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カボチャ時々お菓子  作者: 甘夏 みかん
黄金の野菜
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 刹那、まだ落ち着ききっていないしおんの心臓が貫かれる。既に気息奄々な状態になりながら、脳内で先程のカーディナルを再生して鼻血を噴出した。二度目のジャンケン中も、くっついたままだったアイボリーが、眉間に皺を刻んでカーディナルの肩に手を置く。


「ナルちゃん。着ぐるみばっかり着て、俺のこと悶死させるつもりなん?」


「そんなつもりは一切ないぺん」


「じゃあ取り敢えず、着ぐるみは止めようか。しおんくんが死んじゃう」


「何があったぺん!?」


 苦笑を頬に含ませたレイブンの言葉でようやくしおんの惨状を知ったカーディナルが目を見開いた。慌てて魔法を解除し、着ぐるみからジャージに戻る。否、戻ったかと思いきや、上半身は丈の長い白と黒のパーカーだった。

 ペンギンの顔付きのフードがある。長袖は指先すら出ないほど大きい。フードを被って側に来たカーディナルが、「しおん、大丈夫ぺん?」と顔を覗き込んでくる。しおんは心配させないため、抱き締めることで耐えた。


「その格好もかわええなぁ。しおんくん、邪魔や」


「頑張って耐えてる俺になんたる仕打ち!?」


 デレデレとした表情で頭を撫でたアイボリーが、冷たい瞳をしおんに向けて軽く押し飛ばす。尻餅を突いたしおんはアイボリーからの木で鼻を括ったような態度に驚嘆した。確かに可愛らしいカーディナルを撮影するのにしおんは邪魔だっただろう。だが、カーディナルを抱き締めることで鼻血を耐えていたしおんに対してあんまりすぎる対応だ。


「ほら、また脱線してるよ。早く勝負に戻ろうよ、リーフさん」


「変な語尾の時に喋らせんなペン」


 アイボリーを押し退ける勢いでしおんも写真を撮っていると、脱線に気付いたレイブンとリーフグリーンが三人を引き剥がした。身体を押し合いながら録画や撮影をしたアイボリーとしおんは、首根っこを掴まれて壁際に移動させられる。フラッシュを焚かれて目を細めていたカーディナルが、ホッと胸を撫で下ろした。

 変な語尾をなるべく言いたくないリーフグリーンに睨まれたレイブンが掛け声を担当する。三回目のジャンケンの勝者はリーフグリーンだった。物凄い切れ味の桜の花びらが、レイブンのカボチャの周りを、吹雪のように舞う。リーフグリーンの『チェリーブロッサムストリーム』だ。レイブンのゲージが千五百から九百に減る。


「カーディナルちゃん。俺の時も着替えてほしいでしゅ」


「幾ら魔法でも赤ちゃんになるのは無理だ」


「おしゃぶりで我慢やな」


「よだれかけもあるぞ」


「哺乳瓶も持たせてみよう」


 レイブンの語尾で浮かぶイメージ通り赤ちゃんっぽくするアイボリーとリーフグリーンとしおん。ペンギンの姿からジャージに戻ったカーディナルは、無理だと断言したのに赤ん坊っぽくされる。口元には可愛らしい黄色のおしゃぶり。首元には白色のよだれかけ。そして、両手には飲み口の部分が桃色の哺乳瓶。猫耳ニット帽も良い感じに幼さを膨らませている。


「おおー、ええやん。かっわいい」


「ダボッとした黒いローブも毛布みたいでいいな」


「レイブンもこれなら満足だろ」


「最高でしゅ!」


 達成感に包まれるアイボリーとしおんとリーフグリーンに肯き、変な語尾で胸を昂ぶらせるレイブン。おしゃぶりのせいで喋れないカーディナルを持ち上げ、赤ん坊にするみたいにその場で回転する。十六歳にもなって振り回されると思ってなかったのか、カーディナルが目を丸くして慌ててレイブンにしがみついた。赤ん坊を入れた抱っこひもを装着しているみたいになっている。


「ナルちゃん、哺乳瓶でお茶飲んでみて」


「それは後にしろ。長すぎるとクレームがくる」


「後でもやらないよ?」


 アイボリーの要望をリーフグリーンとカーディナルが拒否した。「ほら、早くジャンケンしろー。じゃんけん、ぽんっ」という、カーディナルを回収したリーフグリーンのやる気のない掛け声で行われるジャンケン。レイブンが慌てて手を前に出す。

 勝者はリーフグリーンだった。パーを繰り出して勝ったリーフグリーンが、レイブンのカボチャに向けて、『ローズヒュプノス』を撃つ。カボチャの下に大きな薔薇の花が咲き、旋回して触れると眠らせる花びらを散らした。九百あるレイブンのゲージを五百に変える。レイブンが焦燥に駆られた表情でゲージを見た。


「ああー、ヤバいにゃ。次で勝負を決められるかもしれないにゃ」


「今度は猫か」


「猫なら普段の格好が既に猫やな」


「そうだねぇ」


 レイブンの語尾を猫だと断定したしおんとアイボリーは、普段の格好に戻ったカーディナルに目を向ける。哺乳瓶やおしゃぶり、よだれかけを外したカーディナルは、いつも通り上下ジャージにダボッとした黒いローブ。そして、頭の上に黒色の猫耳ニット帽を乗せていた。

 これでも十分に可愛いのだが、やはり猫っぽいコスプレを見たかったのか、レイブンから少しだけ残念そうな雰囲気が漂う。どことなく名残惜しさを醸し出したレイブンやアイボリー、しおんに、カーディナルが不安そうにローブを握って恐る恐る顔を覗き込んできた。


「いつもの俺はやだ?」


「そんなわけないやん! 毎日、可愛いと思ってるで!」


「カーディナルだったらどんな姿だろうと愛せるから!」


「ジャージがこんなに似合うなんてカーディナルちゃんは凄いなぁ」


「いつものお前が一番好きに決まってるだろ」


 息を呑んだアイボリーが愛情を伝えるべくカーディナルを左から抱き締める。しおんも反対側からカーディナルの身体に飛びついて必死に否定し、レイブンは感心した様子で頭を撫で回した。最後にリーフグリーンが優しく頬見ながら全員の意見をまとめる。面食らった表情で聞いていたカーディナルが、「ふへへ」と照れ臭そうに嬉しそうに顔を綻ばせた。

 「可愛い。嬉しそうに照れてるカーディナルちゃん、めっちゃかわいい」「庇護欲が湧き上がる愛おしさ」と、アイボリーとしおんは抱きついたまま吐息を漏らす。二人がカーディナルを愛でる中、リーフグリーンの掛け声で行われる恐らく最後のジャンケン。結果はまたもやリーフグリーンの勝ちだった。『チェリーブロッサムストリーム』が五百しかなかったゲージをゼロにする。カボチャが真っ二つに割れて、レイブンに飴玉が降り注いだ。

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