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第102話、文化祭②

 文化祭の始まりを告げるチャイムが学園中に鳴り響く。


 時刻は午前十時、ついに待ちに待った文化祭の幕開けだ。


 文化祭の開始を報せるチャイムが鳴り響くと、すぐに校内はたくさんの人達の賑やかな声で溢れかえった。


 普段の落ち着いた様子とは打って変わって、校内には綺羅びやかな装飾が張り巡らされ、校庭にはたくさんのテントが張られてクラスや部活による露店が開かれている。


 スイーツ片手に談笑しながら歩き回る女子生徒。仮装衣装に身を包んだ男子生徒、その他にも保護者や他校の生徒の姿もあり今日だけの特別な光景が広がっていた。


 まるで別世界のように煌びやかで華やかな文化祭の空間の中、俺達も一組と二組合同のスイーツメイド喫茶を成功させるべく頑張っている。


 メインの会場となるのは俺達の一年二組の教室で、隣の一組の教室は着替えや休憩に利用する事になっている。


 教室のドアは閉められ、廊下側の窓にはカーテンが引かれていて、中の様子は外からは見えないように工夫されていた。


 接客担当は女子に任せており、四人の生徒が時間ごとに交代交代でメイド服を着てやってきたお客をもてなす。


 男子は調理担当や廊下での受付、掃除やゴミ出し、そして会計係などだ。


 今の調理担当は俺と他の男子が二人、接客担当は真白が中心に立ってスイーツメイド喫茶を盛り上げていた。


 そんな俺達の二組の教室には予想以上の長蛇の列が出来上がっていて、その列は近くの階段の下まで続いていた。


 学園のアイドルとして知られる真白や姫野、花崎優奈のメイド姿を目当てで来店した男子生徒や、ワッフルの甘い香りにおしゃれなタピオカミルクティーに惹かれた女子生徒。


 美少女メイドと美味しい手作りスイーツの組み合わせは最高で客足は途絶える事なく大盛況だった。


 教室内は大忙しでメイド姿の真白がトレイを両手に駆け回っている。


「はい! ワッフルが3つとタピオカミルクティーが2つです! ご注文ありがとうございます!」

「真白ちゃん、こっちもワッフル2つと紅茶2つね」

「かしこまりました! 少々お待ちくださいませ!」


 真白は笑顔で接客をしつつ注文を調理担当に伝えて、出来上がったスイーツをトレイに乗せて運んでいる。


 ぱたぱたと小走りで教室内を駆けまわるメイド姿の真白はとても可愛らしい。


 ふわりと翻るスカートは花のように可憐で、清楚な白と可愛い黒のメイド服は真白という世界最強の美少女の輝きを更に眩しくさせる。


 ついさっき接客を受けた男子生徒は真白の笑顔に見惚れて注文したスイーツを食べるのを忘れており、他の生徒も真白に接客して欲しいと注文する人が多かった。


 あっという間にスイーツメイド喫茶の看板娘となった真白は、周りのみんなを明るくする可愛い笑顔を振り撒いて忙しく働いている。

 

 おかげでスイーツメイド喫茶は大繁盛。


 真白は休む間もなく動き回っているが、その笑顔には疲れの色など全く見えない。


 心から楽しそうに働く真白の姿は見ているこっちも元気をもらえる。


 俺も真白をサポートする為に注文されたスイーツを調理しながら、せっせと皿に盛り付けていく。


 文化祭に出す為に用意したワッフルは、ふっくらとした生地にサクッとした食感とモチモチした噛み応えがやみつきになる絶品スイーツだ。


 味だけではなく見た目にもこだわったトッピング。

 カラフルなタピオカに鮮やかなフルーツを添えたり、ふわふわの生クリームにミントの葉をあしらって爽やかに仕上げたり。


 別のものにはチョコレートソースで模様を描き、真紅のベリーをちょこんと添えて華やかな雰囲気にしてみたり。


 前世で働いた喫茶店の経験を活かした見た目も映えるワッフルに女子生徒は黄色い声を上げ、そこに人気のタピオカミルクティーをセットにすれば売り上げはうなぎ登りで大繁盛だ。


 接客をしている真白だけでなく調理担当の俺も大忙しで休む事なく動き回っているが、今まで感じた事のないような充実感が心を満たしていた。


「龍介! チョコレートワッフル2つ、フルーツワッフル1つ、タピオカワッフル1つおねがい!」

「分かった、すぐに用意する!」


 忙しそうに動く真白からオーダーを受けて俺はすぐに調理に取り掛かる。


 本当に目が回る程の忙しさだ。

 次から次にワッフルを焼いてはトッピングを盛り付けて、出来上がったスイーツを真白が笑顔で運ぶ。


 席が空けば机を綺麗に拭いて次のお客さんを案内して、また注文が入ったら出来立てのスイーツを作って。


 忙しい、でもそれさえも心地よくて、俺は笑顔を浮かべながら一心不乱にワッフルを焼き続ける。


(ああ……楽しいな)


 それは一度目の人生では決して味わう事の出来なかったもので、文化祭という眩い青春の1ページを胸に刻み込んでいく。


 清楚で可憐なメイド姿で周囲に笑顔と甘いお菓子を振る舞う真白と、そんな彼女の側で全力を尽くしてスイーツを作る俺。

 

 最高の文化祭を、俺は今最高に楽しんでいる。


「龍介、みんな笑顔だよ! 美味しいって喜んでくれてる!」

「ああ、真白も大活躍だな! 完璧な接客だよ!」


「うん! わたし、今すっごく楽しい! 龍介と一緒に文化祭を作れて、最高に幸せだよ!」

「俺も真白のおかげで、最高に楽しい!」


 俺と真白は笑顔を交わす。


 交代の時間が来るその時まで、俺は真白と最高の瞬間を味わい続けたのだった。

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