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こちらデリバリー。担当、魔王ベルゼブブです

作者: Hulanes
掲載日:2026/09/11

【登場人物】

シンジ:厨二病をこじらせた大学生。暗黒魔術師を自称する痛いやつ。

ベルゼブブ:魔界の大公爵。威厳はあるが、バイトのプロ意識が異常に高い。

母:シンジの母親。動じない心を持つ。


(部屋の明かりが消され、怪しい紫色の光が灯され、揺れる。床には赤い絵の具で描かれた魔法陣)


シンジ:「出でよ、漆黒の深淵より来たりし破壊の王! 我が血の契約に応え、この愚かな世界に審判をくだせ!」


(激しい雷鳴の音。煙が巻き起こり、巨大な角と黒い翼を生やした男が現れる)


ベルゼブブ:「……我を呼び覚ますのは貴様か、矮小なる人間よ。我が名はベルゼブブ。命を差し出す覚悟はあるのだろうな?」


シンジ:「くくく……成功だ! さあ大悪魔よ、我が望みはただ一つ! この世のすべてを——」


ベルゼブブ:「あ、ちょっと待って。その前に確認なんだけど、これスマイルセットで『ポテトLに変更』で合ってる?」


シンジ:「……は?」


ベルゼブブ:「いや、受け取り伝票に『ポテトL・コークゼロ』って書いてあんだけどさ。あと置き配指定だったのに召喚陣の真ん中に転送されたから、足の裏が地味に熱いんだよね」


シンジ:「お前……魔王ベルゼブブじゃないのか!?」


ベルゼブブ:「ベルゼブブだよ。副業でデリバリーやってんの。魔界もいま空前のハイパーインフレでさ、角のワックス代すら出ねえんだわ」


シンジ:「魔王が副業で配達すんな! っていうか俺は召喚の儀式をしてたんだ! 注文なんてしてない!」


ベルゼブブ:「お前が詠唱中にドヤ顔でタップしてたそのスマホ画面、よく見ろ。『Uber Eats』の確定ボタンだろ。呪文だと思って読み上げてたのは『初回限定プロモーションコード:DEATH666』だよ」


シンジ:「マジかよ……! ちなみに割引効いてるのか!?」


ベルゼブブ:「バッチリ500円引き。で、商品代金の1850円。PayPayでいい?」


シンジ:「PayPayで払えるのかよ! いや待て、俺の暗黒魔術の野望はどうなるんだ!」


ベルゼブブ:「知らんよ。俺はただ冷める前に届けたいだけ。次の配達で隣の町のアザゼルさんにタピオカ届けなきゃいけないんだから」


シンジ:「悪魔同士でタピオカ注文し合ってんじゃねえよ!」


(その時、突然バタンと部屋のドアが開いた)


母:「シンジ! 夜中に大声出さないの! あと玄関にいる角生えたお兄さん、靴は脱ぎなさい!」


ベルゼブブ:「あ、お邪魔してますお母さん。これサービスのスパイシーチキンです」


母:「あらご丁寧に! シンジ、あんたもこの悪魔さん見習ってちゃんと挨拶しなさい!」


シンジ:「おふくろ騙されるな! そいつはこの世を滅ぼす絶望の象徴だぞ!?」


ベルゼブブ:「滅ぼすのは深夜のお腹の空き具合だけ。じゃ、アプリで『星5』の評価よろしくね」


ベルゼブブ、暗雲とともに鮮やかに消去。残されたのは、いい匂いを漂わせる袋と、画面の『評価する』ボタンを静かにタップするシンジ。


(1週間後の深夜。自室でスマホを握りしめるシンジ。床の魔法陣は綺麗に掃除されている)


シンジ:「ふははは! 先週はうっかりUber Eatsでバーガーを頼んでしまうという不覚を取ったが、今宵は違う! 完璧な腹ごしらえの戦略のもと、今回は『出前館』で激辛インドカレーを注文した!」


(突如、部屋の空間が歪み、怪しい紫の煙と共にベルゼブブが現れる。今回は赤い「出前館」の保温バッグを背負っている)


ベルゼブブ:「お待たせしましたー! 出前館です! 『激辛キーマカレー・チーズナンセット』でお間違いないでしょうか!」


シンジ:「またお前かあああああっ!?」


ベルゼブブ:「あ、先週は『星5評価』ありがとうございました。おかげさまで『プレミアム配達員』に昇格しました」


シンジ:「お礼を言ってる場合か! なんで『出前館』頼んでもお前が来るんだよ! アプリ変えただろ!?」


ベルゼブブ:「俺をナメるなよ。Uberだけじゃピークタイム以外の稼ぎが厳しいから、出前館とW(ダブル)稼働してんだよ。スマホ2台持ちでオファー受けてるからね」


シンジ:「大悪魔がギグワークのプロになってんじゃねえよ! っていうか、なんでまた召喚陣もないのに部屋の中に直接転送されてんだ!」


ベルゼブブ:「配達メモに『玄関の鍵が開かない場合は空間を歪めて自室まで届けてください』って書いてあったから。特別神対応だよ」


シンジ:「それは先週の儀式の後遺症で空間の結界がゆるんでるだけだ!」


ベルゼブブ:「まぁいいや。で、この『辛さ100倍・漆黒のデス辛カレー』だけどさ……マジで大丈夫? これ魔界の溶岩で煮込んでる店舗のやつだから、人間が食ったら胃に孔(あな)あくよ?」


シンジ:「くくく……恐れおののくがいい! 我が体内に流れる暗黒の血が、その程度の激辛に屈すると思うか!」


ベルゼブブ:「強がっちゃって。ほら、辛さ対策に『マンゴーラッシー』サービスでつけといたから。あと、いまレビュー投稿すると『次回使えるチーズナン半額クーポン』もらえるよ」


シンジ:「なんでそんなにアフターケアが手厚いんだよ! 悪魔なら『苦しんで死ぬがよい』とか言え!」


(ガチャッとドアが開く)


母:「シンジ! 夜中にまた大声……あら! 出前館の角生えたお兄さん! 今日もお疲れ様〜!」


ベルゼブブ:「お邪魔してますお母さん。これ、ルーがこぼれないようにラップ二重にしておきました」


母:「まぁ〜なんて気の利く悪魔さん! 今度うちの町内会の除雪作業も手伝ってくれない?」


ベルゼブブ:「日給と交通費出れば喜んで。じゃ、お会計1980円、今回は『期間限定ポイント』ご利用で全額消化ですね」


シンジ:「貯めてたポイント全部消えたーーーっ!?」


ベルゼブブ:「じゃ、次『ピザーラ』の配達入ったんで失礼しまーす」


(ベルゼブブ、出前館のバッグを担ぎ、鮮やかな手つきで空間の歪みに消える)


(さらに1週間後の夜。シンジの部屋。スマホを満足げに見つめるシンジ)


シンジ:「ふははは! 見たか悪魔め! Uber Eatsも出前館もスマホから完全にアンインストールした! これで我が聖域にお前が侵入するルートは絶たれたのだ!」


(ピンポーン、とインターホンが鳴る)


シンジ:「フッ……来たな。これは俺が『Amazon』で頼んだ、魔力を高めるための秘薬(エナジードリンク24本箱買い)だ。これなら普通の宅配便が届くだけ……」


(ガチャリと部屋のドアが開く。黒いキャップと配達用ベストを着たベルゼブブが、重そうなダンボール箱を抱えて立っている)


ベルゼブブ:「Amazon Flexでお荷物のお届けでーす。シンジ様でよろしかったでしょうか?」


シンジ:「なんでAmazonの配送員までやってんだよぉぉぉっ!?」


ベルゼブブ:「夜間の『オファー(配送枠)』が割増金で激熱だったんだよ。軽バンに入りきらない大型荷物も、俺の翼で飛べば一発だからね」


シンジ:「魔導の翼を物流の効率化に使うな! アプリ消したのになんで狙いすましたように来られるんだ!」


ベルゼブブ:「配送ルートのAIアルゴリズムが『このエリアはベルゼブブに任せるのが最速』って判定出すからしょうがないじゃん。あ、これ指定が『置き配場所:部屋の儀式エリア』になってたけど、ここにドカンと置いていい?」


シンジ:「置くな! エナジードリンクの重みで床の魔法陣が潰れる!」


ベルゼブブ:「はいはい。あ、あと『同梱包』で届いてるこの小さい袋ね。品名『漆黒の龍神眼アイマスク(ホット機能付き)』だって。テスト勉強でお疲れなの?」


シンジ:「品名を大声で読み上げるな! 暗黒魔法並みの精神ダメージを与えるな!」


ベルゼブブ:「ごめんごめん。じゃ、受領のサインだけスマホ画面に指で書いて。ちゃんとした文字で書いてね。『漆黒』とか読めない怪文書書かないで」


(ドアの向こうから母の声)


母:「シンジ〜、配送のお兄さんに冷たい麦茶持って行ったげて〜! あらお兄さん、いつもご苦労様! ついでで申し訳ないんだけど、リビングのイケアの棚組み立てるの手伝ってくれない?」


ベルゼブブ:「あ、いいですよお母さん。ドライバー評価で『星5』つけてくれたら、魔界の六角レンチで1分で組み上げますよ」


母:「助かるわ〜! 今日の夕飯、ハンバーグ余ってるから食べていきなさい!」


ベルゼブブ:「マジっすか! ちょうど次の配達ブロックまで15分空きあるんでいただきます!」


シンジ:「我が家になじむスピードが早すぎるだろ!! お前はどこの親戚だ!!」


(ベルゼブブ、ハンバーグの匂いに誘われてウキウキでリビングへ消えていく)


【新・登場人物】

アオイ:大学屈指の超美人クラスメイト。シンジの痛い部屋にグループ課題で訪問中。


(シンジの自室。アオイがパイプ椅子に座り、ノートPCを開いている。シンジは黒いコートを羽織り、壁に背をもたれて腕を組んでいる)


シンジ:「ふっ……ようこそ我が『黒の領域(ダークネス・ゾーン)』へ、アオイ。狭い部屋だが、暗黒の波動でリラックスするといい」


アオイ:「あ、うん……(部屋の隅の怪しい紫色ライトを見つめながら)。シンジくんって、なんか……独特なインテリアだね? 床に赤い絵の具で描いてあるのは……魔法陣?」


シンジ:「くくく……それはこの世の理(ことわり)をねじ伏せる契約の誓約線……(やべえ、拭き取り忘れてた!)」


(ピンポーン、とインターホンが鳴る)


シンジ:「チッ……『運命の訪問者』か。少し待てアオイ、我が使者に対応してくる」


(シンジ、大急ぎでドアを開ける。そこには「スキマバイトアプリ・タイミー」のポロシャツを着て、折りたたみ施術ベッドを担いだベルゼブブ)


ベルゼブブ:「ちわーす! タイミーで『出張肩もみ&整体 60分コース』で入りましたベルゼブブです! どこにベッド広げればいいっすか?」


シンジ:「(小声で激怒)お前ぇぇぇ! なんで『タイミー』で出張整体まで始めてんだよ! っていうか俺は呼んでないぞ!」


ベルゼブブ:「あ、お母さんから依頼受けたの。『息子がパソコンのやりすぎで肩こりひどいから揉んであげて』って。即マッチングしたわ」


シンジ:「おふくろ余計なことを……! 待て、いま部屋に大学の超美人クラスメイトが来てるんだ! お前みたいな角生えたヤバい奴に見られたら、俺の怪しい私生活が全部バレる! すぐ帰れ!」


ベルゼブブ:「帰れないよ、マッチングキャンセルしたら俺のペナルティポイント増えて次回から案件応募できなくなるじゃん。評価『5.0』維持してんだから」


アオイ:「シンジくーん? だれか来たのー?」


(アオイが玄関に歩いてくる)


シンジ:「ひっ……! 終わった……! 翼と角生えた悪魔が玄関にいたら、一発で通報される……!」


ベルゼブブ:「チッ、しょうがねえな……『光学迷彩(カモフラージュ)』!」


(ベルゼブブが指を鳴らすと、角と翼が消え、爽やかな整体師風のお兄さんに変身する)


アオイ:「あ、こんにちは! シンジくんのお友達ですか?」


ベルゼブブ:「はじめましてー! 整体師のベルゼブブです! シンジ様には普段からフードデリバリーやAmazonの配送で大変お世話になっております!」


アオイ:「えっ、デリバリー……? 整体師さんが配達もしてるんですか?」


ベルゼブブ:「ええ、マルチポテンシャライト(副業ガチ勢)なんで。シンジ様、先週お届けした『漆黒の龍神眼アイマスク』の効果はどうですか? 夜はぐっすり眠れてます?」


シンジ:「余計な情報を喋るなあああ!!」


アオイ:「……りゅうしんがんアイマスク……? シンジくん、目のケア届いてたの……?」


シンジ:「違うんだアオイ! これは魔力を充填するための……!」


ベルゼブブ:「あと、いつもPayPay残高ギリギリで『ポイント全額消化』で払うの可愛いですよね。あ、お姉さんも肩こってます? 今ならタイミー初回利用で10分延長サービスしますよ!」


アオイ:「ふふっ、シンジくんって意外と生活感あるんだね。ポイント貯めてるんだ」


シンジ:「アオイお願いだからそんな生温かい目で見ないでぇぇぇ!」


ベルゼブブ:「じゃ、シンジ様、ベッドにお召し上がりください。暗黒の根源(肩甲骨のコリ)をゴリゴリにほぐしますんで!」


(ベルゼブブ、満面の笑みで整体の手袋を装着。シンジのカッコつけは完全に崩壊した)


【終・登場人物】

シンジ:カッコつけ損ねたが、肩こりは完全に治った暗黒魔術師。

ベルゼブブ:魔界の大公爵。副業の鬼。今日でギグワークの目標額を達成。

アオイ:大学屈指の超美人クラスメイト。実は重度のヘビーユーザー。

母:最後までブレない母親。


(整体が終わり、すっかり肩が軽くなったシンジ。アオイとのグループ課題も無事に完成した)


シンジ:「ふ、ふん……整体などという軟弱な術に頼ってしまったが、課題は完璧だ。感謝するぞ、ベルゼブブ」


ベルゼブブ:「(スマホをタップして)よしっ! シンジ、朗報だ。今の整体の報酬で、今月の副業目標額『50万円』を達成したぞ! これで魔界のハイパーインフレも乗り切れる!」


シンジ:「ご、ごじゅう万!? お前、この一ヶ月でどんだけ働いたんだよ!?」


ベルゼブブ:「というわけで、俺の副業生活は本日をもって終了! 明日からは本職の『魔界大公爵』に戻りまーす。お前との腐れ縁もここまでだな」


シンジ:「……ふっ、せいせいするぜ。二度と俺の魔法陣を無料の転送ポート代わりに使うなよ(ちょっと寂しそう)」


アオイ:「えっ待って! ベルゼブブさん、配達やめちゃうんですか!?」


シンジ:「えっ、アオイ……?」


アオイ:「私、毎朝のタピオカと深夜のホットスナック、全部ベルゼブブさん指名で頼んでたのに! 『スピード発送バッジ』持ってるのベルゼブブさんだけだから助かってたのに!」


シンジ:「お前も顧客だったのかよ!? っていうか指名制度なんてあったのか!?」


ベルゼブブ:「アオイ様、いつも手厚いチップ(魔力500MP)ありがとうございました。ですがご安心ください。実績が評価されて、明日から『出前館・魔界支社カスタマーサポート長』に昇進したんで、今後は電話で対応させていただきます!」


シンジ:「悪魔のキャリアアップが着実すぎるだろ!!」


ベルゼブブ:「シンジ。お前が最初にプロモーションコード『DEATH666』で誤召喚してくれたおかげで、俺は副業の楽しさに目覚めた。最後の仕上げとして、アプリの『専属悪魔(サポート担当)登録』のボタンを押してくれ」


シンジ:「……チッ。仕方ないな。暗黒の契約を更新してやる」


(シンジがスマホをタップすると、部屋全体が眩い紫の光に包まれる)


ベルゼブブ:「毎度あり! 次回からは『困った時のカスタマーサポート』でお会いしましょう! それでは、良い悪魔ライフをー!」


(ベルゼブブ、後光と共に鮮やかに魔界へ帰還する)


アオイ:「ふふっ、シンジくん。なんかすごく賑やかで楽しそうな毎日だね。……ねえ、今度二人で『ベルゼブブさんの激辛カレー』注文してみない?」


シンジ:「あ、アオイ……! くくく、良いだろう! 我が『黒の領域』で激辛の宴を開催してやる!」


(そこへ、ドタバタとドアが開く)


母:「シンジ〜! ベルゼブブさんから『お歳暮』届いたわよ〜! 『魔界特選・極上黒豚ハムセット』だって! 今夜はハムカツよ〜!」


シンジ・アオイ:「「仕事が早すぎる(笑)」」


(画面には、評価:★★★★★(星5)の文字が誇らしげに輝いていた)

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