ガストの日常
※本編には登場しませんが、サイドストーリーでチラホラ出てくるガストの話です。
ガストは明るく長めのオレンジの髪に、優しいうす桃色の目を持ち、背も高く中々のハンサムさんです。女性を見るとまず褒めて口説こうとしますが、アステルやレジーが傍にいるとハントに失敗します。いつも不遇な扱いを受けているのはご愛敬。
ここはベルディア王城。下働きの人間たちが忙しそうに行き来する回廊。
その死角に当たる場所である。
「それでさ、今夜一緒に食事でもどう?」
「ええ? でも……私彼氏いるし……」
ガストの前には、かねてより目をつけていた王城の小間使いがいる。
ぽってりとした唇に、はち切れんばかりの肢体を窮屈そうなお仕着せの服に包んだ彼女は、中々に肉感的で彼の好みをどストライクに突いているのだ。
彼女は渋る素振りを見せながらも期待に満ちた上目遣いで彼を見やり、語尾は「いるしぃ」と尻上がりで充分に脈はある。
――いける!
ガストはご機嫌な夜のことを考えて喜んだ。
「お前は仕事をさぼって何をしている?」
そこに王城の女たちに絶大な人気を誇る美貌の主、ベルディア王太子であるレジナルドがやってくる。
「レジー様」
「今から町へ行くぞ。付き合え」
「レジー様こそ仕事はどうされたんです?」
「私はお前と違ってやることはやっているんだ。一段落ついた。付き合え」
重ねて命令すると、レジナルドはガストの首根っこを掴んで引っ張っていった。
――ああ、もう少しで口説き落とせるところだったのに……。
主に連行される王太子殿下の護衛は、未練がましく彼女に視線を投げかける。しかし彼女は既にガストの存在を忘れ、その目はレジナルドに釘付けにされていた。
あの彼女のことは潔く断念しよう。ガストは次の彼女に行くことにした。
星の数ほど女に声をかけ、幾人もの女たちにすげなくされてきたガストは、このくらいのことではへこたれないのだ。諦めがよく、前向きなところが彼の長所である。
欠点でもあるのだが……。
「絶対おすすめなんだって。二人で行こうよ」
「んー。どうしよっかなぁ」
今回の彼女はいきなりの好感触。
図書室勤務の彼女は常に髪を乱れなく一つに結い上げ、隙のない服装で禁欲的な雰囲気を漂わせている。その割には砕けた性格が親しみやすく、周囲の人気も高い。
――今度こそいける!!
楽しい予感に胸膨らませ、ガストは喜んだ。
「ガスト。ここにいたんですか?」
そこに王城内でレジーと人気を二分する、見目麗しい彼の仕事仲間、アステルバードが姿を現す。
「ベルナールが探していましたよ。行きましょう」
「バド、なんでお前が今ここに来るんだ!」
「だからベルナールに頼まれたんですよ。それではすみませんが、ガストをお借りします」
アステルはガストの腕をしっかりと捕らえると、自らにうっとりと見惚れている彼女に眩しい笑顔を放ち、彼を引っ立てていった。彼女はもうガストに一瞥もくれない。
――ああ、後もう一歩だったのに……。
ズルズル引き摺られながら、ガストは諦観の溜め息を漏らした。
次回こそはと決意を胸に、新たなる闘志を燃やすガストであった。