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第三十三話 開戦

教会を叩き割るような衝撃が襲ったのは、そのすぐあとだった。続けざまに耳を裂く破砕音が連鎖した。メアリはとっさにもっとも頑強な祭壇中央部に身を寄せた。衝撃音が連鎖し、天井の古びた石材が砕け、粉塵と砂利が雨のように降り注いだ。石片が肩や腕を打ち、鈍い痛みが肌に走った。他者を気遣う余裕はなかった。メアリにできることは悲鳴を上げ、あるいは上げようとして上げられないことだけだった。身を引きつらせ、悲痛なうめき声を上げることだけだった。頭を抱え、神様、と言って床を転がることだけだった。


それから数回衝撃が連鎖し、音が止んだ。メアリは上を向いた。本能的に自分の体に手をやり、醜態をさらした恥ずかしさを感じた。


恐ろしいばかりの静寂があった。風があり、悲鳴があった。頭上に陽光が注いでいた。天井が崩落して、祈りの椅子の並ぶ位置に大きな瓦礫が直撃していた。近くにうめき声を感じた。あの親子の姿が見えなかった。メアリはぎこちなく両脚で立ち上がった。頬に流れた涙の痕をぬぐい、そして急いで生存者を探した。


祈祷椅子が並ぶ中央のあたりに、負傷した少年いた。少年は、畜生、とか細く呟いていた。少年は胎児のようにうづくまっていた。立ち上がろうとし、しかし歩き出すことが出来なかった。少年は力なく転倒した。


メアリは急いで少年に近づき、大丈夫ですよ、と言った。少年の足の付け根が引きつり、血がポンプから出る水のようにほとばしっていた。メアリはその部分を押さえようとしたが、少年はその手を払いのけた。メアリは、動かないで、と言った。少年は、ああ、と言ってメアリの方向を見た。

「司祭様。」

それから少年はなにかを言おうとして気絶した。小さな口元が何かを言おうとして動いていた。メアリは祭祀用の短剣を用いて祭服を裂き、少年の足の付け根に巻き付けた。このような不潔な場所で治療をすることはできない。かといって清潔な場所なんてあるはずもない。メアリは体力の限りに少年を抱きかかえ、祭壇の近くまで移動させた。


メアリはふと三貴神が無傷で残っていることに気が付いた。教会は崩壊したと思ったが、旧世界の合金板で作られた部分は無事であることに気が付いた。崩壊したのは、積み上げたレンガだけであるようだった。


——旧世界の合金は、あの砲撃に耐えたんだ。


メアリはそれに気が付いた。息を呑む思いがした。メアリは少年を三貴神の聖像近くに寄せて寝かせた。それからの一連の動作をほとんど無意識に行った。少年の足の付け根をベルトで締め上げるようにして縛り、血の流れを止めた。そうしてから脱いだ祭服を使って少年の身体を温めた。少年の身体を抱き寄せ、自分の熱を分け与える。


瞬間、再び砲撃の衝撃が教会を襲った。


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