表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/122

07

2022年の更新スタートです。

どうぞ宜しくお付き合い下さいませ。

 ハッと目を覚ますと、私はベッドに横になっていた。涙を零しながら、伸ばした手をメイドさんが握ってくれる。


「レイ様、目が覚めて良かった。どこか痛い所や気分が悪いことはありませんか?」


 主に私の面倒を見てくれているメイドのマリンさんだ。リス獣人の彼女の大変愛らしく、栗色の大きな尻尾がチャームポイントだろう。


「マリ……ンさん」


「申し訳ありません、このような酷いことになってしまいまして。お詫びのしようもありません。今、お医者様とトマス担当官を呼んで参ります」


 私の手をギュッと握り、マリンさんはいそいそと部屋を出て行った。


 ここはどこだろう?

 この世界に来て宛がわれた部屋とは違う。もう少し小さくて、家具もシンプルなものが揃えられていた。

 今いる部屋は広いし家具も装飾が凄いし、ベッドも大きくて天蓋付きってやつになっている。


「目を覚まされて本当に良かった。おかしな感じがしたりはしとらんね?」


 医者だというお爺さんは梟の獣人さんらしい。真っ白い髪と立派な髭が確かに梟っぽい。


 ひと通りの診察をし、どこにも異常はないとお墨付きを貰った。ただし、数日は体も心も不安定になりやすいので、安静にしているようにと命じられる。


「本当に申し訳ありませんでした」


 診察後にやって来たトマス氏は、私に深々と頭を下げた。


「えっと……どういうことでしょう?」


 久々に顔を見たトマス氏はやつれているように見えたし、耳と尻尾の毛並みも心なしか艶を無くしているようだ。


「レイ様、あなたは三日間意識が戻りませんでした」


「……え」


「三日前、アンナ様とティールームにいらしたのは覚えていますか?」


 ティールーム? あ、ああ、そうそう、杏奈と一緒にお菓子を食べようって向かった。それで、……それで杏奈が舞踊団を見に行きたいって言い出して、いいよって返事をして、それから……それからなんだっけ?


「ティールームでとある獣人に殴られ、大ケガを負いました。そのせいで意識が戻らず、三日間眠り続けていたのです」


 あ、あー? なんか背後に恐い気配を感じたような気がしたけど、あれは獣人さんだったのか!

 っていうか、なんで私が突然殴られなきゃいけないわけ?


「ケガについてはワシから説明しよう。今はもう治癒魔法で完全に治っているから、心配せんでいい。強く左横顔を殴ら、左目が潰れ左頬骨も砕かれておった。吹き飛ばされて、壁に右肩と腕を打ち付けて右腕と右肩を骨折。要するに、重傷だったわけだな」


「…………な、なんで」


 私がここに連れて来られてひと月半ちょっと、メイドさんや文官さんなど獣人さんと交流したし、同じく連れて来られた人たちとお喋りくらいはした。

 大体の人が礼儀正しかったし、優しかった……中にはちょっと嫌な奴もいたけど、暴力的な感じはなかった。


 そもそも私、獣人さんからいきなり重傷を負う程張り倒されるようなことなんてしてない。

 そう言えば、最初に獣人だけど他人を襲ったりしないとか言ってたじゃないか!


「それは、あなたにケガを負わせた獣人が、アンナ様の番でして……レイ様に親しく笑いかける姿を見て、嫉妬しカッとなって殴ってしまったと」


「……はぁあ?」


 なに言ってんだー!?


 ションボリと耳を伏せながら言うトマス氏に、結構ドスの効いた「はぁあ?」が出てしまったがもう遅い。メイドのマリンさんも、お医者さんもションボリしている。


「ですよね、そういう反応ですよね。異世界の人からしたら、理解出来ないことですもんね」


 トマス氏は苦笑して、私と改めて向き合った。


「番云々以前の問題として、どんな理由があっても全く落ち度のないレイ様に対していきなり暴力を振るい、ケガをさせるなんて許されることではありません」


 そうでしょうね。当たり前ですよね。


「こちらの管理不足です、申し訳ありませんでした」


 マリンさんもお医者さんもトマス氏と一緒に頭を深々と下げた。彼らは実行犯ではないけれど、管理が甘かったと言われたらそうだろうから謝罪を受けることにした。


 私が謝罪を受けなかったら、先に進むことが出来ないだろう。先に進まなければ、解決は見えてこない。


「取りあえず、管理側からの謝罪は受けます。先生は私のケガを治してくれて、マリンさんは私の面倒をみてくれたんでしょう」


 そう答えれば、トマス氏はまた軽く頭を下げた。


「ありがとうございます。それで、あなたに暴力を振るった本人のことなのですが……」


「杏奈の運命の番さん、だとか?」


「はい。ええと、ハイイログマ……ヒグマの獣人で、南の国境を守る任務についている者です」


 熊? ヒグマ? 北海道にいるあのデカい熊?

 え、私そんなのに張り飛ばされて、よく生きてたな。即死じゃなかったことに驚きなんですけど。


「今は南離宮とは離れた場所にある部屋で謹慎していますから、レイ様と顔を合わせることはありません」


「それは、安心です……けど、その人、杏奈の番なんですよね?」

お読み下さり、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ