表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カボチャ時々お菓子  作者: 甘夏 みかん
黄金の野菜
64/64

「そういえば、負けた方は見学してる人に愛を叫ぶっていうルールがあったよな?」


「うわっ、出た。そんなルールないってば。ねぇ、アイさん?」


「確かにあったな。でも、適用は次からでええんちゃう?」


「アイさん!?」


 今、思い出したという顔で即席の独自ルールを追加した。嫌そうに顔を歪めたカーディナルが、アイボリーに裏切られて目を大きく見開く。やはり見学者を対象にして正解だった。アイボリーを味方に出来れば、独自ルールが通る確率も跳ね上がる。

 案の定、アイボリーの巧みな話術でカーディナルが丸め込まれた。リーフグリーンは最初から展開を読んでいたのか、諦めたように苦笑して受け入れている。見事に独自ルールのねじ込みに成功した。胸を期待で弾ませながらカーディナルの負けをそわそわと待つ。


「にゃあああ、負けた!」


「悪いな、カーディナル。『リーフティフォーネ』!」


 リーフグリーンの掛け声で行われたジャンケンはカーディナルの負けだった。恥ずかしそうに顔を赤らめるカーディナルのカボチャの周囲に、木の葉の渦が巻き起こり対象を覆い隠す。カーディナルのゲージが千百から九百になった。カーディナルはゲージに見向きもせず、視線を彷徨わせて「うう」と唸っている。伏し目がちな瞳を逸らし、頬に含羞の色を滲ませて、ポツリと呟いた。


「し、しおん、アイさん。あ、愛してる……ッ」


「カーディナルぅぅぅ! 俺も愛してるぞぉぉぉ!」


「ちょっとしおんくん、抜け駆け禁止やで!」


 照れ気味に呟かれた愛の言葉に歓喜したしおんはカーディナルに飛びつく。すぐさま反対側からアイボリーがカーディナルを抱き締めた。カーディナルは羞恥心にジワジワと支配され、真っ赤な顔を両手で隠して悶えている。耳まで真っ赤になったカーディナルの顔を是非とも拝みたいところだ。

 しばらく二人の腕の中で縮こまっていたカーディナルが、「俺、合格?」と羞恥で潤んだ瞳で見つめてきた。叫んでいないから駄目なんて言えるはずもなく、しおんは不安そうに首を傾げるカーディナルの頭を撫でて肯く。カーディナルがホッと安堵の息を吐いて肩の力を抜いた。


「カーディナル、部外者をくっつけたままで良いから、さっさとジャンケンするぞ。鍋パーティーの準備が遅くなる」


「あっ、うん。じゃんっけん、ぽんっ!」


 軌道を修正したリーフグリーンに肯き、カーディナルがジャンケンの掛け声を告げる。結果はまたもやリーフグリーンの勝ちだった。カーディナルが「あにゃあ!? また負けた!」と、チョキを繰り出した自分の手を見つめる。再び『リーフティフォーネ』がカーディナルのカボチャに襲いかかった。カーディナルのゲージが九百から七百になる。リーフグリーンがジリジリと差を縮めていた。


「大好き! 超好き! めちゃくちゃ愛しい!」


 自棄気味にしおんとアイボリーに愛を叫ぶカーディナル。語彙力が乏しい告白でも、カーディナルの口から吐き出されただけで、胸の中を歓喜で満たしていく。しおんは上機嫌な面持ちでカーディナルを抱き締め、グリグリと二の腕に額を擦り付けた。緩んだ顔が引き締められない。恥ずかしそうに頬を紅潮させて、一生懸命に愛を伝えている姿も、可愛らしくて顔が綻んだ。


「じゃんっけん、ぽんっ!」


「ふにゃあぁぁぁ。勝てないぃぃぃ」


「俺はそいつらに愛を叫びたくないからな。『チェリーブロッサムストリーム』!」


 幸福感を溢れさせるしおんを引っ付けたカーディナルが、リーフグリーンの掛け声で行われたじゃんけんに負けて項垂れる。三連敗して落ち込むカーディナルのカボチャに、容赦なく吹き荒れる切れ味抜群の桜の花びら。枚挙にいとまがない量の桜吹雪だ。

 サラッと失礼なことを言ったリーフグリーンの魔法で、カーディナルのゲージが七百から百になる。ムッと頬を膨らませたカーディナルが、自分を取り囲むアイボリーとしおんを見上げた。眉尻を垂らした切なげな表情と潤んだ瞳で、弱々しく二人のズボンを掴む。


「しおん、アイさん。もう、許して? これ以上、好きって言ったら、恥ずかしくて溶けちゃう……」


「かわいいから許す」


「許さんわけがない」


 ほんの少し色づいた頬、羞恥によって水気を帯びた瞳、弱々しく垂れ下がった眉。そして、縋るような上目遣いと、懇願するように吐かれた言葉。全てが愛らしくて庇護欲に駆られる。しおんとアイボリーは一周回って真顔になりながら即答した。カーディナルがぱっと顔を輝かせて立ち上がり、しおんとアイボリーに「ありがとう!」と抱きつく。

 負けても恥ずかしい思いをせずに済む。そのおかげか、元気を取り戻したカーディナル。ふにゃふにゃとした顔を引き締め、赤色の瞳に好戦的な光を宿している。独自ルールは消えたものの、崖っぷちな事には変わりない。お互いにゲージは百。次にジャンケンで負けた方が、ゲームにも負けてお菓子の雨を浴びることになる。


「いくよ、リーフさん」


「黄金のキャベツはそう簡単に渡さねぇぞ。じゃんっけん、ぽんっ!」


 ギラギラと煌めかせた双眸をかち合わせるカーディナルとリーフグリーン。完全に野菜を売る気ゼロなリーフグリーンの掛け声でジャンケンが行われる。結果はカーディナルの勝ちだった。グーを繰り出して勝利したカーディナルが、「俺の勝ち! いけぇ、『フレイムキャット』!」と魔法を撃つ。

 炎の塊となった子猫たちが大量に現れ、リーフグリーンのカボチャに突撃した。引っ掻いたり体当たりをして、ジワジワと百しかないゲージを減らしていく。遂にゲージがゼロになった瞬間、真っ二つに割れるカボチャ。そこから十指に余る量の飴が降った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ