表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

その時、


「セィヤーーッ!!」


私が破った窓から飛び込んできた者が気合いと共に生体エネルギーを纏った足で後ろ回し蹴りを私に放ちっ、私を壁に沿って置かれた型遅れの4K未対応の液晶テレビまで吹っ飛ばした。

私は、私の家族だった者達を手放してしまったっ。


「ジュゥッ?!」


「逃げなさい」


その者は一番小さな息子を起こしてやりながら私を警戒した。

元妻はすぐに、もう小さくはない息子を抱え上げ、娘の背も押した。


「っっ、ありがとうございますっ」


「バッタ?」


「誰ぇ?」


私の家族だった者達は部屋から走り去っていった。

その者の、特殊繊維のマフラーが夜風になびく。

カイコ・ゲノムディアが遺した物だ。


「そこまでだ。ゾウリムシ・ゲノムディア」


「邪魔をするなっ! 裏切り者めっっ!!」


「俺には、お前の悲鳴さえ聴こえた」


「黙れぇえええーーーーっっっ!!!!」


溶解液を吹き掛けるっ。ヤツは生体エネルギーを放出して弾く! 散った溶解液で私の家であったこの部屋がガスを上げて崩壊しだした。

ヤツは私の伸ばした右腕の貫き手を躱して突進しっ、組み付き、万力のようにして私の両肩を押さえるっっ。


「セィヤーーッ!!」


私を抱えて窓の外へと飛び出すっ。私は宙で肩を軟体化させて腕を振りほどき、着地するまでに激しくヤツと打ちあった!

アスファルトを陥没させながら着地すると、ヤツは立て続けに生体エネルギーを乗せた手刀を私の喉元に、ローキックをふくらはぎに打ってきたっ。


「ぐっ」


再び組み付かれたっ。ヤツの両足が異様に膨れ上がり、そのまま道路を粉砕して水道管を破裂させながら跳び上がり、空き地を越え、解体中のビルの屋上へと着地する!

なんという脚力っ。


「離せぇっ!」


私は両手足に溶解液を纏わせて打ち出してヤツから離れた。

ヤツに、大きなダメージは見られないっ。

最初期のゲノムディア体にして至高の粋に達した9体の超越個体の1体。


「バッタ・ゲノムディアっ! 正義の妄想に取り憑かれっ、発狂した失敗作めっ!! お前達の狂気に組織は屈しないっっ!!」


「・・今は唯、寂寥(せきりょう)の風の中、去れ」


「このっっ」


ヤツらと対話は成立しないっ! 私は下半身は流動化して屋上を高速移動しながら、溶解液を纏わせた両腕で連打をヤツに打ち出し始めた。

ヤツは自在に躱しながら間合いを測る構えだ。


「5組の母子家庭を殺害したな、ゾウリムシ・ゲノムディア。お前が人であった頃の経緯も調べた。愚かなヤツ」


やはり内通者がいる、か。


「貴様の」


言い終わらぬ内に、ヤツが投げ付けた鉄パイプが流動化して範囲が拡がっていた私の下半身の一部に突き刺さったっ。


「っ?!」


移動を止められたわずかな隙にっ、ヤツは身を縮めて回転しながら私に飛び付き左の踵を振り下ろしてきた!

咄嗟に受けた両腕に衝撃を受けっ、屋上の床を撃ち抜いて3階まで落とされる!


「ジュゥッッ」


マズいっ、生体エネルギーの打撃を受け過ぎたっっ。ゲノムディアバックルがオーバーヒートしかけるっ。

私は実体化させた左脚でヤツを真横に蹴り払った!

続けて圧縮した溶解液の玉を連続で吐き出すが加速したヤツに当てられないっ。くそ!


「セィヤッ」


両腕の攻撃の流れで右脚に溶解液を纏わせて蹴り付けたが屈んで躱されっ、低い姿勢の拳出をバックルに打ち込まれた!


「ごぉうぅっっ」


バックルが損傷しっ、ゲノムディア体を保つのが難しくなる! 両膝が笑い身動きが儘ならないっ。

ヤツは大きく構え、跳躍して壁、床、天井、柱に飛び付くことを繰り返しながら加速してゆくっ。

生物の限界を越えた運動性っ!! 至高の進化っ!!! 組織の理想の体現者。貴様達、ばかりがっっ


「ホッパープリズンッ!!!」


「私はっ、私はゾウリムシ・ゲノムディアではないっ!! 私はヤマダ・ダイスケっ! 改造後っ、総帥は、心のままに、と仰有って下さった! 心ある者が人間ならばっ、私こそが人間だぁっ!! ホッパー・ゲノムディアっ! 正義の狂人よっ!! お前は人間の味方ではないのかぁああーーーーっっっ??!!!!」


「ゲノムディアブレイクッッ!!!!」


最大の加速と生体エネルギーを乗せた右足の蹴りが私の胸部を直撃したっ!!!


「ジュゥゥゥッッッ!!!!」


バックルだけでなく、生体コアまで破壊された。直に私は極限の自主崩壊にゲノムディア体組織が耐え切れず、爆裂する形で消え去るだろう。


「お前はお前を殺し続けていただけだ」


「ああ、ああああ・・・っっっ」


ここは、どこだ? また点滴か。この看護師は相性が悪い。最後まで、私は選べないんだな。


(お父さーんっ!)


(貴方)


(パパ!)


ん? 皆、そんな所に。ごめんよ、私はそっちに行けなけなくなったんだ。だが、許されるなら、最後に、


閃光っ!!!


抱き締めてもいいだろうか?

読んでくれてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ