表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/122

04

 今、従姉妹と私は見知らぬ異世界にいる。


 この世界は魔法があって、魔獣なる危険な生き物がいて、動物の耳と尻尾を持つ獣人さんやエルフ、ドワーフなど多種族が共存する世界。


 ここは数ある国のひとつで、よく分からない魔法の力で召喚され、お約束に二度と元の世界に帰る事は出来ないと言う。


 従姉妹と私が召喚された時、一緒に同じ世界のあちこちから召喚された人たちは三十人余り。魔法は使えないけれど、この世界の人たちと意思疎通に困らないよう言語理解が出来るようになっている(だから外国の人たちとも普通に話せた)ことと、それぞれなにかの特別な力を授かっていると言われた。

 曰く怪力だったり俊足だったり、無限の記憶力だったり様々。


 それはともかく、この世界に私たちが召喚された理由は私たちがこの世界に暮らす獣人さんの番相手だから。


 召喚された者は獣人さんにとって運命の番、大切な花嫁・花婿だという。


 獣人さんにとって、運命の番という相手は生涯に唯ひとり愛する人、大切な存在で命をかけても大事に守り抜く伴侶。


 運命の相手に出会う確率は七割を少し超えるらしいのだけれど、中にはどうしても出会えない人がいて、その方々のお相手は次元の違う世界にいると分かったのが五十年ほど前。


 それからというもの、誰かの運命の相手と分かった存在を一年に一度纏めて召喚していると聞いた。

 番召喚、と言う集団誘拐が五十年も前から行われていたことに驚きを隠せない。


 一ヶ月後に専用の離宮で私たち異世界人のお披露目会が開かれ、番を探している人たちが逢いに来るそうだ。


 大体七日、遅くても十四日以内に迎えが来て、お相手さん側に引き取られるのが一般的であるらしい。

 


 意識を失って倒れ、最初の説明会を欠席した杏奈にそう簡単に伝えると、彼女は顔を真っ青にして再び意識を失った。杏奈がベッドに居てくれて良かった、そのまま寝かせることが出来た。


 翌日からはトマス氏の宣言通り、この世界に馴染むための勉強会が開かれ、それに参加する毎日が始まった。


 この世界や国の歴史、大樹と女神様関係の神話、種族の特徴や人間との違い、貴族と庶民の生活様式とその違い、経済状況や貨幣価値などを学んだ。


 さらに、個人に女神様から授けられたであろう能力も調べた。杏奈は植物を早く元気に育てる力を得たらしい。


 私はと言うと、何度も調べたけれど分からなかった。


 女神様があなたに相応しい能力がないので、悩んでおられるうちに授け忘れたのでは? と調べてくれたエルフの血を引くとか言う、耳の少し尖った魔法使いは鼻で笑ってくれた。


 この世界でも一定数嫌な奴はいるのだ。


 魔法もない魔獣もいない人間だけの世界と、多用な種族のいるこの世界。大きな違いは勿論あるのだけれど、人間関係はそう変わらないな、としみじみと実感する。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ