咆哮
笑うな。
笑うな。
笑うな。
笑うな。
笑うな。
俺を見て笑うな。
胸の奥で何かがうねった。
低く、重く、腹の底から響く音。
人間の声じゃなかった。
鼻の奥に鉄の匂い。
汗と血と恐怖が混ざった空気を、肺がむさぼる。
心臓が獣みたいに暴れ出す。
誰かの叫び声が遠くで弾ける。
——どうでもいい。
黙って何も出来なかった……いや諦めて何もしようとしなかった弱い[僕]はもういない。
笑われてた俺も、
殴られてた俺も、
全部剥がれた。
残ったのは、牙を持つ何か。
机が倒れる。
足音が逃げる。
教室が狭い檻みたいに軋む。
「逃げんなよ……」
唇の端から血が落ちた。
熱い。喉の奥で唸りが震える。
あぁ、やっと息ができる。
やっと俺になれた。
爪が食い込み、
掌に血が滲む。
痛みが心地いい。
この匂い、この熱、これが生きてる証だ。
もう人間の言葉なんていらない。
もう誰にも従わない。
俺は吠える。
腹の底から、世界に向かって。
「聞こえるか——
これが俺だああ!!」
「これからは死ぬ気でかかってこい!!」




