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カボチャ時々お菓子  作者: 甘夏 みかん
入学試験
43/64

「さて、試験はこれで終了だけど、まだ時間も残ってることだし、負けた相手とのリベンジマッチでもする?」


 協力の下、無事にチョコレートの山から這い出し、魔力回復薬も飲んだセルリアンがしおんとわかばとあんずに尋ねる。既に清潔感のあるスーツ姿に戻っていた。勿論、カーディナルも幼い子供から十六歳の美少女に成長している。あどけないカーディナルも最高に可愛らしくて良かったが、やはり魅力的な身体と整った顔立ちのカーディナルが好きだ。しおんは改めて好意を持つ。


「誰と誰がゲームすることになるの?」


「えーっと……しおんとカーディナル、わかばとレイブン、あんずとアイボリーだね」


「よしっ、カーディナル! このアイさんから貰ったカボチャで勝負だ!」


「うぇぇ、にこにこカボチャだ」


 セルリアンがカーディナルの質問に指折り数えて応える。しおんはアイボリーに貰った桃色のカボチャの軸を押した。負けた方が次にジャンケンに勝つまで笑い続けるカボチャだ。それを知っているのか、カーディナルがあからさまに嫌そうな顔で、受け取った桃色のカボチャの軸を渋々と押す。しおんはカーディナルの笑顔を見たくて、双眸を爛々と輝かせた。そんなしおんの闘志にアイボリーが更に火を点ける。


「ナルちゃんの笑顔が見たいから渡したんや。絶対勝たな許さんで?」


「任せて、アイさん。じゃんっけん、ぽんっ!」


「ああっ、負けた!」


 力強く肯いたしおんの掛け声で行われたジャンケンはカーディナルの負けだった。パーを繰り出したカーディナルが自分の手を見つめて悲鳴を上げる。まだ笑いは込み上げていないのか、カーディナルは苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。しおんはワクワクしながらカーディナルのカボチャに魔法を放つ。

 チョキで勝利したときの魔法は『グラヴィティスペース』。一定範囲内にある全ての重力を操作する。今回は上手く制御できたようでカーディナルは無事だった。のだが、カーディナルは口元を両手で押さえてプルプルと身体を震わせている。しおんは期待を双眸に滲ませて見つめた。


「ふへへへへ、だ、駄目だ。堪えきれな……あははははははっ」


「かわいい」


「ナルちゃん、こっち向いて」


「や、やだ。く、ふふふ……うひひひひ」


 瞬間、堪えきれない笑い声を口から溢すカーディナル。眉尻を垂らして顔を緩ませたカーディナルに、しおんとアイボリーは歓声を上げてカメラを向ける。二人に撮られたくないらしいカーディナルが、目に涙を浮かべてそっぽを向いた。本当に笑いを止められないようで、頬を色づかせて涙目で笑声を溢し続けている。しおんとアイボリーはカーディナルを抑えつけて顔を覗き込んだ。


「あははははははっ、や、お腹痛っ……しおん、たすけてぇ」


「ええっ、俺!?」


「ジャンケンでカーディナルが勝てば止まるからな」


「カーディナルの代わりにしおんが笑うことになるけどね」


 両腕を万歳の状態で固定されたカーディナルが潤んだ瞳でしおんに助けを求める。突然、縋るような眼差しを刺されたしおんは素っ頓狂な声を出した。笑顔を見るどころではなくなるしおんに、リーフグリーンとセルリアンが笑っていて喋れないカーディナルの代わりに説明する。もう十分、笑顔は目に焼き付けた。しおんはカーディナルに代わって苦しくなるまで笑い続ける覚悟を決める。


「分かった、ジャンケンしよう。じゃんっけん、ぽんっ!」


「うぇぇ。ま、負けたぁははははははっ」


 覚悟を決めたところで負けなければ意味がない。グーを繰り出して勝ってしまったしおんは、芝生で丸くなったカーディナルにオロオロする。取り敢えず、早くジャンケンをしてあげなければ。グーで勝利したしおんは『ダークネスシャワー』を放つ。カーディナルのカボチャに闇色の棘が大量に降り注いだ。

 しかし、涙目で笑い続けるカーディナルの無邪気な笑顔は何度見ても愛らしい。目に入れても痛くないほどの可愛さとはこのことを言うのだろう。散々、焼き付けたはずのカーディナルの笑顔をボーッと眺めるしおん。可哀想になってきたのか、わかばに「早くジャンケンをしてやれ」と頭を軽く叩かれる。


「ハッ、そうだった。カーディナル、いくよ? じゃんっけん、ぽんっ!」


「うひひひひっ、な、なんでぇへへへへへっ」


「また勝ってしまった」


 しおんの掛け声で行われたジャンケンはまたもやカーディナルの負けだった。カーディナルが笑いすぎて掠れた声で疑問を口に出しながら仰向けになる。パーで勝利したしおんは苦々しい顔で自分の手を見た。額に手を翳して涙を溢しながら笑うカーディナルはとてつもなく可愛い。ずっと見ていたいぐらいだ。しかし、苦しそうなカーディナルを見るのは嫌だった。


「これはもう神様が気絶するまで笑えって言ってるな。ナルちゃん、諦め」


「や、やだぁっははははは」


 にこにこカボチャを渡したアイボリーはこうなることを想定していたのだろう。しおんみたいに苦い表情をするどころか恍惚とした表情で、助けを求めるように抱きついたカーディナルの頭を撫でた。しおん同様に顔を引き攣らせたわかば以外も、カーディナルの笑顔を堪能している。

 カーディナルを助けられるのは自分だけだ。しおんは確信した。それと同時に、カーディナルを苦しめることが出来るのも自分だけだと気付く。芽生えそうになった変な欲望を振り払い、しおんは『シャドーアレーナ』でゲージを削ってから、カーディナルの近くに片膝を突いた。



 

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