2.大前提の修正について
以上、1.に挙げた内容を、私は「和製ファンタジーにおける大前提」としてこれまでのテキストで説明しました。
ですが、この設定をまったく無批判に利用してしまうと、大きな問題が生じることに後々気づきました。
具体的な例として戦略シミュレーションRPGの一つである「ファイアーエムブレム」シリーズを取り上げてみましょう(このシリーズは多岐にわたるので、便宜上ゲームボーイアドバンス(GBA)で発売された三作品、『封印の剣』、『烈火の剣』そして『聖魔の光石』をベースにして話を進めます)。
このゲーム内に登場するユニットは、「魔法の使える」ユニットと「魔法の使えない」ユニットがはっきりと分化しており、原則としてその分化が崩れ去ることはありません。
ですが、一部の武器だけは魔法を利用することができるという特色が存在します(「ひかりの剣」、「ルーンソード」など)。これにより魔法が使えないユニットでも一時的に魔法の効果を獲得することが可能ですが、こうした特色を今までの前提に当てはめると、矛盾が生じてくることになります。
もっとも矛盾するのは、「1. 魔力を持つのは人間のみである」という前提です。前提にこだわる必要はまったくないので、この前提1.を廃してしまってもよいのですが、そうなると「魔力は人にも、道具にも宿る」ことになります。そうなってしまうと今度は「2.保有する魔力の量は、人によってまちまちである」と「3.魔力を持つ人間の総人口は、魔力を持たない人間の総人口より少ない」という前提が死前提になってしまいます。魔力の量の違いは魔法を宿した道具によって補えばよいし、魔力を持たない人間だって、道具を利用することによって魔術を弄することが可能になるからです。
しかしながら、このように三つの前提をすべて取り払ってしまうと、“魔法使い”を“魔法使い”たる要素がすべて消失してしまうことになります。魔力を有する素材に知悉している人は、魔法使いというよりもむしろコレクターと呼んだほうがふさわしい気もしますし、魔力を有する材料を加工するのは、魔法使いの仕事というより職人の仕事になります。“魔法使い”が“魔法使い”として役割を果すのは、魔力というものが「固体値」として個人に宿っているからです。
そこで、「1. 魔力を持つのは人間のみである」という解釈を、少しだけ変更してみましょう。すなわち、「1.魔力は誰しもが持っているが、自力でその力を引き出せる人間は限られる」ということにするのです(これに加え、前提3.にも若干の変更が加わります。すなわち「3. 魔法使いの総人口は、非魔法使いの総人口より少ない」)。
こうすると、先ほどゲームを例にして取り上げた魔法と道具の問題が一気に解決します。すなわち、普段は魔法を使うことができないような人びとであっても、魔力をその人から引き出すような道具さえ用意されれば、その道具を通じて魔法を使うことができる、ということになるのです。
この考え方は設定として魅力的です。まず第一に、単に魔法について設定を練るだけでなく、魔力を引き出すための道具についても設定することが可能になるからです。個人の魔力を利用して動く、某機動戦士風機動戦士を作中に登場させることもできますし、呪具を巡る魔法使いたちの攻防、といったストーリーも生み出せるかもしれません。
したがってこれ以降は、
「1.魔力は誰しもが持っているが、自力でその力を引き出せる人間は限られる」
「2.保有する魔力の量は、人によってまちまちである」
「3.魔法使いの総人口は、非魔法使いの総人口より少ない」
を前提として、話を進めてゆきたいと思います。