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「リーフさん、俺も欲しいものを選んできたよ。でも、顔色が悪いね? 大丈夫?」


「あー。俺はちょっと休憩したいから、代理の人とやってくれ」


 カーディナルが食材を詰めたカゴをリーフグリーンに見せる。リーフグリーンは疲弊を滲ませた顔で携帯を出した。ゆっくりした動作で誰かに電話をかける。すると、数秒もしない内に、ブースに金髪を揺らしたセルリアンが入ってきた。

 黒のVネックに同色のジャケットを羽織り、白のテーパードパンツを合わせている。その上にはリーフグリーンと同じエプロンをしていた。愛想の良い営業スマイルを浮かべてしおん達に向けて左右に手を振る。


「やっほー。今日だけグリーンマートの従業員なセルリアンだよー」


「あっ、セルリさんじゃん!」


 カゴを置いて駆け寄ったカーディナルが頭を差し出す。セルリアンが突き出された毛先を赤く染めた茶髪を優しく撫でた。二人の間で決められている挨拶なのだろうか。大変羨ましい。セルリアンの撫で撫でが大好きらしい。カーディナルは気持ちよさそうに目を細めていた。

 黒色の猫耳ニット帽が頭から落ちる。床につく前に受け止めたセルリアンが、ようやくカーディナルの頭から手を離した。カーディナルがもっと撫でろと頭を手の平に擦り付ける。微笑ましそうに相好を崩したセルリアンは、ムッと頬を膨らませる不満げなカーディナルに言い聞かせた。


「ほら、待ってる人が居るし、早く勝負を始めるよ」


「なら、俺が勝ったら、いっぱい撫でてね」


「割引じゃなくて良いの?」


「あっ」


 パッと顔を明るくさせたカーディナルが眉間に皺を刻む。割引券を見せて尋ねたセルリアンは、悩むカーディナルに満更でもなさそうだ。価値のあるリーフグリーンマートの割引券と並べて嬉しいらしい。「うーん」と顔を歪めていたカーディナルが、決められず縋るような眼差しを向けた。それを受け止めたセルリアンは、営業スマイルと天と地ほどの差がある笑みで、解決案を出す。


「しょうがないなぁ。どっちもプレゼントしてあげる」


「マジ!? セルリさん大好き!」


「俺もカーディナル大好き」


 目をキラキラと輝かせたカーディナルが、弾んだ嬉しそうな声でセルリアンに飛びついた。難なく腕の中に閉じ込めたセルリアンも、歓喜溢れるデレデレした緩んだ顔で応える。すっかり二人の世界だ。割り込む隙を見つけられず、しおんは顰めっ面でセルリアンを観察する。しおんも大人の包容力を身につければ、あんなにカーディナルに懐かれるのだろうか。


「セルリアンさん。カーディナルと愛を確かめるのは後にしてくれ」


「はーい。じゃあ、早速ゲームを始めようか」


「うん!」


 リーフグリーンが二人を茶化したことでようやく始まるゲーム。セルリアンが予めリーフグリーンから貰っていたであろう銅のカボチャをカーディナルに渡す。二人同時に軸を押してお互いの頭上に浮かべた。元気よく返事をしたカーディナルの無邪気な掛け声で、一回目のジャンケンが行われる。

 勝者はカーディナル。それもチョキを繰り出しての勝利だった。カーディナルは弾んだ声で歓びを露わにし、カボチャに『フラムスタンプ』をお見舞いする。炎の身体を持つ巨大な猫が、真上からカボチャにのしかかった。セルリアンのゲージが六百も雲散霧消して四百になる。


「よーし、このまま一気に勝ってやる!」


「そう簡単に負けたらリーフグリーンに恐ろしいことをさせられるから手加減よろしく!」


「セルリアンさんが負けたら何をしてもらおうかねぇ」


「精神攻撃だ!」


 闘志の炎を燃やしたカーディナルがセルリアンとリーフグリーンの精神攻撃にたじろぐ。セルリアンは眉尻を垂らして困ったような笑みを浮かべていた。リーフグリーンは悪戯っぽく口角を上げている。どちらも嘘を吐いているように見えない。カーディナルが「うう」と見事に精神を揺らされている。お人好しで仲間思いなカーディナルには効果てきめんの攻撃らしい。しおんは対抗すべく案を提示した。


「カーディナル、負けたら無駄遣いした金額と同じ時間分、俺と一緒にお風呂に入ってもらうから」


「うえっ!?」


 瞬間、カーディナルの顔がボンッと真っ赤に染まる。別にジャージを脱いだわけじゃないのに、ダボッとした黒いローブで身体を隠した。含羞の色を滲ませた赤色の瞳が、しおんの下半身から上半身をゆっくりと走る。ちなみに、しおんも当然ながら服は着ている。


「調子に乗るなよ、テメェ」


「落ち着いて、リーフグリーン。俺が負ければ何の問題もないから」


 額に癇癪筋を浮かべたリーフグリーンがしおんの胸倉を掴んだ。今にも殴りかかってきそうな勢いだ。それをセルリアンが羽交い締めして止めてくれる。実際問題、ジャンケンにわざと負けるなんて至難の業、出来るのだろうか。余計なことを言わなければ良かった。しおんの中に後悔の念が渦巻く。と、カーディナルがセルリアンの腕を両手で抱き締めて、不平を鳴らした。


「セルリさん。俺、手加減なんてされたくない!」


「そっかあ。じゃあ、神様に決めてもらうしかないね」


 むうっと唇を尖らせるカーディナルの頭を撫でたセルリアンが上を見る。リーフグリーンも少し落ち着いたらしく、小さく舌を打ってからしおんを離した。しおんは後悔の念に駆られつつも、胸の奥で混浴の可能性に期待を芽生えさせてしまう。神様にそれぞれお祈りをしたカーディナルとセルリアンが、レイブンの掛け声でゲームを再開する。

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