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[第五章]
よく知ってる町なのに知らない町みたいにぐるぐるぐるぐる回ってどこか分からない広い場所に出た。大きな古そうな木があった。葉っぱが異様に大きい。
言われたとおり、木から少し離れた場所で上着のフードを深く被ってしゃがんだままじっとしていた。三田君は木の根元まで歩いていって、背中に背負ったポリタンクからどぼどぼ水を流し始めた。しばらくすると葉っぱがハエ取り草みたいに閉じて三田君を捕まえようとする。でも、三田君は何だかよろけていて捕まらなかった。そうこうしている内に地面が川みたいになって、木が押し流されそうになる。そこで木の上に人影が見えて大きな声がした。
「三太夫、おめぇええ加減にせぇよ。」
三田君と同じ訛りをしていた。