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第106話、文化祭⑥

「よう龍介。お前なら来るって信じてたぜ」

「西川、遊びに来たぞ。ちょうどお前が受付のタイミングで良かったよ」


「えへへ西川くん。今日は張り切ってるねー? 文化祭、楽しんでる?」

「ひょ……ッ!? ま、真白しゃん……! その格好は……あばばば」


「あはは。最近大丈夫だったのに、西川くんってばまた噛み噛みー」


 バスケ部のブースにやってくると、受付でパイプ椅子に座っていた西川が真白を見た途端に顔を真っ赤にして勢いよく立ち上がった。


 そしてそのまま後ろに倒れそうになり……慌てて俺が支えてやると真白は楽しそうに笑っている。


 最近は真白を前にしてもアガらなくなってきた西川だったが、世界最強に可愛いメイド美少女に至近距離から見つめられてはそうもいかないようだ。


 ふわふわとしたフリルで飾られたメイド服、ひらりひらりと舞う黒いスカートと白いニーソックスの組み合わせは眩しくて上品で。


 体育館にいた他の男子生徒達の視線もメイド姿の真白へと吸い寄せられていて、鼻の下が伸びているのが遠くからでもはっきり見えた。


 一年一組と二組合同のスイーツメイド喫茶の話題が体育館中から聞こえて、こうして立っているだけでも真白の宣伝効果は抜群なのがよく分かる。


 真白は本当に可愛いし、スタイルも良くて何を着せても似合ってしまうからな……。


「それで西川、具体的にはバスケ部のアトラクションってどんな事をするんだ?」

「え……ええっとだな。フリースローに2回挑戦して、1回でも入ったら景品が出るんだよ。まあ文化祭だしな、軽い感じで楽しめる内容に仕上げてるぜ」

「なるほど。誰でも気軽に参加出来るっていう空気は大事なポイントだよな」


 受付の後ろにある広めのテーブルに置いてあるのが景品だろうか。


 バスケ部の部員で持ち寄ったであろうおもしろ雑貨などが置かれていて、二回外しても参加賞としてポケットティッシュがもらえるらしい。


「これ、全部バスケ部のみんなで用意したのか? 結構あるな」

「おうよ。見てみろ龍介、このマグカップ! この前映画にもなった『ストリートダンク』のキャラがプリントされててめちゃくちゃかっこいいだろ?」


「もしかしてこれ、西川が持ってきたやつか? この前一緒にゲームしてた時に言ってたやつ」

「まあな。貴重なバスケ部の活動費を文化祭に回すのもきついからよ。景品としておれのとっておきを持ってきたわけだぜ」


「それじゃあ俺は西川のとっておき狙いでフリースロー大会に参加してみるかな。真白はどうする?」

「やるー! わたしもフリースローする!」


「よし決まりだな。それじゃあ西川、ボール貸してくれ」

「ちょい待ち。参加するには名簿に名前書かなきゃならねーんだ。景品の数に限りがあるからよ、連続して挑戦されると困るからな」


 そう言って西川はボールペンと名簿を俺に手渡してきた。


 俺と真白の名前を書き込むと西川がボールを貸してくれたので、そのまま真白と二人でコートに向かう。


「ねね、龍介。わたしからやってみてもいい?」

「やる気満々だな。頑張れよ、真白」


 俺がボールを手渡すと真白は軽くドリブルしながらフリースローのラインに立った。


「うーん。メイド服だとちょっと動きにくい……入るかな?」

「確かにちょっと動きにくそうだな。スカートはふわっとしてるし、無理して転ばないようにな」

「気をつけるね。よーし、いくよー!」


 気合の入った声を出しながら真白はボールをその場で軽く二度ほどバウンドさせる。


 そして柔らかくしなやかなフォームでジャンプしてシュートを放った。


 ふわりと舞ったメイド服のスカートからは白い太ももがチラッと見えて俺の視線を奪った後に――真っ直ぐに飛んでいったボールは綺麗な放物線を描きつつリングへと飛んでいく。


 しかし、そのボールはリングの手前に当たって跳ね返り、そのまま外へと落ちてしまった。


 やっぱりメイド服では動きにくかったのだろう。いつもよりも調子が出ていない感じだ。


 真白はしょんぼりと肩を落としている。


「うーん……やっぱり動きにくいよー。メイド服でフリースローは難しい……」

「フリースローだとメイド服は不利だよな……。でももう一回挑戦出来るしファイトだ、真白」

「あ、待って。わたし、いい事思いついたかも!」


 真白は何か閃いたようにぽんっと手を打つとメイド服のスカートの裾上げをし始めた。


 そして動きやすくなったのか真白は笑顔で俺にピースを向ける。


「いえい! これなら動きやすいよ!」

「確かに動きやすくなったかもしれないけど……真白、それ」


 ふわふわスカートの裾が短くなったおかげで確かにさっきよりも動きやすそうだ。けれど、それと同時に別の問題も発生していて……。


(全くもう。真白のやつ……本当に無防備なんだから)


 短くなったスカートがひらひらと揺れる度に、白くて柔らかそうな太ももがチラチラと見えてしまっているのだ。


 裾が長かった状態でもシュートする時に太ももが見えてて目のやり場に困るとは思っていたけれど、裾上げされた事でさっきよりもだいぶ刺激的になってしまっている。


 ニーソックスと太ももの境目に出来た肉感たっぷりの絶対領域という、男子にとって最高に魅力的な組み合わせがそこにあるわけで。


 体育館にいた他の男子達が一斉に前屈みになり、その絶対領域を覗こうと必死になっていて……西川に至っては顔を真っ赤にしてずっと視線を逸らしている。


 西川はやっぱり紳士なところもあるよなあと思いつつ、このままフリースローを始めたら真白の大切な部分が見えてしまいそうで俺は気が気じゃなかった。


(これは目の毒というかなんというか……でも真白にはフリースローに集中してもらいたいしな)


 一度目のフリースローが決まらずにしょんぼりしていたし、余計な事を言って真白を不安がらせるのも良くない。


 けれどそんな想いと同時に真白の大切な部分を他の男に見せたくないという気持ちが湧き上がってきて、俺はフリースローに挑戦しようとしている真白の後ろに立った。


「あれ、龍介。先にやりたくなった?」

「いや、後ろから真白の挑戦を見守りたくなった。他意はない」


「そっかー。わたし、頑張るからちゃんと見ててね?」

「おう。真白が頑張ってるところ、ちゃんと見てるからな」


 俺がそう言うと真白はにこっと笑ってからボールを構えた。


 それと同時に俺の背中には『そこを退いてくれ~!』という男子生徒達の怨嗟の念がぶつかってくる。


 俺が真白の後ろに立ったのはスカートの中身が見えないよう男子達をけん制する為であり、こうして悪い虫がつかないよう細心の注意を払っているのだ。


 完璧に守れているかと言われればそうではないかもしれないが、少なくとも真白への被害は格段に減るはず。


 俺がブロックを続けていると周囲からは落胆の声が聞こえたが、真白の大切な部分を見せてやるもんかと気持ちを強くした。


 真白は自分が美少女だという事を普段からあまり意識していないし、俺が可愛いとか綺麗だって言葉をかけても冗談だと思って取り合ってくれない事も多い。


 けれど真白はその可憐な容姿で学園中の視線を集める美少女で、何よりも優しい性格と明朗快活な性格が魅力的で。


 ちょっと抜けているところもあるけれど、それも含めて真白は世界で一番可愛い女の子なのだ。


「それじゃあいっくよー! えいっ!」


 そうして真白の挑戦をすぐ後ろで見守っていると、ついに真白がフリースローを放った。


 綺麗なフォームから放たれたボールは美しい放物線を描きながら、カコンッ! と音を立ててリングに当たった後でネットをくぐる。


「やったー! 入っちゃったよ、龍介!」

「流石だな、真白。今のは凄く綺麗なシュートだった」

「えへへ、龍介にいいとこ見せられてよかった!」


 ゴールが決まった事がよほど嬉しかったのだろう。


 真白は笑顔でぴょんと飛び跳ねながら俺の方に振り返り、可愛らしいピースサインを向けながら無邪気に喜んでいる。


 さっきまでは真白のスカートの中に注目していた男子生徒達も、真白の華麗なシュートに見惚れたようで今は称賛の拍手が体育館中に響き渡っていた。


 俺も嬉しくなって拍手をすると真白は少し小さな声で照れたように呟いた。


「龍介って、いつもわたしの事を守ってくれるよね。ありがとう」

「え? それってどういう意味だ?」

「ふふ、内緒だよ」


 そう言うと真白はくすりと笑って、桜色の潤んだ唇に人差し指を当てた。


 その表情は柔らかに微笑んでいて……いつもの明るい笑顔とはまた違う大人びた微笑みに俺は思わずどきりとしてしまう。


 真白は時々こうして大人っぽい表情をして俺をドキッとさせる事がある。


 そんな時の真白の仕草や表情は普段の天真爛漫な様子とはまた違っていて、そのギャップに俺はますます心惹かれてしまうのだった。


 それから気を取り直したところで、今度は俺が真白に続いてフリースローに挑戦する事になる。


 すぐ後ろで真白は満面の笑顔で俺の事を見守ってくれていて、ボールを受け取った俺はゆっくりとフリースローラインに立った。


 真白の応援に後押しされた俺の体は自分でも驚く程に軽くて、放ったボールは綺麗な放物線を描いてリングの中に吸い込まれていった。

---☆あとがき☆---

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