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第5話 アルサ視点、①チートは無理なので、出来ることからコツコツと

 私は転生者だった。熱病でうなされたときに前世を思い出した。


 じゃあ、あれか?現代知識を使ってチート能力で領政改革をするか?と思ったが、そうはいかない。

 前世、普通のOLであった私に何が出来るであろうか?


 そもそも異世界とは関係なく


 地球でも度々、ネット小説で見られる。チートと思える事象が起きている。


 例えば、世紀の立て直しと言われたアメリカのコンチネンタル航空の奇跡の業績回復、


 社長であったゴードン・ベスーンさんが行ったのは、改革と言うよりは当たり前の事だった。


 前首脳陣がやらかした取引先に謝罪する。

 儲からないことはやらない。

 従業員と話し合う場を設ける。

 等々


 それまでの首脳陣は無能であった。まるで、ネット小説に出てくるざまぁされる王様や王子たちのようだ。

 例えば、マイルを廃止して、それに払うはずだったお金を収益に計上して、キャハウフフ状態であった。


 現実は小説よりも奇なり。ネット小説のざまぁされるような愚か者は、意外と現実に転がっているのだ。


 領地に着いたら、現状把握だ。


 この世界、識字率は低い。10パーセントは切っているが、行政はつつがなく行われる。

 村に必ず一人は文字を書ける者がいて、戸籍、土地台帳を作る。大抵、村長さんだ。

 村長さんを通して、領主は指示を出す。


 まだ、地主は発生していない。土地は村民同士で、貸し借りしている状態だ。

 日本の昔の村でもあったな。農家が土地を貸しつけ小作人を持つ身分で、同じ人が、土地を借りて、小作人の身分でもある。

 GHQ泣かせだな。


 無軌道な開発のせいかもしれないなと土地台帳を眺めていたら、偉人を思い出した。


 青森県梅澤村沖集落の菊池権太郎さん。この方も、チートな現象を起こした人だ。

 申し訳ないけど、ごく普通の農家の方だ。

 やったことは、

 縄を作って、それを集めて、売り。そのお金を元にして、貯蓄組合を作り。

 貧しい人にこそ融資をと、生活に困っている人に無担保低金利で貸し付けたり。文化事業も行ったのだ。


 どっかの逆さま合併をして、不良債権を帳消しにした銀行とは大違いだな。


 東北大飢饉も乗り切ったと云う。



 これを、この世界にカスタマイズしよう。


「ほっ、縄を編めですか?はい。畏まりました」

「え、いいの?」


 領主特権だろう。賦役で作ってくれることになった。

 菊池さんは、数えられないくらい農民達を説得したが、私は恵まれている。


 ドン!

 と数百メートルぐらい集まった。


 縄の材料は、木の皮、麦藁、麻など、無料で転がっている。


 これを、商人に、強気で売る。


「まあ、各農家を回る手間を考えたら、100メートル銅貨5枚(500円)で買わせてもらいます」


「もう少し・・御願いします。御願いします!」

「まあ、6枚・・・」


 農機具は、各農家が作っているらしい。


 そう言えば、あったな。中世の不倫裁判の記録を調べたら、証人の農民は、邸に農機具を納めに来た時に、奥さんが不倫相手といたのを目撃したとか。

 この記録で、農機具は、農民が作っていて、時に領主に納めさせたりもしていたと分かったのよね。時代と地域で違いがあるだろうけども、そんな感じか?



 商人の買い取り金額は、安いので、こちらから攻める。

 唯一、王城からもらった財産、白馬に乗って売りに行こう。

 ここから、8キロ先に自然発生した街に常設の市場がある。


 農民を豊かにするには、

 マルクス思想も、書記長も、党も必要ない。

 ただ、当たり前のことをやれるリーダーがいればいい。


 かくして、賦役という形で集まった縄を売りに行くと決断した。


 領主の馬車で売りに・・・


「お止め下さい。せめて、荷馬で行って下さい!」


「あれ、セバンさん。剣を使えるの?」

「はい、昔、少々、習いました」


「ベッキーちゃん。背中に、弩を背負っているけど」

「戦闘メイドの位置づけです」

「ヒィ、怖いのです」


 フ~ン、私が弩を背負った。

 ここから8キロ先に市場がある。

 そこで、集めた縄を売る。

 8キロ、この世界では、遠距離に分類される。


「じゃあ、御願いね。白王号!」

「ヒヒ~~~~ン」(なでて、なでて)


 この子は、王宮に献上されたが、ベルダや、ミリーシャ、イメルダになつかなかったので、私に下賜されたのだ。

 この辺境まで、運んでくれたよい子だ。

 かくして、元王女の物売りが始まったのだ。



 ☆市場


「売れないね」

「ええ、そうでしょう」


 ならば、売ってみせましょう。イヌイット族に氷を売る。

 需要を生み出せばいいのだ。

 私は、前世、登山部であった。


 適当な丸太を立て、実演をする。


「ほい、これが、本結びでございます!」


 ザワザワザワ~~~


「な、何だ。美人だ。何かやっているぞ」

「見てみようぜ」


 ・・・美人?いや、美人だけど、こうも、言われると照れるな。


「よい子を産めそうだ」

「ああ、体格がいい。良く働けそうだ」

「嫁にこないだか?」


 そっちか?辺境に行くと、働ける女性が好まれる=美人?

 になるのか?


 そう言えば、あったな。唇にわっかをいれる部族、本来なら、醜くし、奴隷狩りから逃れるためであったが、美醜が逆転してしまった。

 楊貴妃は白豚であった。

 美の基準はそれぞれなのだ。

 王宮なら、華奢な女性が好まれるのよね。


「これが、巻き結び!引けば、引くほど良く締まる!」

「もやい結び!輪を作るのに最適!カウボーイ必見だよ!」


「カウボーイって何だよ」


 そこそこ、売れた。値段は、だいたい100メートル大銅貨1枚(1000円)だ。初日は、数千円か。

 市場役人に売り上げの一割、手数料小銅貨2枚(200円)納める。


「プッ、娘さん。頑張ったな。初日はそんなもんだよ」


 クッ、笑われたわ。まあ、仕方ない。


 市場を見渡す。

 やはり、縄だけを売っている商人はいない。


「あっ、冒険者ギルドだわ」


 冒険者ギルドで、縄を置かせてもらおう。魔獣や盗賊を捕まえるときの必須アイテムだわ。

 ここでは、冒険者さんに、縄の束ね方を教える。


 親指と人差し指で元口を持ち。肘を支点にして、回すのだ。


「こうやって、束ねると携行しやすいですよ」


「「「微妙」」」

「縄なんて、そう使わないし」

「でも、あったら、便利かな」


「どんな縄があったら、便利ですか?」


「伸びたり縮んだり、長さが調節できる縄」

「ございますよ!」


 私が試作で作った縄をみせた。


 縄の先は、蛇口という環になっている。

 ここで、結んで、長さを自由に出来る。

 1.5メートル単位だ。


「ふ~ん。まあ、言ったから買うか・・」

「毎度あり!」


「おい、俺は盗賊専門だけどよ。何かいい縄はないか?」

「はい、手錠結びというものがございます!」


 これは、一本の縄で、巻き結びを二つ作り。両手首を締める。

 すると、手錠のようになる。

 さらに、端末で、両手の間をグルグルまいて、端末と元口をしばると、手錠と同じ効果になるのだ。


「え、盗賊いるの?」

「ああ、収穫時や、人さらい専門の奴らがいるよ」

 有益な情報だわ。騎士団も作らなければね。

 そう言えば、叔父様は、護衛をつけろと、いつも言っていたわね。


 

「そのお金は、アルサ様の化粧代にされるのですか?」


「セバンさん。法人の資金にするのよ。皆で稼いだお金だもの」


「法人?商会のようなものですか?」


「まあ、そうね。名前は、『生活防衛ギルド』にしますわ」


 かくして、生活防衛ギルドが産声をあげた。

 このときは、まさか。ここまで大きくなるとは思っても見なかった。






最後までお読み頂き有難うございました。

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