジー作品の多くが書き手の空想をベースにして話を進めている以上、「魔法をいかに取り扱うのか」という問題も、必然的に書き手の裁量に委ねられています。したがって、たとえば「火の魔法」を登場するキャラクター達が利用するにしても、その発動様式は書き手が自由にルールセッティングできます。
私が上述した「火の魔法使いが、自らの体に火を纏わりつける」というのも、そうした設定のうちの一つに過ぎません。その一方で「火の魔法使いは対象に焦点を合わせ、魔術的行為を行った後に対象物に火をつける」といった行動様式を設定することも可能です。
ふらりと現れたどこぞの魔法使いが、ぱちんと指を鳴らす。指を鳴らした途端、目の前にいた巨漢の体躯がたちどころに業火に包まれる。力尽き、消し炭になった巨漢を尻目にして、魔法使いは颯爽と砂漠の向こう側へ消える――。
というような行動様式を採用すれば、描写が画一的になってしまう弊害は存在しますが、「魔力は燃えるのか?」という問いにあれこれ思い悩む必要はありません(上の叙述で燃え上がっているのは巨漢の身体であって、魔力ではないからです)。
さて、ここまでの話しは読み手の皆様と共有することが可能になったという前提で、今度こそ本当に「魔力は燃えるのか?」という問いに挑戦したいと思います。
そもそも「燃える」とはどのような状態を指すのでしょうか? 筆者は科学に疎いだけでなく、燃焼についてもたらされた奥深い議論についてわざわざ参照する度胸も存在しないため、ここではもっとも簡単に「燃える(燃焼)」=「たくさんの熱と光を出しながら、物質が酸素と化合すること」とでもしておきましょう。
そうなると、どうやら魔力は酸素と化合する程度には「物質」としての役割を果さなければならないようです。
それでは、「魔力は物質である」と言い切ってしまってよいのでしょうか? ――読み手の皆様には、かつて取り上げた魔術的世界観の設定に関する大前提を思い出していただきたいと思います。大前提の一番「1.魔力は誰しもが持っているが、自力でその力を引き出せる人間は限られる」は、とりもなおさず「魔力を持つのは人間(もしくは人間に準ずると設定されたその他の生物)」ということをも示唆しています。
もし「魔力」=「物質」として定義してしまったのならば、「魔力」を人間のみが独占しておく必要はないわけです。むしろ能力の優れていない人たちの「魔力」をかき集めたり、あるいは複雑な魔術を正確無比に炸裂させたりするために「魔力」を機械に還元したりしようと試みるのは自然の成り行きではないでしょうか。
そうである以上、「魔力」=「物質」として定義することには問題があります。そして「魔力」を「物質」として定義しない以上、火の魔法使いが身体に帯びているものを“炎”として定義するのは、どうやら難しいようです。