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第104話、文化祭④

「ねえねえ、龍介! 2年3組のたこ焼き、とっても美味しそうだよ!」

「お、本当だな。この青ネギたっぷりなやつ、凄く美味しそうだ」

「それじゃあ買いにいこっか!」


 文化祭デートを始めてすぐの事。


 プラカードを掲げるメイド姿の真白と俺は綺羅びやかな校内を見て回っている。


 アニメで見た『ふせこい』の文化祭。

 憧れの光景が目の前に広がっていて、その場所を俺は大好きな真白と一緒に歩いている。


 その事実が嬉しくて、幸せで、俺の胸は高鳴る一方だ。


 そうして二人で隣り合って廊下を歩いていると、真白が俺の顔を見つめながらくすくすと笑っている。


「龍介、さっきからほっぺたふにゃふにゃしてるよー。文化祭、すっごく楽しんでるね?」

「……俺、そんなだらしない顔してたか?」


「うん、してた。なんか子供みたいで可愛かったよ?」

「うっ……。そうか、子供みたいか……。やばいな、今日はテンション高すぎて全然落ち着ける気がしない」


「えへへ、可愛いなあ龍介は。わたしがそんな顔にしてあげてるって思うと嬉しくなっちゃうなー」

「真白……お前はもう、本当に……」


 悪戯っぽく笑う真白はとびっきり可愛くて、ころころと変わる真白の表情に俺はドキドキしっぱなしだ。このままだと真白にやられてずっとふやけた顔になってしまう。


 何とかしていつもの俺に戻らなければ。


 こほん、と咳払いをして気持ちを切り替えた俺は表情筋を引き締める。


「……っ。真白も、今日はしゃいでるよな。凄く楽しそうにしてるし」

「うん。わたしも楽しくて幸せで仕方ないよ? だって龍介と文化祭デートするの夢だったから!」


 にひひと可愛らしい八重歯を見せて真白は笑い、俺を見つめながら澄んだ青い瞳をキラキラと輝かせる。


(ああもう……。俺は本当に真白の笑顔に弱いな……)


 引き締めた表情筋が真白の一言で一瞬にしてふやけてしまう。


 俺と文化祭デートするのが夢だったなんて、嬉しすぎる言葉を言われて心臓が弾け飛びそうだ。


 真白はそんな事お構いなしに俺の瞳をじっと覗き込んでいて、その無邪気な笑顔が嬉しくて愛おしくて思わず見惚れてしまっていると――視界の隅に人影が映り込んで。


「――真白。ちょっと、危ない」

「わわっ……!」


 廊下ではしゃいでいる男子生徒がふらふらと俺達の方に歩いてきて、思いきり真白とぶつかりそうになっていたのだ。


 馬の被り物をしているその男子は視界が遮られている為か、周りがよく見えていなかったようでそのまま俺達に向かって突っ込んでくる。


 咄嗟に真白の肩を掴んで抱き寄せて男子を避けると、彼女は驚きの声を零してそのまま俺の胸にぽすんと収まった。


 顔を真っ赤に染めた真白は何が起こったのか分からない様子で目をぱちぱちさせながら俺を見つめていて……あ、やばい。可愛い。


 いやそれよりも、今は真白を危ない目に遭わせないようにしないと。


「悪い。急に抱き寄せたりして。真白がぶつかりそうになったから咄嗟に……」

「……ううん、ありがとう。ちょっとびっくりしちゃったけど……龍介に守ってもらえて嬉しい」


「あ、あんまりよそ見しないようにな? 今日は文化祭でみんなはしゃいでるから廊下とかは特に危ないし。それにもしかしたら人混みに揉まれてはぐれたりするかもしれないだろ」

「うん、気を付ける。それと……そうだね。はぐれないようにしないと、ね」


 真白はきゅっと俺の手を握り締め、少し恥ずかしそうに上目遣いで俺を見つめていた。そんな真白が可愛すぎて俺は頭がくらくらする。


 どうにかしてこのドキドキを抑えたいところだが、俺達を知っている生徒達の目の前で真白と手を繋いでいるこの状況……。


 めちゃくちゃ恥ずかしくて、でも嬉しくて。真白はそんな俺の気持ちを分かっているのか悪戯っぽく微笑んで。


「龍介の手、熱いね。わたしと同じくらいドキドキしてるの分かっちゃう」

「っ……、そりゃ真白と廊下で手を繋いでたら……こうなるだろ」


「でも、はぐれちゃったりしたら、やだから。手、離さないで?」

「お、おう……分かった」


 真白はふにゃりと蕩けそうな笑顔を浮かべて俺の手を引いて歩き出す。


 最強に可愛い真白がメイド姿というだけでも目を惹くというのに、そんな学園のアイドルとも言える美少女が俺と手を繋いで歩いているのだ。


 周りからの視線が集まるのは当然の事で、俺は気恥ずかしさでどうにかなりそうだったが、真白は相変わらず嬉しそうに微笑んでいる。


 でもまあ……真白が幸せそうならそれでいいか。

 

 真白の小さくて柔らかな手に引かれながら俺は、もうこのドキドキがおさまる事はないだろうなと悟った。

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