第12話 ここで、婚約破棄と追放?
広間で、騒ぎになっているとの報告が来た。イメルダとグランドル殿下?
王宮に滞在して、結婚間近だったのよね。
「行きます。ハインツさんも来て」
「分かりました」
ハインツさんと一緒に行く。
広間で人だかりが、あれは、婚約破棄よね。
「罪!各国で暗躍し、婚約破棄を誘発し、美女を前国王に献上した!
罪!尊敬するべき義姉、アルサ陛下に対して、数々の不敬!
罪!・・・・」
「ちょっと、待ちなさい!貴方は、イメルダの婚約者でしょう?」
グランドル王子、金髪碧眼で、絵に描いたような美男子だ。ハインツさんが、陰なら、こいつは陽のイケメンだ。
奴は、ニコッと笑って、近づく。
手を腰に回す気ね。
こいつの笑顔は、信用できない。経験で言うのなら、捕らえた盗賊が、この村のために戦わせてくれと、愛想笑いで懇願したときの顔。
そもそも、婚約破棄をする王子は、馬鹿!と相場は決まっている。
「あらよっ、と」
(((陛下が、『あらよっ』と言った?)))
私は、ターンを決め。彼の手から逃れたが、私の前に駆け足で来る。
「陛下!さあ、私と婚姻した方が、国家間のバランスが良いです!今、貴方を虐げた義妹を懲らしめていた所です」
奴は、膝をつき。手を差し出す。
私は、ハインリッヒ殿下、いや、もう、ハインツでいいわ。
ハインツさんを見て、クイ、クイと2回頷いた。
『来て!』だ。
ハインツさんは、目を潤ませ。
私の前に
来て、
跪き。
手を
差し出した。
人生で初の、私のために争わないで、しかも、イケメン二人だ。
しかし、答えは決まっている。
ハインツさんの手を取る。
立たせる前に聞く。
「ハインツさん。私は24歳です。おばさんですよ・・・」
「何の私は21歳です!」
ガバッと立ち上がり。抱擁された。
この世界では、10代で婚約が当たり前。貴族学園18歳で卒業して、2,3年で結婚する。
私は売れ残りなのだ。
例えるなら、ゴードン・ベスーンさんが社長に就任する前のコンチネンタル航空の株。
誰も買わないので、株価が上下しなかったと云う伝説がある。
噂すらされなかったのだ。
「「「おめでとうございます!」」」
「王配殿下の誕生だ!」
そして、物語なら、婚約破棄をする王子は没落だが、グランドル王子は、丁重に国外退去をお願いした。
イメルダは、追放になるのかな。
「外国に行きなさい。そこで、力を蓄えて、我国に刃向かうもよし。私を追い落とすもよし」
と申し渡した。
婚約破棄をされた令嬢は、国外に追放だ。
これが、最後の婚約破棄、追放になることを願う。
「覚えてなさい!!」
国外行きの馬車だけは、用意した。
「あの、下賜金は?王族を離れるのだから・・下賜金を寄越しなさい!」
「あら、イメルダ、失脚した王族には下賜金は支給されないのよ。私も支給されなかったわ」
イメルダの手により。婚約破棄をさせられた令嬢たちは、身一つで国外に退散させられた。
せめてもの意趣返しだ。
「手荷物だけ、許します。さあ、それで、ざまぁ返しをしてみなさい!」
正直、何故、これを言ったか分からない。
イメルダは、宝石をちりばめたドレスを着て、鞄いっぱいに金貨を詰め込んだ。
イメルダは、平民落ちの恐ろしさを知らなかった。
すぐに、盗賊に目をつけられ、捕縛。
外国の老貴族の後妻として売られることになった。
イメルダがヒーローと出会って、この国に、攻め込む情報を、カゲはつかめなかったのは当然だ。屋敷に閉じ込められ、老貴族が亡くなっても、特に異才を放つことはなかった。
「ハインツ、関係者に書面で婚約の報告したわ。でも、いつかは、帝国に行きたいわ」
「陛下、帝国に行きましょう。家族に合わせたい」
「フフフ、貴方のお父様とお母様、ご家族にご挨拶をしたいわ。大丈夫かしら」
「陛下、大丈夫です。皆、陛下のことを聞きたがっています」
「二人っきりだったら、アルサと呼んで欲しい。キャ」
4年の付き合いだけど、いざ、男女のお付き合いをはじめたら、もう、ビックリ、お互いが、見えない強力接着剤でつけられ、離れられないのかと思うくらいだ。
トイレはどうしようか?
まだ、まだ、やることがある。国境線の引き直し。イメルダが、辺境を売り、代金をもらった。
しかし、
ハインツの弟、カール殿下とその婚約者が来訪された。
帝国騎士団を迎えに来たのだ。
「まあ、可愛らしいわ!」
「義姉上、兄上、おめでとうございます」
「アルサ陛下にお喜びを申し上げます」
「兄上、しかし、噂に違わぬ美人ですね」
「そうだろう。もっと、言え」
「ハインリッヒ様は、クールだったと思ったのですが、お変わりに、いえ、アルサ様が、本心を引き出したのですね」
・・・美人だと!
何でも、辺境を境にして、美人の基準が変わる。華奢な令嬢ではなく、高身長、細い顔が好まれるらしい。
「ゴホン!」
カール殿下が持って来られた国書と、カール君、いや、カール殿下の話し合いでは、
辺境の売却代金は、ハインツの資産にする事になった。大金貨数千枚(数十億)か。
ハインツは、身一つで来てくれたのだ。
国境線の引き直しは、また、落ち着いたら、協議をするで、落ち着いた。
実務者レベルで協議を重ね。
合意できたら、そこで調印だ。
それか、そのまま、お互いに領土を分けて、カール殿下の公国にする手もあるとのこと。
今、決める必要はない。
国書の他に、息子、ハインリッヒへの手紙が届けられた。
“ハインリッヒよ。これからは、ジムザー女王を助けよ。そのためなら、帝国に敵対しても、恨まない”
と、
これは、役者が違うな。大国になった理由が分かる。
複数の民族を支配しているのだ。
心情を理解しなければ統治不可能。
こう、書かれたら、帝国を友とするしかないな。
「陛下、このお金は、国庫に、使って下さい」
「ええ、アルサって言って~~~じゃなくて、ダメです。これは、これ、それは、それです。王配費は支給されますが、貴方にも、自由になるお金が必要ですわ」
「アルサ」
「ハインツ・・」
「「「「グシシシシシシシシシシ、ジークアルサ」」」
良いところで、農民解放軍の幹部が来やがった。
「セバン殿より。報告です。資産が見つかりました!」
「使われないお金が、沢山あります」
「まあ」
大金貨数万枚(数百億円)、今の王国に必要不可欠。
どこで、手に入れたのかしら。
「北の離宮に行きましょう」
「前の国王・・・そうか、アルサの父上だったな。最低限の礼儀は大事だ」
「セバンさんとお父様に、婚約のご挨拶しに行きましょう。
ベッキーちゃん。貴方も、婚約者出来たこと報告に行くの」
「はい!」
しかし、帝国騎士団のお見送りなど、忙しく。北の離宮に行くにも数週間かかった。
良い意味で、お父様の変貌した姿を見ることになる。
最後までお読み頂き有難うございました。