⑥
「ねぇ、一つ言って良い? 此処では勝敗を決める時、爆弾発掘ゲームで勝負するんだよ」
「ば、爆弾発掘ゲーム?」
「うん、折角だから教えてあげる。純粋な魔法勝負より、こっちの方が被害も少ないからね」
しおんの手をやんわりと退けたカーディナルが戸惑うわかばに肯く。しおんの村では存在していないゲーム名を告げられ、あんずも首を傾げて怪訝そうな表情をしていた。気持ちは分かる。「しおん、俺が作った説明書って持ってる?」とカーディナルに聞かれたしおんは、懐から特訓の際に貰ったカーディナルお手製のルールブックを取り出す。それをカーディナルに渡すとわかばの手に渡った。
「勿論、わかばが望むんだったら、普通に魔法で勝負をしてもいいけど?」
「ば、爆弾発掘ゲームでお願いします」
ルールブックに目を落とそうとしたわかばの顎をクイッと上げ、好戦的に妖艶に赤色の瞳を光らせて微笑んだカーディナルに気圧されて、わかばが石像みたいにピシリと固まった身体で顔を引き攣らせる。しおんがカーディナルお手製のルールブックを奪われないよう目を凝らす中、何となくで爆弾発掘ゲームについて頭に叩き込んだわかばとあんず。カーディナルの案内で八階にも設置されているゲーム専用の場所に向かい、ドアを開けて真っ白な部屋に入る。
カーディナルから貰ったビー玉サイズのカボチャの軸をわかばが恐る恐る押した。それにより、手の中に収まっていたカボチャが超小型車ほどまで成長する。驚いて「うわっ」と思わずわかばに落とされるカボチャ。しかし、自分で浮かび上がってカーディナルの頭上に佇む。カーディナルも慣れた動作でカボチャを大きくして目を丸くするわかばの頭上へと移動させた。
「それじゃあ、いっくよー。じゃんっけん、ぽんっ!」
「あっ、負けた」
「いけぇ、『フレイムキャット』!」
カーディナルの掛け声で行われたジャンケンの敗者はわかば。チョキを繰り出した自分の手を見てポツリと呟く彼のカボチャに、カーディナルが炎で出来た猫達を召喚して攻撃させる。子猫たちが頑張って引っ掻いたり体当たりをし、わかばのカボチャのゲージが千五百から千三百になった。手加減しているのか、すぐに猫たちを戻す。
「二戦目いくよー。じゃんっけん、ぽんっ!」とカーディナルが続けて掛け声を担当する。またもやカーディナルの勝ちだった。それも、チョキで勝利したカーディナルが、わかばのカボチャに向けて、『フラムスタンプ』を放つ。炎を纏った巨大な猫がカボチャにのしかかり、ゴロゴロと寝転んだり叩いたりしてゲージを七百まで減らした。
「なんか、かわいい」
「ふっふーん。俺のにゃんこ、かわいいでしょ」
わかばがカボチャに戯れる猫を見上げながら呟く。自慢の猫を褒められたと思ったカーディナルが誇らしげに嬉しそうに胸を張る。が、恐らくわかばが言ったのは、猫系の魔法ばかり使うカーディナルに対する言葉だろう。ローブがダボッとしていて萌え袖なことや、黒い猫耳を生やしたニット帽も相俟って、色気と絶妙なバランスで可愛さも醸し出している。
「でも、褒めたって手加減はしないから。じゃんっけん、ぽんっ!」
「ちょっ、勝てないんだけど!?」
「神様も美人には弱いんだね」
カーディナルの掛け声で行われた三度目のジャンケンでも負けたわかばが焦りの色を宿した。グーの形をしたわかばの手を見ていたあんずが、天井を仰ぎ見て適当なことを言う。しかし、しおんが神様だとしたら、カーディナルをずっと勝利させる。つまり、あんずの言うことは、割と理にかなっている気がした。
しかし、ジャンケンで負けた時やお菓子の雨に降られた際、カーディナルが叫ぶ愛らしい猫みたいな鳴き声を聞けないと物足りない。村に連れ戻されたくない為、カーディナルに勝ってほしいが、それはそれとして、あの可愛らしい猫の鳴き声が聞きたい。しおんはこっそりと神様に祈ってみる。
「次、いくよー。じゃんっけん、ぽんっ!」
「あっ、勝った!」
「うにゃっ!? ここは俺が圧勝する流れじゃないの!?」
しおんの願いを聞き入れたのか同じ思いだったのか、神様の裏切りによりジャンケンに負けるカーディナル。ようやく勝ててぱあっと顔を輝かせたわかばは、驚くカーディナルの猫みたいな鳴き声の可愛さに頬を紅潮させ、魔法を撃つのを完全に忘れてしまっている。
カーディナルに「わかば?」と不思議そうに名前を呼ばれ、ようやくと胸を衝かれたわかばが慌てて魔法を撃つ。パーで勝利したわかばが使った魔法は『カルディアラディウス』。しおんにとって若干のトラウマとなった光線が、真っ直ぐカーディナルのカボチャを襲う。
「もう勝たせないよ。じゃんっけん、ぽんっ!」
「ゲッ、負けた」
好戦的に赤色の瞳を煌めかせたカーディナルが有言実行。チョキで勝利したカーディナルの『フラムスタンプ』が、苦虫を嚙み潰したような顔のわかばのカボチャに直撃する。その後、行われたカーディナルの掛け声によるジャンケンもカーディナルがパーで勝利。カーディナルが放った『ファイアプリズン』がカボチャを襲う。猫の顔の形をした炎に包まれたカボチャのゲージがゼロになり、真っ二つに割れて個包装された饅頭が大量にわかばの元に降り注いだ。
「あああああっ!?」
初めてのお菓子の雨にわかばが驚きと悲鳴を織り交ぜた声を上げる。容赦なく降る饅頭の雨に押し倒されたわかばがうつ伏せになった。その背中の上に饅頭の山が築かれる。魔力を持っていない為、グッタリしていないが、重くて中々に抜け出せそうにない。饅頭を興味津々に掴んで包装を開けたあんずが、何の躊躇もなく食べた。
「俺の勝ち」
大量の個包装されたお菓子に押し潰されて動けないわかばの前に屈み込んだカーディナルが、茶目っ気全開の双眸を眇めて人差し指と中指を立てたピースサインを突きつける。ふんわりと醸し出された柔らかい色気に当てられたわかばの頬がカァーッと紅潮した。




