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カボチャ時々お菓子  作者: 甘夏 みかん
入学試験
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「おーおー、二十歳の俺にはキツい姿だな」


「リーフさん、似合ってるよ?」


「カーディナルの方が百倍似合ってる」


「ふへへ。俺、かわいいでしょ?」


「かわいい」


 自分の姿に顔を引き攣らせたリーフグリーンが、顔を覗き込んだカーディナルに賞賛を浴びせた。褒められたカーディナルは、面食らった後、ふにゃりとはにかむような笑みを浮かべる。茶化すように自分の頬に人差し指を当てるカーディナルに、リーフグリーンが即答して頭をもふもふと撫でた。

 カーディナルが可愛すぎてしおんの中に嫉妬すら浮かばない。ただただ眼球に染みるカーディナルのビジュアルを目に焼き付ける。隣に居るわかばも鳩が豆鉄砲を食ったような表情で見惚れていた。悔しいが、整った顔立ちをしている故、リーフグリーンも着ぐるみが似合っている。


「今日中に終わらなくなっちゃうから、そろそろ続きを始めようか。リーフグリーンは出したい手を口で言ってね。じゃんっけん、ぽんっ!」


「パー」


「おっ、また勝った!」


 パンッと手を叩いて呆けるしおんとわかばの我に返すセルリアン。彼の掛け声で行われたジャンケンは、チョキを繰り出したしおんの勝利だった。口でパーを出したリーフグリーンが「あれ?」と首を傾ける。しおんはリーフグリーンのカボチャに向けて、『グラヴィティスペース』を発動した。

 リーフグリーンのカボチャの周囲の重量がずしんと重くなる。ついでに真下に居るリーフグリーンとカーディナルが地面に押し潰された。片膝を突いたリーフグリーンと地面に座り込んだカーディナルが「うおっ!?」「みゃっ!」と短い悲鳴を溢す。しおんは相変わらず罪悪感に支配されてすぐに解除した。


「あっ、替わった」


「今度は和装か」


 ゲージが千百から五百になると同時、着ぐるみから強制的に着替えさせられるリーフグリーンとカーディナル。二人の身体を包むのは、神聖な雰囲気を醸し出す白い小袖に紅色の袴。真っ白な足袋で包んだ足には草履。今度の衣装は巫女装束だ。神楽鈴を持つカーディナルに対して、リーフグリーンは鉄扇を持っている。世界の名画にも劣らない絵になる二人だ。


「何だろう。巫女装束のカーディナルが良すぎて、ペアルックに嫉妬が湧かない」


「奇遇だな、俺もだ」


 着ぐるみの時同様、嫉妬が欠片も湧かず、目に焼き付けることに集中するしおんとわかば。先程の着ぐるみは可愛らしさを強調していた。それに対し、清浄無垢な印象を与える巫女装束は、美しさや色気を増幅させている。すると、注目の的になっているカーディナルを隠すように右手で抱き締め、リーフグリーンが左手を前に繰り出した。


「もう負けねぇぞ。じゃんっけん、ぽんっ!」


「ああっ、俺のお楽しみタイムが!」


「何やってんだ、しおん!」


 カーディナルの色々な服装を見るお楽しみを奪われ、しおんとわかばは嘆く。チョキの手に巻けてしまった故、『チェリーブロッサムストリーム』を浴びるしおんのカボチャ。切れ味の良い桜吹雪がカボチャの周囲に渦巻く。傷一つなかったのにゲージが一気に九百まで減った。それを合図に、しおんとわかばの格好がポンッという軽快な音と共に入れ替わる。

 白いシャツに赤褐色の短パン。短い裾から真っ直ぐ伸びた足には白色の靴下と茶色のショートブーツ。そして、頭には赤色の頭巾が被せられている。童話に登場する赤ずきんの格好だ。十六歳にもなって短パンを履くことになるとは思わなかった。


「絶対、カーディナルに似合う格好じゃん。見たかったああああ!」


「こう?」


「こら、不用意に生脚を見せるな」


 しおんは両手で顔を隠して天を仰ぎ見た。それを聞いたカーディナルが袴の裾を膝まで上げる。リーフグリーンにすぐさま裾を下ろされたが、しおんの視線は一瞬だけ見えた優美な曲線を描く脚に釘付けになった。僅かな時間しか見えなかったのに、頭の中を真っ白な脚一色にされる。


「じゃんけんに勝って短パンにしてやる!」


「目的が変わってる!」


「安心しろ、カーディナル。俺が守ってやる」


 生脚を見たい欲望に駆られて闘志の炎を燃やすしおん。リーフグリーンが変態から守るべく、目を丸くしてツッコむカーディナルを後ろに隠す。二人の間に火花が散った。絵面的にはしおんが完全に悪者である。


「カーディナルの脚を見せろー! じゃんけん、ぽん!」


「そう簡単には見せてやれねぇな。『リーフティフォーネ』!」


「ちくしょおおおお!」


 悪者らしく不気味な笑顔で目をぎらつかせたしおんだが、リーフグリーンにジャンケンで負けて崩れ落ちた。カボチャの周りに木の葉の渦が巻き起こり、ゲージを九百から七百に減らす。幸先良かったのに、気付けばジワジワと五百しかないリーフグリーンのカボチャのゲージに追いついてきていた。

 刹那、焦りの色を滲ませたしおんの格好が替わる。巻き込まれたわかばも当然同じ格好だ。今度の格好はスーツ。白のシャツに濃紺のジャケットとパンツ。深緑のネクタイを締め、黒色の革靴を履いている。今までの中で一番マシな姿だ。そのことに胸を撫で下ろしつつも、カーディナルのコスプレを見られなかったショックの方が大きい。しおんは次こそ勝ってやると拳を前に突き出す。


「もう一回だ! じゃんけん、ぽん!」


「あっ」


「よっしゃあ、勝ったあ! 『グラヴィティスペース』!」


 しおんの掛け声で行われたジャンケンに負けたリーフグリーンが苦虫を噛み潰したような顔をした。快哉を叫んだしおんはリーフグリーンのカボチャに魔法をかける。リーフグリーンとカーディナルも一定範囲内の重力を操作する魔法に巻き込まれた。「うぐっ」「ふみゃっ」と仲良く座り込んだ二人の声で解除する。

 短い時間しか魔法を使っていないが、きちんとリーフグリーンのカボチャのゲージはなくなっていた。パカっと真っ二つに割れたカボチャから大量の飴玉が降ってくる。夥しい数の飴玉に背中を押されたリーフグリーンが、地面にうつ伏せで倒れた。手錠で引っ張られたカーディナルも、飴玉の中に埋もれる。


「うおおおおおっ!?」


「みゃあああああっ!」


 飴玉の山の下敷きになった二人は巫女装束のままだった。どうやらカボチャを真っ二つにすると、強制的な着替えは起こらないようだ。リーフグリーンに初めて勝てた喜びよりも、またもやコスプレを見逃したショックの方が大きい。しおんは深く溜息を吐いてがっくりと肩を落とした。

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