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第100話、文化祭の準備

 それから俺と玲央は昼休みに話した内容を深く掘り下げて、内容を事細かくまとめてからクラスのみんなに相談した。


 俺達のクラスが出すスイーツ喫茶と真白のいる一組が出店するメイド喫茶。隣り合う二つのクラスで協力し合い、最高の文化祭を作り上げる。


 手作りスイーツでいくか、洋菓子店の協力を仰ぐか、あの時のようにクラスが割れてしまうかとも思ったのだが、そんな心配は杞憂だった。


 俺達のアイデアに対して快く賛成してくれるクラスメイト達。


 メイド喫茶とスイーツ喫茶の組み合わせは彼らにとって魅力的に思えたのだろう。


 学園の最優秀賞を取れるかもしれないという期待に、クラスメイト達の表情はみんな笑顔だった。


 それは真白のクラスも同じだったらしい。


 クラスのみんなに相談を持ちかけると、真白のクラスでもメイド喫茶とスイーツ喫茶の両立を大歓迎してくれたみたいで話し合いも滞りなく進んだようだ。


 その理由は単純明快。


 真白のクラスはメイド服に多くの予算を回したいと考えていて、提供する料理の方をどうしようかと頭を悩ませていたらしい。


 そこで料理に力を入れている俺達のクラスからの協力の申し出は渡りに船だったわけだ。


 俺達のクラスは衣装製作の方で真白達から協力を得られるし、内装などのテーマやコンセプトを統一すればそれだけで一体感が生まれる。


 クラスが隣り合っている立地の良さ、そしてお互いのクラスの良い所を掛け合わせる事で、最高の文化祭を作り上げる事が出来るはず。


 その事もあってか真白のクラスは、俺達のクラスが出店するスイーツ喫茶に全面的に協力してくれる事になったのだ。


 そして俺が心配していたのは、主人公である布施川頼人の反応。


 布施川頼人は原作と同じ有名洋菓子店の協力を取り付けたスイーツ喫茶を提案していた事もあり、元々の展開とは異なる文化祭の内容を望んでいて、悪役である俺の起こすイレギュラーな展開を快く思わないのではないか。


 その事だけが気がかりだったのだが、玲央が話を切り出すと布施川頼人は悩みながらも首を縦に動かした。


『仲良くしている花崎さんや姫野さんのメイド姿、頼人は見たくない?』


 一組のメイド喫茶と協力して文化祭を進めれば、メインヒロイン二人の特別な姿を見る事が出来る。


 玲央のそんな甘い言葉に乗せられて、布施川頼人はあっさりと俺達のクラスに味方してくれる事になった。


(その気持ち、分からなくもないよなあ)


 学園の三大美少女として知られる花崎優奈と姫野夏恋のメイド姿、そんな二人の姿を目に出来るのなら協力を惜しむ理由はないだろう。


 俺だって真白のメイド服姿はぜひ見ておきたいところだし、布施川頼人だって似たような心境のはず。


(タペストリーとかアクリルスタンドみたいなグッズでなら拝めたんだけどな。原作じゃメインヒロインがメイド姿を披露した機会はなかったわけだし)


 メインヒロインの二人がメイド姿を披露する展開は原作になかったイレギュラー。


 しかし今回は主人公にも嬉しい展開であり、玲央の説得もあって意外にもすんなりと布施川頼人は今回の話を受け入れてくれた。


 そうして一組と二組、両方のクラスで話が上手くまとまり、生徒会からの許可も下りた事で俺達は一致団結して文化祭の準備に取り掛かった。


 それから時間はあっという間に過ぎて――文化祭本番まで残り数日。


「ねえ進藤。こっちの飾り付けってこんな感じでどうかしら?」

「うーん、もう少し小物を増やした方がいいんじゃないか? このレースペーパーを使ったりしてさ」

「あら、これ可愛くていいわね。早速使わせてもらうわ」


 姫野は教室の飾りつけを頑張っている。

 

 文化祭の準備が始まってからというもの、俺達は毎日放課後の時間をフルに活用している。


 内装や外装のデザイン、メニュー表やポスターの作成などやる事は山積みだった。


 しかし一組と二組のみんなで力を合わせているからこそ順調に準備が進み、予定よりもかなり早い段階で内装や外装のデザインが形になったのだ。


「龍介、展示するポスター完成したよ。メニュー表はこれでいいかな?」

「ばっちりだな、玲央。目立つだけじゃなくて、伝えたい事もちゃんと伝わるし、何より見た目がいい。メニュー表もおしゃれで最高だ」


 それからメニュー表、ポスターのデザインについては玲央が積極的にアイデアを出してくれるおかげで作業はかなり捗っている。


 バスケ部の練習で忙しい中、こうして時間を作って文化祭の準備を手伝ってくれる玲央には頭が上がらない。


 そして――。


「――龍介! 遂にメイド服が完成したよっ!」

「おお、真白。よく頑張ったな!」


 真白は教室のドアからひょこっと顔を出して、嬉しそうに俺の名を呼びながら駆け寄って来た。


 そんな彼女の手には完成して綺麗に折りたたまれたメイド服があって、その出来栄えに俺は思わず感嘆の声を漏らす。


「すごいな、このクオリティ……本当に素晴らしい出来栄えじゃないか。流石は真白だよ」

「えへへ、メイド服を縫うなんて初めてだったけど龍介が褒めてくれて嬉しいな。これで当日はばっちりだよ!」


 真白は嬉しそうに微笑み、メイド服を俺の前に差し出しながら笑顔でピースサインを見せる。


 ふわふわとした柔らかい質感のフリルに、可愛らしい大きなリボンやカチューシャの組み合わせ、そして白と黒のコントラストが美しいメイド服。


 真白の手作りであるそのメイド服の完成度は素晴らしく、思わず見惚れてしまう程。文化祭本番にこのメイド服を着た真白の姿を想像するだけで気持ちが高まってくる。


 そんな俺の反応に気を良くしたのか、真白の笑顔は更に輝きを増していった。


「とっても順調に進んでるね! わたし達みんなで力を合わせて、最高の文化祭を作れてるって感じがするよ」

「ああ。俺も実感してる。文化祭の準備がこんなに楽しいなんて初めてだよ」

「わたしも! 中学の頃よりずーっと楽しいかも! こんなの初めてだねっ」


 真白は大はしゃぎで言いながら、ぴょんぴょこと跳ねて全身で嬉しさを表現する。


 クラス一丸となって準備を進めるこの空気感を真白は心の底から楽しんでいるのだろう。


 俺も同じ気持ちだと伝えると真白はますます喜びを露わにするのだった。


 しかし、真白が喜びのあまりに飛び跳ねる度にスカートもふわふわと揺れて、その下に履いている可愛らしい白い布がちらちら見えてしまって……。


「真白、あんまりぴょこぴょこすると危ないぞ……」

「え? あ……っ!」


 俺の指摘にようやく自分の状態を理解したのか、真白の頬が見る見るうちに赤く染まり、スカートを手で押さえて恥ずかしそうに俯いてしまった。


「ご、ごめんね龍介。わたし、ちょっと浮かれすぎちゃってたみたい」

「い、いや大丈夫。俺が注意するのが遅くて悪かった」


 二人で頬を赤く染めながら、文化祭の準備で盛り上がるクラス全体を見回してみる。


 幸いにもみんなが作業に集中していたおかげで、真白が飛び跳ねてスカートをちらつかせた事は誰も気付いていないようだ。


 けれど一人だけ俺達のやり取りを見ていた生徒がいたようで、彼女は大きな溜息をつきながら俺達の方に歩み寄って来た。


「進藤、あたしの前で真白ちゃんといちゃつくのは禁止よ。羨ましいじゃないの……全くもう」

「い、いや……別にいちゃついたりはしてないが……。ていうか羨ましいって、何だよ姫野」

「羨ましくて当然でしょ! だって真白ちゃんは学園のアイドルなの、超カワイイの、推せるのよ! そんな真白ちゃんと自然な流れでいちゃつけるなんて進藤はずるいわ!」


 最近、真白推しが加速している姫野はぶーぶー文句を言いながら俺を睨み付ける。


 文化祭の準備を通じて姫野は真白との距離を更に縮めているようで、今ではすっかり仲良しさんだ。


 姫野は俺への不満を一通り言い終わると真白に向き直り、その手を優しく握って満面の笑顔を浮かべた。


「真白ちゃん。進藤は置いといて、あたしといっぱいいちゃつきましょうね。真白ちゃんの手って凄く綺麗で触り心地も最高よ」

「あは、夏恋ちゃんくすぐったいよ。でもありがとう、わたしと仲良くしてくれて」

「そうそう! この笑顔がすっごく可愛いのよ! その笑顔があれば、もう何だって許せちゃう!」


 姫野は満面の笑みを浮かべたまま、真白の両手をにぎにぎしながら本当に嬉しそうに言う。姫野は真白の事が大好きで大好きで仕方がないみたいである。


 ツンデレキャラで知られる姫野だが、真白に対してだけはデレデレのデレみたいなツンの欠片もない態度で、もうすっかり真白の魅力の虜になってしまっているようだった。


 姫野はきっと将来立派な真白オタクになるに違いない。俺はそう確信した。


 そうして時には和やかにお喋りしながらも着々と作業は進んでいく。


 教室の内装や外装、メニュー表とポスターのデザインも好評で、真白の手作りであるメイド服はみんなからも歓声の声が聞こえた。


 敵対していた主人公の布施川頼人やヒロインの花崎優奈も随分と協力的になってくれて、今は足りない小物の買い出しに行ってくれている。


 文化祭まで残り僅か。


 まだ細かい部分で詰め切れていない部分もあるが、みんなのおかげで準備は滞りなく進んでいた。

 

 このままいけば俺達はきっと最高の文化祭を迎えられる。


 そして真白と姫野、玲央も同じように感じてくれているようで、俺達は成功を確信しながら頷き合うのだった。

皆様のおかげで本作品は第100話にまで来ることが出来ました。これは読者である皆様がブックマークや評価、いいねなどで作品を応援してくれたからこそです。もし読者様からの反応がなく作品に人気が出ないままだったら、100話という記念すべきエピソードまで辿り着く事は出来なかったと思います。この作品を様々な形で応援してくださる読者の皆様、本当にありがとうございました。

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