第2話 追放から5年後、王都にて
☆5年後、王都
ポロン♩ポロン♩
「ああ~、鉄血のアルサ様は、老練の策士、セバンと、忠義メイド、ベッキーと伴に、辺境に降臨されたぁ~
イモを植え。商会を起こし、民を豊かにし、多彩な軍略で、流賊を打ち破った~~
男は笑い。女は微笑み。子供は走り回る~~~
さあ、今日のお題は、アルサ様の善政!餓死者0の秘策を公演するよ!」
「「「行く!行く!」」」
「王都でも餓死者でたのによ。同じ王女でも大違いだ。なんだっけ。ミリーラ?」
「あいつはダメだな」
「ちょっと、待ちなさい!そのようなデタラメな公演はやめなさい!私は第4王女ミリーシャよっ!」
「おっと、これは、これは、第4王女殿下、アルサ様の商会のお話し、お聞きしたくありませんか?こちらは、取材をしておりますよ」
ドサッ!
「この金貨をあげるから、アルサの本当の商会の話を聞かせなさい!」
「毎度!」
・・・・
この劇では、
アルサは、邸に農民を集めて、一緒に、作業をした。
物を売りに行った。
イモを植えた。
ぐらいしか語られていない。
それに、尾ひれと、いや、翼をつけて、感動的に語られている。
それでも、民衆は拍手喝采だ。
・・・・
「ヒヒヒヒ、おおむね劇と同じです。若干、脚色しましたが、領主自ら縄を編み。市場に売りに行き。『生活防衛ギルド』を立ち上げました」
「嘘よ!お義姉様は、何か。画期的な商法を知っているはずよ!
そんな。ただ、農民と一緒になって、縄を編んで売りに行っただなんて」
「ヒヒヒ、隠しちゃいません。調査員を三ヶ月派遣して、一緒に作業したのさ。
違う所は・・・」
「もお、いいわ。偶然、異世界イモを知っていただけよ。お義姉様は無能よ!
それに、数カ村だけじゃない!私は王国全土よ!
私の政策は、飢饉を乗り越えたときに効果を発揮するのよっ!もうすぐ、平民は手のひらを返して、私を賛美するのだから、その時は、私の劇をしなさいよねっ!」
・・・あ~あ、わかっちゃいねえ。餓死寸前の時、銅貨数枚で、助かる時に、一週間後に、金貨一枚を差し上げます。
と言っても何の助けにもならない。
その場で、銅貨数枚貸して下さる方が、どれだけありがたみがあるか・・・
銅貨数枚が、アルサ様なんだよ。
「いい?大商会が、持ち直せば、民は豊かになるのよ!大商会の内部留保を作るように、政策するわっ!奉公人の給与を下げて、物価を上げれば簡単よっ!」
☆数週間後、王宮、
「ミリーシャ様、失脚!」
「何でも、物価高騰が止まらず、奉公人の給料は下がったそうだ」
「民は暴動寸前、実家の商家でも針のムシロだそうだ」
「フフフ、宮廷雀は、騒がしいわね」
「「「ベルタ王女殿下!」」」
「そんなの一手で解決する。アルサを討伐すればいい。こざかしい知恵で貯めた財産を奪えばいい。我の配下の騎士団だけでやる!」
「しかし、アルサ様の私兵は、手強いと評判ですぞ」
「フフフフ、私は、アルサを取材したという者から、裏を取った。
アルサの軍は、農民軍の数百!ろくに剣術も使えないド素人!
流賊の首領も、油断したところを討ち取ったと判明したわ。
鎧袖一触、アルサの化けの皮を剥がしてやるわ!」
☆一ヵ月後、王都
「さあ、さあ、お立ち会い。ベルダ様の第1騎士団は敗北したよ。
アルサ農民解放軍と戦ったのさ。
ベルダ様の騎士団は、
大義がない。
糧秣がない。
士気がない。
農村を略奪しながら行軍し、脱走兵が続出し、やっとの事で、辺境にたどりついたが、アルサ農民解放軍は砦にこもり。
何と、上から糞尿を投げつけたのさ!
「「「ギュハハハハハハ」」」
そして、部下数十人と這々の体で逃げ出したベルダ様を待ち構えていたのは、鬼の騎士団総長様だ!
「何故!我が武装を解かれなければならないのだ!私戦届けは出してあるぞ!」
「殿下、いや、ベルダよ。騎馬合戦は、負けたら、死罪ぞ!」
「そんな。馬鹿な!私が負けるわけがない!あの女、卑怯卑劣にも、砦にこもり。軍の徴用を、邪魔をした!
次は、国軍全部でかかるべきです!」
「ほお、そのアルサ様より、書状だ。騎馬合戦の勝者の報酬は、ベルダの助命、責任者が死罪ではない故に、脱走した騎士は拘束に止まることになる・・」
「はあ?父上に取りなせ!アルサなんて木っ端な者に情けを掛けられるいわれはない!」
「もうよい。牢にでも入れておけ」
「「「了解です!」」」
・・・神算鬼謀のアルサ様よの。この書状一つで、軍部を味方につけたぞ。
心が震えた。
逃亡した騎士達は、略奪を拒んだ正義の者たちだ。しかし、軍法では、敵前逃亡は死刑だ。
しかし、責任者、ベルダの助命と、騎士達の助命を、勝者の権利として提示された。
アルサ様か・・・
つまり、女王に即位させて見ろ。さすれば、恩赦で、正義の騎士は釈放されるとの挑戦状かもしれない。
老騎士は、辺境に向かって、剣を立て黙祷をした。
最後までお読み頂き有難うございました。