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カボチャ時々お菓子  作者: 甘夏 みかん
入学試験
36/64

「カーディナルが俺のお願いを聞いてくれたおかげで、もう全然恥ずかしくないぴょん! いくぴょんよ、じゃんけん、ぽん! ぴょん!」


「ぴょんぴょんぴょんぴょん言われてこっちが恥ずかしくなってきた」


 掛け声という思わぬ精神攻撃の影響か、チョキを繰り出したわかばにパーで負けるレイブン。完全に開き直ってぴょんぴょん言っているわかばは、「よっしゃあー! ぴょん!」と最後に恥ずかしい語尾を叫び、両手で菱形の形を作ってカボチャに向ける。そこから菱形の光線を発射した。

 放射と同時に「『ダイヤモンドアクティース』」とわかばが技名を披露する。あの特別な素材で出来たカボチャを、一瞬だけ破壊するほどの攻撃力だった。それに目を丸くするカーディナルとしおんに、わかばが自慢げに技について語る。


 どうやら、『ダイヤモンドアクティース』はただの菱形のビームではなく、どんな硬いものも撃ち砕く威力を誇る魔法らしい。魔法を忌み嫌う村でよくもまあこんなにすごい技を習得できたものだ。わかばの苦労が垣間見えた気がした。


「カーディナルちゃん、俺と同じ語尾も言ってほしいにゃ」


「お断りにゃ」


「カーディナル、可愛い!」


「このくだり、さっきもやった!」


 右目の下を軽く人差し指で伸ばしたカーディナルが、レイブンの要求を受け入れたあと、小さく舌を出す。カーディナルの猫語とあっかんべーが可愛くて、しおんはまたもや反射的に隣のカーディナルをギューっと抱き締めた。カーディナルはツッコミをしながらも無理に引き剥がそうとしない。しかし、やはりセルリアンに引き離された。


「くぅー、過保護が多い」


「いや、しおんが抱きつきすぎなんだよ」


 悔しさを吐露したしおんはセルリアンに額を指で軽く弾かれる。目に余るスキンシップの多さ故、目をつけられてしまっているらしい。薄々、自分でも思っていた。こんなにくっついてばかりいると、カーディナルに嫌われるかもしれないと。それでも、やめるつもりなんて毛頭ない。というか、脊髄反射で行動している為、やめようにもやめられない。


「このまま、にゃんにゃん言わせ続けてやるぜ! じゃんけん、ぽん!」


「身の危険を感じたにゃ」


「言い方がいやらしい」


「どこが?」


 ニヤリと口元に弧を描いたわかばに、レイブンとしおんの批判が殺到する。一人だけ分かっていないカーディナルが首を傾げた。セルリアンがカーディナルに誤魔化している。その間、チョキで勝ったレイブンの魔法が、まるで拒絶するかのように、わかばのカボチャを凍らせる。『アイスピューピル』も、主人の貞操の危機を悟ったのか、心なしか凍りつく時間が長く感じた。

 わかばは自覚なく変態的なことを口走ってしまう癖がある。今のもわざとではないのだろう。自分が言ったことを思い返して、焦燥に駆られた表情で周章狼狽している。「違う違う、俺は女の子が好きだわん! 豊満な胸とかきゅっと引き締まったくびれとか、曲線美を描く女性の細い脚に魅力を感じるわん!」と変な語尾で健全な性癖を曝け出していた。羞恥プレイである。


「わかばくん、ストップ! 分かったからちょっと落ち着こうか」


「えっ」


 流石に敵ながら可哀想に思ったようだ。レイブンが口元を引き攣らせた笑みを浮かべ、グルグル目で狼狽えるわかばを正気に戻す。わかばは息を乱しながら暫しキョトンとした後、何を口走ったのか思い出したようにカァーっと真っ赤になった。あまりの恥ずかしさに顔を両手で覆い隠す。


「聞かなかったことにするから、ゲームを再開しよう。ね? ゲームに熱中したら、全部忘れるのも早くなると思うよ?」


「気遣い感謝するわん」


「あっ、その前に。カーディナルちゃん、犬のモノマネよろしく」


「なんでどっちかが負けたら、俺も語尾を真似することになってんの?」


 わかばを復活させたレイブンがカーディナルに視線を向けて物真似を強制する。カーディナルは疑問を露呈しながら拳を作った両手を胸の前に固定。手首を垂らして「わんっ」と鳴いた。しおんは可愛くて衝動的に抱きつきたいのを堪え、目に焼き付ける。引き剥がされるぐらいなら、眼球に染みる犬の物真似をしっかり脳に刻む方が効率いい。


「よしっ、ありがとう。じゃあ、ジャンケンするよ? じゃんけん、ぽんっ!」


「か、勝てたわん」


 満足そうに顔を緩めたレイブンの掛け声でジャンケンが行われた。結果は、今の所、散々な目に遭っているわかばの勝ち。ホッと胸を撫で下ろしてパーを出した自分の手を見るわかば。そして、その手をハートの形にしてカボチャに向ける。初対面時、不意打ちでカーディナルをメロメロにした魔法、『カルディアラディウス』だ。

 ハートの形を描いた光線がレイブンのカボチャに直撃する。どういう効果なのか知らないレイブンが、わかばに興味津々に尋ねていた。しおんはカーディナルを掻っ攫われかけた時のことを思い出し、苦虫を噛み潰したような顔をする。効果を聞いたレイブンも、五百になった自分のカボチャを見上げ、顔を少し引き攣らせていた。


「わかばくん。意外と恐ろしい魔法を揃えてるね、ちゅん」


「ありがとう。そして、カーディナル」


「ちゅんっ?」


 礼を言ったわかばがチラリと視線をカーディナルに向ける。カーディナルは、以心伝心、悟ったらしく、脇を締めて両手を羽のようにし、小首を傾けながら鳴いた。きちんと羽の部分を模した手を、パタパタと上下に揺らしている。なんとなくこのまま飛び去ってしまいそうな気がして、しおんは咄嗟に力強く抱きついた。セルリアンも同じ感情を抱いたようで、今度は引き剥がしてこない。

 カーディナルから感じる人肌の温もりに安心感を覚えるしおんの視界で、最後になるであろうジャンケンが行われる。レイブンのゲージが五百残っているのに対し、三百しかないわかばのゲージ。次、グー以外の手に負けたら、お菓子の雨を降らされる。変な語尾に慣れてきたらしく、特に恥じる様子もなく掛け声を言うレイブン。ジャンケンの結果は、パーを繰り出したレイブンの勝ちだった。

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