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第6話 アルサ視点 ②皆、飢饉が来るのを分かっていて、麦を売る。

 辺境に来て、一年が経過した。

 もう、夏だ。

 あれから、生活防衛ギルドは、順調だ。

 縄は、様々な用途に合わせて、作るようにした。

 製縄機も職人さんに作ってもらった。

 邸におき。暇な時に、来てもらって、編んでもらうことにした。


 大型農具や機織機も買えた。これらは共同で使う。



 1.5メートルの蛇口のある縄が、小銅貨二枚(200円)

 10メートル、20メートル、開拓で木を引っ張るような縄は太くし、お値段もお高くした。10メートル単位で大銅貨一枚(1000円)


 開拓に縄は必須、飛ぶようにではないが、そここそこ売れる。


 この世界、物価がイマイチ分からない。私の領主としての年収は、金貨100枚(1000万円)だ。


 しかし、冒険者ギルドのドブさらいは、一日で大銅貨2枚(2000円)

 冒険者見習いは大銅貨3枚ぐらい。

 そこそこ儲かる冒険者や熟練工は月収銀貨25枚(25万円)くらいにはなる。


 人件費が日本と比べて異常に安く、我が村の世帯収入は、銀貨60~70枚(60~70万円)


 自給自足で何とかなるから、この年収でやっていけるようだ。


 都市部はもっと収入が高く、現代日本と同じぐらいだが、都市税や通行税が掛かる。




 出来ることから、コツコツと、一年経過し、資金が銀貨数百枚貯まったので、貸し出しをすることにした。


 年利5分、無担保、銀貨5枚まで貸すと布告を出したら、まあ、村人達は、その日にやってきた。


「皆、借りにくるわね」

「当然でございます。皆、高利貸しから、借り換えをしておりますよ」

「えっ」


 セバンさんが教えてくれた。

 辺境の村々では、高利貸しが暗躍をしていた。年利100パーセントから、200パーセントの暴利だ。


 ある集落全体の借金の合計は、銀貨27枚であった。それを半永久的に利息取られていた。

 利息も含まれる方式だ。だから、実質年利は、もっと上であろう。



「よお、領主様だったのか?」

「あの時の冒険者さん」


 手錠結びを教えた冒険者さんがやってきた。名前はガンムさんと言って、中堅クラスだそうだ。


「あの結び方、評判だ。暴れるほど、よく締まる。自警団から教えてくれと来たよ。だから、教える権利を売って欲しい」


 律儀だな。


「いいよ。無料でいい。その代わり、ガンムさんが教える権利を売らないことと、巻き結びと言っても、端末処理しなければ、そこから、逃げられる可能性があるから、そこを忘れないで教えてね」


「あんた。天使かよ!」

「まあ、そうだけど」


 その時、ベッキーちゃんが、慌ててやってきた。何?転ぶよ。


「ヒィ、大変なのです。高利貸しさんがやってきたのです!」

「あら」


 邸に、ゴロツキ風体な方が、6人ほどやってきた。

 高利貸しだ。


「よお、商売の邪魔をしないでもらいた・・い」

「ヒィ、何だ」


 失礼ね。私は長身で、赤髪、緋色の瞳、ちょっと怖い風体だけど、私が対峙したら、怖じ気ついた。


 いや、違う。


「「「「ご領主様!」」」」


 後ろに、クワや鎌を持った領民達が、集まってくれた。


 ガンムさんも加勢してくれる。


「よお、この方は、準男爵様だ!無礼打ち出来るご身分だぞ!このガンムがついている!」


「ヒィ、覚えておけ!」


 と言って去った。

 覚えておけと言って、また来た試しはないから大丈夫だろう。


 パラ!パラ!


「雹だ。夏なのに珍しい」

「天がアルサ様のお怒りを表しているだ!」

「さあ、アルサ様、濡れます。お屋敷に」


 ・・・雹!今は夏、もしかして、冷夏!飢饉!


 私は一抹の不安を覚えて、村長、村役人を集めた。


「んだ。不作になるだ」

「んだ。んだ」


 皆、分かっている・・・


「仕方ないベ。税を納めて、後は、それでやるしかないだ」


 税金は定率課税で、5割を取っている。それから他に女神協会に十分の一税を払っている。実質6割だ。

 さすがに、封建社会とはいえ。人頭税は自由人には課せられない。

 奴隷を所持している者に課せられる奴隷税が該当するのだろう。

 それも抜け道はあって、永年奉公契約に置き換えている場合もある。


 この国は、王家直轄地の収入と、封建主義の奉公で運営されている。


 飢饉で臨時税が課せられなければいいが、


 税金は、水車の維持費、入会地の整備、冒険者ギルドへ依頼するための資金、

 道路、橋の維持費でなんやかんやで最低の金は必要だ。


「悩んでいる暇はない。麦は売らない!全村民緊急集会!」


 とは出来なかった。いくら、数千人でも一度に集まるのは、非効率的だ。


 私は無能だ。

 麦は売らない。その代わり、資金が脆弱になるので、無償労働を課すかもしれないと説明する。


 皆、飢饉が来ると分かっているのに、諦めている。どこか余裕すら感じられる。

 何故?


 こんな時に、日本の偉人はどうしたか。

 伊能忠敬さんは、日本地図を作ったことで有名だが、優れた庄屋でもあった。

 天候と市場を読み。飢饉を察知して米を集めたとあったな。


 そうだ。麦を買いに行こう。

 王国はこの予兆で、飢饉が来ると分かっているから、何らかの統制が来るかもしれないと思ったが、


 良い意味で裏切られた。


 ミリーシャだ。

 麦が高くなりつつあるので、国庫の麦を売りに出した。


 市場は分かっているのだ。ミリーシャの事をかまう余裕はない。

 あの子、王都で、麦相場のグラフしか見ない子だった。


 麦の買い出しを依頼した商人は言う。


「まあ、もっと、麦は、高くなるでしょうね。お売りになるときは、私をご指名下さい。手数料はおまけできますよ」


「いえ、売りません」


「ほお、飢餓輸出は貴族の得意技ですよ。毎年、冬に餓死者が出るのは当たり前ですから・・それに、村人には奥の手があります」


【うるさい!】

「・・・アハハハ、これは失礼しました」


 何をした。二宮尊徳は、初夏のナスを食べて、飢饉を予感した。

 そして、雑穀を植えたとあったな。


 私は、異世界イモの植えることと、新たな開墾は、イモ、雑穀を植えるためだけと厳命した。


「まあ、やってみましょう。娘を売りに出すのは嫌ですからね」


「娘を売る・・・」

 そうか、商人が言っていた農民の奥の手は、人身売買か。


「売らせません」

 私は領地を白王号に乗ってまわった。

 村人を説得する。麦の育成を見る。イモ、雑穀の栽培状況を見る。


 現金も必要だ。

 生活ギルドの仕事も続けつつ。

 昼間は説得、

 夜は執務をすることになった。

 やがて、雨、曇りの日が、一月以上続いた。

 日照時間が少ない。


 悪い予想は当たる。当たってしまった。




最後までお読み頂き有難うございました。

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