30.踏破者、護衛依頼の報告をする。
王女さま達と別れた後、その日は物資の補給と休養に充てた。
そしてその翌日、つまり今日だが、俺たちは町を発つ前にハンターギルドを訪れていた。
依頼達成窓口の前に並ぶ。
建物の造りはスリアドのものと変わらないため、迷う事はない。
「お疲れ様です。依頼達成報告で宜しいでしょうか?」
この窓口の受付はずいぶんと落ち着いた感じの青年だった。
「ああ、これが依頼書だ。」
俺は依頼書とエルの分も含めたタグを提示する。
「では依頼書を確認します。……少々お待ちください。」
そう言うと受付の男はそのままバックヤードへ消える。
なんかこの展開多いな。
しばらく待つと先ほどの受付の男性が戻ってきた。
「奥の応接室へ来ていただけますか?」
仕方ないのでついていくが、依頼達成報告くらいささっと終わらせてほしい。
バックヤードに足を踏み入れてすぐの扉を受付の男が開く。
中へ入っていく男に続いて中に入ると、そこには初老の男が立って待っていた。
「呼びつけてすまないね。私はこのギルドのマスターをしているカルザンと言う。よろしく。」
またギルドマスターか。
簡単に俺とエルも自己紹介し、促されるままソファに腰を下ろす。
「依頼書確認したよ。王家の確認印もね。この度の【指定依頼】は達成として受理するよ。」
「それはどうも。」
「で、ここに呼んだ理由なんだが、実はスリアドのギルドマスターのアセット君から君たちが見えたら通信を繋いでほしいと要望を受けていてね。」
そう言うとカルザンは懐から魔道具を取り出し、テーブルの上に置く。
これは【伝送器】という名の魔道具で、登録した同形式の魔道具間で音声通信を行えるものだ。
主要な町を治める代表者であったり、ハンターギルドのような国に囚われない組織でしか有していない希少なものでもある。
「では繋ぐよ。」
カルザンは手元の魔道具を操作する。
プルルルルという機械音がしばらく鳴り、そして唐突に途切れる。
『こちらスリアドギルドだ。』
「ああ、こちらカルザンだ。例のハンターが来たよ。」
「ジークだ。」
『ああ、良かったジーク。護衛任務の方はどんな首尾だった?』
「あんたの情報通り、王女一行を襲撃する者どもが現れた。護衛の騎士たちでは対応が難しいと判断して戦闘に介入。鎮圧している。」
『ずいぶんあっさりだな。……そうだな。腹の探り合いはやめよう。襲撃者はフレンブリード辺境伯の手の者という情報は掴んでいるか?』
「……ああ。」
アセットと俺の言葉に事情をよく知らないカルザンは驚く。
俺は別の意味でアセットの言葉に驚いていた。
襲撃者の情報まであるのか。
凄い情報網を持ってるんだな。
『先に言っておくとこれは情報があったわけではなくて推測だ。そして俺は君が【アビス】で亡くなったと言われているフレンブリード辺境伯の息子ではないかと思っている。違うか?』
……ここまで情報を得ている人が居るとは……。
こうなっては秘匿するより情報を開示して取り込んだ方がトラブルは少ないか?
「……ご明察と言っておこう。」
『やはりそうか……。王女殿下はこのことを?』
俺はアセット、そしてカルザンに事の次第を話した。
襲撃者の3人を匿っていることも、フレンブリード辺境伯の凶行を明るみに出そうとしていることもだ。
アセットはそこまで推測できていて、あえて王女への護衛任務を俺に出すような人物だ。
思惑はあるのかもしれないが、フレンブリード辺境伯の息がかかっていることはない。
カルザンにしても、ここまで頭の回るアセットが話を聞かれてもいいと思っているくらいなので大丈夫だろう。
『そうか……。ギルドとしては辺境伯と対立するわけにはいかないから動けないが、個人的なレベルでは支援しよう。先行してミリア……君たちを監視していた密偵に辺境伯家の動きを確認してもらう。後で落ち合って情報共有すると良い。』
やはり協力してくれるようだ。
「助かる。立場が悪くならない程度で構わないのでよろしく頼む。」
『それともう一つ。本当はこちらの情報を共有するために君を探していたんだ。』
「?」
『フレンブリード辺境伯の養子であるアレン・フレンブリードが手下を引き連れてライラックを目指している。』
「アレンが?……襲撃失敗の後始末か?シルバの独断専行が判明したため王女を護りに来た体で……とかか?」
『いや、それがそうではなさそうだ。奴らは昨夜この町へ来て一泊してるんだが……ミリアに張っていてもらったんだが、どうも王女様を攫うことが目的みたいな言い方をしていたらしい。』
「え?」
俺の理解が追い付かない。
辺境伯家の息子と周知されている人物が堂々と王女に接近し、攫う??
何が目的だ?
この行動の裏になにか真意があるのか?
『混乱しているみたいだな。アレンについてだが、俺の所感で言わさせてもらうとあいつは正真正銘の馬鹿だ。粗暴で他人を見下す。政治判断を下せる頭もない。スリアドの町に入る時も衛兵と少し揉めるくらいだからな……そのおかげで奴が動いていることが発覚したんで助かったんだが……。おそらくだが、今回の行動にも深い意味はないだろう。暗殺ではなく誘拐と言うところから考えると王女様を気に入ったとかなんだろうな。』
「そんな……盗賊と変わらないじゃないか。」
『民からすれば一緒だ。アレンは養子と発表されてからのこの一年、かなり派手にやってる。そして奴らは今日の昼頃にはライラックに着くだろう。人数は配下含め41人との事だ。隣領の町中にいる王女様に手を出すとは考えたくないが、何をするかわからない奴だからな……。じゃあカルザン。後は頼んだ。』
アセットがそう締めると通信は切れた。
顔をあげると頭を抱えるカルザンと目が合う。
「ジーク君、【指定依頼】を受けてくれないかい?」
そうなりますよね。
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