27.踏破者、ライラックに着く。
今日は色々あった。
何とか日が落ちる前にライラックの町に着いてよかった。
「じゃあ今日は各自休憩で。明日の朝食後に今後の事を話そう。」
俺はそう言って、2部屋取ったうちの1部屋のドアノブに手をかける。
俺の後ろにはローブのフードを深くかぶったシルバ。
隣の部屋に入っていくのはエル、メル、リルの3人。
結局、彼らを放置できなかった俺は、付き従う相手を父であるフレンブリード辺境伯から俺に変えるよう要求したのだった。
シルバはそれでもかなりの葛藤があったようだが、メルとリルが要求を吞んだため、最後には折れた。
そしてそのまま全員でこの町へと移動し、宿を取ったところだ。
「ジーク坊ちゃん、いえ、ジーク様。我々をお救い頂き、ありがとうございます。改めて感謝を。」
部屋に入り、フードを取ったシルバが俺に頭を下げる。
「礼ならいいよ。あの家じゃシルバだけだったからな……俺の事まともに扱ってくれたのは。返礼だと思っておいてくれ。」
俺はそう言いながら昔を思い出す。
ダンジョン生活が長すぎたせいか、それはもうおぼろげにしか呼び起こせなかった。
さして鮮明に思い出したい内容でもないため、むしろ良かった。かな?
「私を召し抱えることで不利益もあるでしょうに……。特に、今この町には王女一行が滞在しているはずです。」
そうなのだ。
俺の護衛対象だった貴族一行のお偉いさんが第二王女であるという事はシルバに聞いたが、その第二王女一行の今日の宿泊予定地がここなのだ。
とはいっても2~3日で次の町へ向けて出発するはずだ。
「まぁその辺の問題は明日皆で考えよう。シルバは方針が決まるまでは外で顔を出さないようにな。」
「心得ております。ジーク様、もしよろしければあの後どういった事があってあそこへ現れたのかお聞かせ願えませんか?」
「あの後か……。」
その後、俺はシルバにこれまでの経緯をかいつまんで話した。
シルバは大分驚いていたが、俺やエルの強さを見ている為納得はしたようだった。
「……そっちは何があったんだ?どうして王女暗殺なんて凶行に走ったんだあの男は。」
「……王戦が間もなく始まります。辺境伯殿はそこで功績を得て宰相の地位を得たかったのだと推測します。」
「権力を得るためか……。」
俺の頭にはその権力闘争の為に命を落とした47人の兵士の事が浮かんでいた。
それぞれがどのような思いであの場にいたのかと考えてしまう。
ほとんどの兵士に直接手を下したのは俺達で、気持ちの悪さが残っているがもうどうしようもない。
シルバとはその後フレンブリード家がどのような状況にあるかを軽く話して寝ることにした。
養子のアレンはかなり好き勝手にやって方々に迷惑をかけているらしい。
養父である辺境伯の命にも従わないとシルバが嘆いていた。
『我、最近出番無くない?』
途中、壁に立て掛けた刀から声が聞こえたような気がしたが全力で無視した。
◇◇◇◇◇
翌朝、宿の一階にある食堂の隅で俺たちは朝食をとっていた。
朝一番でエルが「主殿!!今晩からは主殿と一緒の部屋にしてくれ!!」と縋ってきたのには驚いた。
こいつ最初は男と同じ部屋など~みたいなこと言ってたはずなんだけど!?
メルとリルに目をやるといやらしい顔で笑っていた。
あ、これ昨晩かなりイジられたな。
メルとリルは普段好奇心旺盛な女の子で、特に恋愛系の話が大好物だったのだ。
その上勘違いしやすい。
昔、俺に好きな人が出来たと勘違いしたこの二人にかなりしつこく問い詰められたことを思い出す。
双子ならではのチームワークをそんな方向に使わないでほしいと何度思ったことか……。
おそらく、俺との関係を邪推した二人に一晩問い詰められたんだろう……。
ご愁傷様。
そして全員で一階に移動し朝食をとるという流れになっていた。
「今後の事について話しておきたい。エル、防音頼む。」
「うむ、【遮音】」
エルの魔法で俺たちの周囲に音を遮る壁が展開される。
なんでも外からの音は入ってくるが内からの音は外に出ない仕組みらしい。
「まず、俺の目的について話しておこう。……俺はこのあと一旦王都を目指し、そこでハンターとして活動するつもりだ。色んな世界を見る旅というのも興味があるが、強い奴と出会い、戦い、己を高めていきたいと思っている。」
少し高揚した気分を落ち着け周りを見る。
エルは呆れ。
シルバは苦笑い。
メルとリルは戸惑い。
あれ?俺の思ってた反応と違くない?
もっと「おおー」とかある場面じゃないの?
まぁここで話を止めるのもなんだしな。
と思い話を続ける。
「とまぁそのためにも目の前の問題から片付けていきたい。シルバたちをどうするかだな。」
隣でシルバが頷く。
「メル、リルはともかく私は面が割れています。手配もされるでしょうし、今後は表に立つわけにはいかないでしょう。ジーク様が王都に拠点を構えるというのであれば尚更ですね。」
「このまま3人を匿う方針ならな。」
「……といいますと?」
「第二王女に面会してフレンブリード辺境伯を売る。」
「なっ!?」
「王女さまも襲撃者本人をどうこうしても仕方ないと思っているだろう?大元を叩けるのであれば交渉の余地があるんじゃないか?」
「し、しかし証拠がありません!!」
「とっ捕まえて自白させればいい。方法がある。」
俺がそう言ったタイミングだった。
「失礼します。少しお話宜しいでしょうか。」
俺たちに声をかけてきた人物が居た。
それは王女の護衛隊隊長だった。
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