第1話 イモを献上した王女
「「「ご即位40周年、おめでとうございます!」」」
ジムザー王国、国王ウヌバル、15歳で即位をしてから40年経った。
式典も最後になり。
宰相が宣言する。
「贈呈の儀になります。各王女殿下は、贈り物と、抱負のお言葉を奏上して下さい」
「まずは、第4王女殿下、ミリーシャ様!」
第4王女ミリーシャは
髪はピンク色で肩までの長さ。
王族ではあるが、現場に出て、商業を学んでいるから、長髪は邪魔になると、平民と同じぐらいまで切った。髪に関して、貴族の間では賛否両論のあるミリーシャだ。
彼女の後ろを
二人の従者が、台車を押して続く。台車の上には、人の背ぐらいの大きさのものが乗っている。
布が被されているが、銅像であろうと皆は思った。
三人は陛下の前で臣下の礼を取った後、銅像が見えるように、左右に別れた。
従者二人が、銅像の左右、ミリーシャは、解説のため。更に前へ出る。
ミリーシャの合図で、
布がめくられ、まばゆい等身大の黄金の像がお披露目された。
「私は、この黄金で作った陛下の像をお送りします。
私にとって、お父様は、世界中の黄金よりも大事ですっ。私が女王になったら、商業を盛んにして、豊かな国にしますっ!」
「おお、さすが、商業に明るいミリーシャよ。女王になったら、さぞかし国は富むであろう」
「「「「オオオオオオオーーーーー」」」
彼女の後ろ盾、商会から成り上がった貴族たちが歓声をあげる。
「次、第3王女殿下、ベルダ様!」
銀髪、髪をポニーテールのように束ねている。髪を動きやすいようにしているが、ミリーシャとは逆の発想をした。
彼女の後ろに、騎士2名が従う。
ベルダは、両手で恭しく盆を持ち。その上にはビンを、騎士達は、木箱を運んでいる。
「我が騎士団が討伐した地竜の角で作った強壮剤でございます。後ろの木箱に沢山はいっています。
私が王位を継ぎましたら、蛮族を討伐し、国境を守るだけではなく、広げてみせます。
私は、未熟者です。まだ、父上の膝の上が恋しいです。父上の薫陶は、地竜100体よりも価値がございます。ですから、長生きして頂きたく強壮剤を贈呈いたします」
地竜の角を原材料で作られた強壮剤、値段は時価だ。ビン一本が、小さな豪邸と同じ値段が付いたことがある。
「地竜を討伐するとは、ベルダが王位を継いだら、さぞかし、国は安泰であろう」
「「「ウラーーーーーーー」」」
主に、軍事貴族、騎士爵が鬨の声をあげた。
「次は、第2王女殿下!イメルダ様」
ザワザワザワ~~
ざわめきが起きた。
イメルダは、
きらびやかなドレス。金髪、縦ロールで、胸元まで伸びている。
扇を右手に持ち進む。
彼女に左手は、鎖を持っている。
鎖の先は、後方の美女の首輪につながっている。
更に美女の後方を、兵士が監視で続く。
「ヒィ、グスン、グスン」
首輪の女性の嗚咽が響く。
美女は、黄金の髪をおろし。まるで、花嫁衣装のような白いドレスを着ている。
イメルダとともに王の前に参上する。
ガタ!
驚きのあまり。
王は、思わず玉座から立ち上がった。
「ほお、これは、もしかして、スカーシャ王国の美姫と名高いルルーシャではないか?どうしたのだ?」
「ご名答です。愛妾にして下さいませ。
悪評を流し、疑心暗鬼を生じさせ。婚約破棄を誘発させましたわ。国外追放になったところを、捕縛しましたわ。
私が王位を継ぎましたら、金や武力に頼らず謀略によって、国威を増してみせますわ。
王宮で扇を指し示すだけで、遠い異国で事を起こしてみせますわ。
私にとって、父上の策こそ最上!私の策など、児戯にも等しいものですわ」
「さすが、イメルダよ。女王になったら、さぞかし、国威はますであろう。ルルーシャは余の寝室につないでおけ」
「御意!」
パチパチパチ!
高位貴族から拍手が起きた。
「最後、第1王女、マルサ様でございます!」
赤髪、緋色の高身長の王女が、おつきの老齢の執事と、お盆をもったメイドと共に参上した。
盆には蓋が被せてある。
「陛下、即位40周年おめでとうございます。私は、異世界イモを贈呈させていただきますわ。セバンの持っている箱の中に種芋がございます。さあ、ベッキー、蓋をあけて、
見事な紅色でございましょう?甘くて美味しいのです」
「プ、クスクス」
「イモを、庶民の食べ物ではないか?」
「無能のアルサ様とはよく言ったものだ」
貴族から嘲りの言葉が、アルサ主従まで聞こえて来るが、アルサは涼しい顔を崩さない。
「ほお、余にイモを食えと?意図を聞こうか?」
「はい、このイモは、救荒作物です。普及が見た目からまだまだです。陛下が食せば、民は、高貴な方のお気に入りと喜んで食します。
すると、民は飢えることがなくなります。
私のプレゼントは、民の笑顔でございます」
「もお、よい。マルサは、どのように国を導く?
余のことをどう思っている?」
「陛下、アルサでございます。
私は、各勢力の意見をよく聞き。大船を動かすように慎重に、事を進めます。
陛下のことは、縄のように大事に思っています。縄は、普段意識しませんが、なければ、生活が成り立ちません。
王とはかくあるべきと思っております」
周りの貴族から、嘲笑と嘲りの言葉が発せられた。
「プ~クスクス、もお、ダメ」
「無能の極地だ」
「王権を縄に例えるとは、何と愚かも極まれり」
「もう、良い。熱病で二週間寝込んだそうだな。アルサは、王族の任に耐えられない。臣下に下し、準男爵の地位を授ける
辺境の数カ村をやる。そこで、のんびり体を養生するがよい」
「陛下、畏まりました」
「良いか聞け。王国には王子はいないが、才媛が3人もいる。
卿らの職分に応じ、王女達を助け、国を富ませてみせろ」
「「「「御意!」」」
第4王女は、商務卿のもとで政策を担当し、
第3王女は、騎士団総長の配下につき、軍務に従事し、
第2王女は、宰相府付になり、キャリアを積むことになった。
一方、アルサは、叔父に別れを告げ。
老齢の執事、セバンと、12歳のメイド見習いベッキーの二人を廷臣として、辺境に向かった。
「叔父様、申し訳ございません。陛下の覚えを悪くしましたわ」
「いいさ。元々覚え悪かったしな」
「あの、この方々は?」
「護衛の冒険者だ。信頼の置けるパーティだ。まさか。三人だけで行くつもりではなかったよな?」
「申し訳ございません・・」
「アルサ様、生水は飲んではいけませんよ」
執事セバン、メイド見習いベッキーと伴に、寂しく辺境に赴任した。
しかし、その後、数年間、深刻な飢饉が王国を襲うことになる。
最後までお読み頂き有難うございました。