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思い出話

 桜がいなくなってしまってからの、俺たち家族の生活や、周囲の様子を語ることにはなんの意味もない。

 いずれその虚ろな時間は存在を無効化され、新たな、しかし今までと変わらない日常の下へと埋没していくことになる。

 だから、思い出話を。



 俺が八歳の時、五歳の桜を残して、藤枝の伯父さんと伯母さんが亡くなった。

 その日は友人の結婚式があるとかで、桜だけがウチへ泊まりに来ていた。

 元々一人っ子だった俺は同じく一人っ子の桜が、会う度に「そーにーちゃん」と舌っ足らずな声で懐いてくるのが可愛く、妹が出来たらこんな感じかな、と思ってかなり優しい従兄弟のお兄ちゃんを演出していた。

 だからせっかくの土曜日、友達とプールへ遊びに行きたいのをぐっと堪え、朝から広大な敷地の動物園で、ペンギンだのライオンだのに大興奮している桜が迷子にならないように手を繋いだ。

 風船が飛んで泣きわめく猛獣と化し、檻の中へ放り込まれてしまう前に、スカートに付いているお飾りのベルトループに糸を括りつけてやったりと、甲斐甲斐しく世話もした。

 まあ、まだ八歳だった俺にとっても動物園という場所は、充分に楽しい場所だったという事実は否定できないけど。

 家に帰ってからは晩メシを食い、一緒に風呂へ入ってからは父さんや母さんも加わって、桜が持ってきたキャラクターもののカルタなんかで遊んでいた。

 そろそろ歯磨きでもして寝る準備をしようかという、八時頃だったと思う。

 突然、家の電話が鳴りだした。

「ママたちかもしれないね」と話しかけながら電話を取りに行く母さんと、嬉しそうに纏わりつきながらついていく桜の姿を、今でも妙にはっきり覚えている。

 訃報だった。

 急なカーブを曲がりきれなかった対向車が、車線をはみ出して伯父さん夫婦の車と衝突したらしい。

 双方ともに即死。完全に相手側の過失だった。

 それからはとにかく周囲が目まぐるしかった。俺はまだ子供だったから、何かをしなくてはならないわけではなかった。毎日桜の相手をするようになった以外は生活も変わらなかったけど、慌ただしい雰囲気だけは理解できた。

 今なら、父さんたちがあの時どんなに大変だったか想像がつく。葬式の手配、保険の交渉、残された子供の身の振り方、まだまだ沢山用事はあったと思う。でもそれはまた別の話だ。

 とにもかくにも家の一角には仏壇が備えつけられ、父さんは姉である伯母さんの忘れ形見、桜を引き取ることに決めたようだった。了解を求める父さんに、母さんはもちろんだと頷き、俺にも異存はなかった。



「おウチに帰りたい」


 最初の三日間、桜は口癖のようにそればかりを繰り返し、ことある毎に泣いていた。迎えを期待していたのかいつも窓や玄関を気にしており、外で声が聞こえると急いで覗きにいったりもした。母さんたちと一緒に寝ていたけど、夜泣きも酷かったようだ。

 それでも幼いなりに自分の置かれている状況を把握し始めたのか、一週間経つ頃には帰りたいと口に出すこともなくなり、二週間後には笑顔も見えてきた。相変わらず夜泣きは続いているようだったけど、一ヶ月も経つと母さんの手伝いをやりたがったりと、この生活に馴染もうとしている様子が見て取れだした。昔からウチの家族に慣れ親しんでいたから、多少の安心感もあったかもしれない。

 女の子が欲しかった俺の両親は桜に甘かった。なんでもかんでも買い与えたり、ねだったら際限なく小遣いをくれてやるだとか、物質的に潤沢させるという意味じゃない。父さん一人だったらその傾向はあったかもしれないけど、それにきっちり目を光らせていた母さんは、むしろ躾の面では大層厳しかった。

 じゃあ何が甘かったのかといえば。

 例えば桜が父さんの持ち物を勝手に使い、壊してしまったとする。発覚を恐れた桜はそれを隠す。でも子供の浅知恵で隠蔽しようとしても、それは到底隠し場所といえるはずもなく、簡単に見つけ出されてしまう。

 そういう場合、父さんは怒らない。それどころか壊してしまってさぞかし怖かっただろうと、犯人である桜を慰めるという息子でも呆れる親馬鹿っぷりを見せる。

 一方母さんはというと、壊してしまったことよりも勝手に持ち出したことと、壊した事実を黙っていたという点を叱った。常識的な判断で、至極真っ当な教育方法だと思う。でも問題はその後だ。

 叱責された桜が泣きながらか細くごめんなさいと謝ると、もういけない。

 ギュウムと固く抱き締め、自分がいかに桜のことを可愛いと思っているかを切々と語り出す。そして愛しているからこそ叱るのだ、と懇切丁寧に言い聞かせた。更にはその日の晩に桜のリクエストを反映させたメシを振る舞うべく、材料の買い出しへ一緒に連れていき、尚かつ好きな菓子を買ってやるという始末だ。

 確かに叱った後は多少のフォローも必要だろう。でもこれは行きすぎじゃないのか、と桜好みの夕メシを見る度に考えた。

 桜はそうそう悪戯をして困らせるタイプではなく、怒られた後の方が良い目を見られると、悪賢い学習力を発揮する性格でもなかったのが幸いだった。これは一歩間違えればワガママ姫の誕生に我が家が貢献するという、なんとも不名誉な憂き目に遭う瀬戸際だったと思う。

 ついでにいうと、俺が何かをしでかした時は父さんの拳骨と母さんの小言を食らい、もうしては駄目よと頭を撫でられて終わるだけだった。このあからさまな待遇の違いについては、よくぞ非行に走らなかったものだと自分を褒めてやりたい。

 それでも特に文句を垂れる気にならなかったのは、結局は俺もこの妹が可愛くて仕方なかったからだ。


 小学校の高学年と低学年では授業の数が違い、必然的に帰る時間は俺の方が遅い。それでも週二回、水曜日と金曜日は同じ時間に終わるから、桜のクラスに割り当てられた靴箱で待ち合わせて一緒に帰ることにしていた。


「ソウは面倒見いいよな」

「別に。かわいいし」


 感心したような、それでもちょっとからかうみたいに言ってくる友達へ特に弁明もせず、サラリと言い返して教室を出る。佐伯は妹命だとよく揶揄されるようになったけど、別にそう思われて不都合があるわけでもなく、否定する要素も見当たらなかった。

 桜が二年生の、ある水曜日。いつものように靴箱まで迎えにいくと、遠目にも桜の背負った赤いランドセルが、いやに大きく見えるのが気になった。本人がしょんぼりと俯き、やけに小さくなっていたからこその対比なんだろうと思う。


「待ったか?」


 俺の声に顔を上げた桜は、複雑そうな、今にも泣く一歩手前の表情をしていた。


「どうかした?」

「なんでもない……」


 明らかに何かがあったと匂わせる顔で言われても、説得力がない台詞だ。


「ベソかこうとしてるぞ?」

「そんなことないもん。蒼兄ちゃんのイジワル!」


 意地悪とは心外な。自慢じゃないが俺は今までこの方、桜を苛めたことは一度もない。それでも桜はプイと顔を背けたまま、何も話そうとはしなかった。

 ――反抗期か?

 なんにしろ、ここでこれ以上言っても意固地になるだけか。


「じゃあ帰ろうか」

「うん……」


 そのまましばらく、桜はムッツリ黙ったまま歩き続ける。家まであと半分の距離である、目印のコンビニに差しかかった所で、ポツリと言葉を漏らした。


「ねえ、蒼兄ちゃん」

「んー?」

「私は藤枝で蒼兄ちゃんは佐伯なんだよね」

「そうだな」


 俯き加減で、テクテク歩きながら言葉を続ける桜に相づちを打つ。


「おじさんとおばさんも佐伯なんだよね」

「それがどうかしたのか?」


 何か変だなと思いつつも、先を促した。


「それって、おかしな、ことなの?」


 声に嗚咽が混じってくる。


「なんでそんなこと訊くんだ?」

「クラスの、子がっ……そんなの変だって!」


 そこまで言った後、桜はとうとう盛大に泣き出してしまった。

 この妹はよく泣く。苦手な虫にうっかり触ってはしゃくり上げ、すっ転んでは号泣した。

 立ち止まった俺たちに、周囲の人間はチラチラと視線を寄越しながらも追い抜いていく。

 とりあえずは歩道で突っ立ってるのも迷惑だろうと、桜の手を引いてもう少し歩いた先、帰り道沿いにある公園へ向かうことにした。

 桜は佐伯の籍に入っていない。俺の両親は養子に迎えるかどうするか迷っていたようだけど、佐伯になるか藤枝のままでいたいか、結局は桜の自主性に任せるという方針を取ったようだった。といっても、まだ幼い桜がそれを決められるはずもなく、名字が決定付けられるのはまだまだ先のことだ。

 でも本人のためを想って用意された選択肢も、時によっては弊害を産みだす。

 名字の違う桜が俺たち家族と暮らしている事実を、周りが訝しむのは当たり前だ。今までだって父さんや母さんが他人に訊かれていたのを見たことはあるし、子供である俺にそれとなく確かめてくる人もいた。これまでは幸いにも、桜がそれを耳にする機会がなかっただけだ。

 妹に余計なことを吹き込んだムカツク同級生をシメてやるのは簡単だけど、その場限りの対処でしかない。

 七・八歳の子が名字の違いを盾に相手を攻撃するとは考えにくいし、その子供に疑惑を植えつけたのは多分親なんだろう。親の方だって、別に悪意があったわけじゃないのかもしれない。それでも異質な者に対して否定的になってしまうのは、ある意味仕方のない本能のようなものだ。幼い子供は正直にそれを出してしまう。

 そして年齢が上がるに連れて、クラスメート自身の考えで桜をからかい出す割合は、増えるに決まっていた。

 学年の違う俺が四六時中ついて守ってやれるわけがない。それでもこの先ずっと桜について回る問題だ。いちいち何か言われて傷付いているようでは身が保たない。

 ……とくれば、桜の意識を変える必要がある。

 鍛えなければ。

 とは思うものの、まずは慰めることにした。

 辿り着いた公園の遊具では、幼稚園から俺ぐらいの年代まで色々遊んでいた。おかげでベンチは空いている。

 まだグスグスいっている桜をそこに座らせ、しゃがみ込んで目線を合わせた。


「桜は佐伯って名前好きか?」


 ヒクつきながら桜が頷く。


「じゃあ藤枝は止めて佐伯になりたいか?」


 今度は首を横に振っている。


「じゃあそれでいいだろ? 俺も、父さんも母さんも、桜が藤枝で変だとは思わないよ」

「でも、蒼兄ちゃんたちと同じがいい……」


 グイッと拳で目を拭い、桜は無茶なことを平気で言う。

 いや、それは無理だろう。それとも両方なりたいってことか?


「どっちかじゃないといけないんだよ」

「そうなの?」

「そうなんだ。藤枝でいたいんだろ?」

「うん。お父さんとお母さんの名前だもん」

「そうだよな。伯父さんと伯母さんと同じ名前だ。それなのに桜がおかしいと思ってたら、二人とも悲しむんじゃないか?」

「私はそんなこと思ってない! 変だって言ったのは男子なの!」

「でも泣いてたじゃないか。本当に思ってないんだったら泣く必要なんてないだろ?」

「じゃあもう泣かない!」


 長い服の袖で残った涙を拭きつつ、地に着いてない足をジタバタさせて、桜は大声で宣言した。


「へー、泣き虫の癖に」


 わざと馬鹿にするように嗤ってやる。


「泣かないったら泣かないの! 蒼兄ちゃんのバカ! 置いてっちゃうからね!!」


 全く迫力のない目付きでキッと俺を睨みつけ、ベンチから飛び降りた桜は家へ帰るべく、兄を置き去りに走っていってしまった。

 ひとまずはこれでいいだろう。後は帰ってから母さんに報告をして、ちゃんと慰めてもらっておこう。


 それから俺は愛の鞭を振るうべく、桜に対する態度を改めた。


「これもーらい」

「ああっ! 最後の一個!!」


 時には桜のおやつを掠め取る。取られてしまった本人は、「おばさん、蒼兄ちゃんが!」と叫びながら母さんの所へ走っていった。

 今まではどちらかというと、自分の分まで分けてやっていた俺としては己の行為に疑問を持たないでもないけど、兄妹喧嘩の第一といえばまずはコレだろう。


「桜、お使い行ってこいよ」

「それってさっき蒼兄ちゃんが頼まれてたんじゃない」


 不満そうにブウたれている。


「俺はやることが色々あって忙しいの」

「ゲームしてるだけでしょ」

「今から宿題するんだよ」

「私だって宿題あるもん」

「下級生より上級生の方が量も多いし難しいだろ。言うこと聞かないと分からない所教えてやんないぞ。ほらっ、お兄様に逆らう気か? 早く行ってこい」

「オーボーだ!」

「横暴の意味も解らないくせに生意気言ってんな」

「蒼兄ちゃんのイジワル!!」


 桜は地団駄を踏みながら涙を交え、悔しそうに抗議していた。それでも結局は言いつけに従った。

 時には小突いて偉そうに命令してやる場合もある。地になりそうで怖い今日この頃だ。

 急に理不尽な振る舞いを始めた兄に、今までそんな扱いを受けたことがなかった桜は最初の方こそ戸惑っていたものの、段々言い返したり、父さんや母さんに言い上げたりと逞しくなってきている。

 ただ、食べ物を散々奪い取ったせいで、食に対する執着心がいささか強くなってしまった。まあ、どんな時でも食べる元気があれば大概乗り越えていけるだろうから、それはそれでいい傾向なのかもしれない。

 父さんたちも俺の行動を不思議に思っていたようだけど、兄妹らしいとでも納得したのか、その場その場で妹を苛めるなとハタかれはしても、どうしてこんな真似をすると問い詰められるようなことはなかった。

 かわいい妹が逆境に耐え得るためにしごいてやろうと俺は日々心を砕いていた。しかし外では今まで通り優しい兄として、常に桜を気にかけるように行動した。根本の所ではちゃんと味方であると分からせるためだ。

 それなのに桜からは外ヅラがいいだけだ、と誤解されてしまっているのが玉に瑕ではある。かといって嫌われている様子はないみたいだから、まあいいか。


 桜が九歳になった時、もう夜泣きもしなくなったし大丈夫だろうと、それまで母さんたちと寝ていた桜は自分の部屋で眠るようになった。

 寝付くまで母さんが傍にいてやってたとはいえ、それでもやはり最初の頃は心細かったのか、夜中に起きては、やれ一緒にトイレへ付いてきてほしいだの、怖いからこっちで寝かせてほしいだの、と主に俺が色々と被害を被った。突き放すべきかなとも考えたけど、さすがにこれは可哀想かと思い直し、表面的にはブチブチ文句を言いながらも受け入れてやった。

 それでも日が経つ内に平気になってきたのか、俺のベッドへ潜り込んでくる回数も徐々に減っていった。そうなると寂しいもので、ついからかってしまう。


「恐がり桜。もう夜中に一人でトイレへ行けるようになったのか?」

「うるさい蒼兄ちゃん! そんなの昔のことじゃない!」


 かわいくない反論をする割に、怖い夢を見たと言って枕持参でやってくる時もあった。

 それに対し、手が離れていないと確認して内心で喜んでいる自分をおくびにも出さず、まだまだだなと憎まれ口を叩きながらも招き入れる俺は、どうしようもない兄馬鹿だ。


 中学に入ると、周りが急に色気づきだした。そして女子連中によく呼び出されるようになった。

 階段の踊り場、校舎の裏、屋上。いずれも人気の少ない場所。時には先輩にまで。

 どんな場所へ呼び出されようとも、告げられる言葉は変わらない。


「付き合ってほしいんだけど」


 けどってなんだ? その続きは? どこへって返事するぞ?

 俺のどこらへんがいいのかがよく分からなくて、ある時訊いてみた。

 同じ学年で、違うクラスの見知らぬ女子は、恥ずかしそうにのたまう。


「格好いいし」


 身内の顔かたちを褒める気はあまり起こらないけど、昔から美人だと持ち上げられている、母さん譲りの容姿は一般受けするようだ。


「頭もいいし」


 桜に分からない所を教えてやるために、勉強は怠らないようにしている。尋ねられて答えられないようでは兄の沽券に関わるからだ。生まれつきおつむの出来がいいわけじゃなく、努力の結果といえる。


「他の男子より大人っぽいし」


 昔から年齢よりも大人びている自覚は確かにあった。

 昔から?

 ああ、桜がウチに来てからだ。複雑な事情というやつは、いやでも成長を促してしまうものらしい。それでもあの妹にそんな傾向がみられないということは、俺の様々な努力も功を奏しているのだと自負する。我ながらいい兄だな。

 要するに、目の前にいる子があげつらっている好ましいとされる俺の構成要素は、容姿以外は桜のために培ってきた産物だ。それを好きでもない、ましてや面識のない人間に振る舞う必要はない。

 そう結論付けて、それでも恨みを買わないよう丁寧に断っていたら、ある時気付かされた。


「ソウ君って血の繋がらない妹さんがいるって本当?」

「繋がってないことはないよ」

「でも本当の兄妹じゃないんだよね」

「それが何?」

「シスコンだって聞いたことがあるけど、それって本当に妹として?」


 これには天地がひっくり返るほど驚愕させられた。俺が桜に対して恋愛感情を抱いていると言いたいのか。

 こういう誤解を持たれるとは思わなかった。でもよく考えたら想像はできたはずだ。迂闊だった。俺が余りにも断り続けるから、邪推されてしまったんだろう。げに恐ろしきは嫉妬という感情か。

 俺は瞬時に認識を改めることにした。

 手始めに、目覚めさせてくれた目の前の子に、親しみを込めて(見えるように)笑いかける。

 幸い、綺麗な部類に入る女子だ。


「もちろん、妹はかわいいけどあくまで妹だよ。でもそんなこと、今は関係ないよね。俺に告白してくれてるんでしょ?」


 途端に、今まで問い詰めるようにツンケンしていた態度がなりを潜め、俯いてもじもじし始めた。これはこれでかわいい――と思えなくもない。

 こうやって特定の彼女を作っておけば、桜が変に噛みつかれることもないだろうし、俺にもそのうち好きな子ができるかもしれない。


 そうやって、月日は流れた。

 もうすぐ桜は小学校の卒業式を迎える。

 俺は今日も桜をおちょくって、それに本人は「蒼兄ちゃんのイジワル!」と言い返した。

 昔はしょっちゅう耳にしていた「蒼兄ちゃんのお嫁さんになる」という言葉は残念なことに、最近ではとんと聞けなくなってしまった。

 相変わらず泣き虫なのは直らないけど、大分打たれ強くなってきたと思う。


 伯父さん、伯母さん、あなたたちの娘は今日も元気に笑っているよ。


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