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魔王は改心出来ない  作者: シンドロウ
第二章 姫巫女ラトラナンジェと女神レナトゥス
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第三話 勇者は復讐を誓った



レナトゥスは言った。ヒルシュヘルムが魔剣を用い、聖剣だけでは彼に届かないと貴方が痛感した時は――と。


予定通り、シュバルが≪不退のヴィットーリア≫だけでは、≪不跪のローデリカ≫を持つヒルシュヘルムには勝てないと身を以て思い知ったなら、その場から一同を逃がす心算だったというのが、レナトゥスの策だ。

では、逃がした後にどうする心算だったのか。その答えが、聖剣だけではの部分にあるのではないかと、シュバルは声を上げた。



「他にもあるんじゃないか!? 神具が……アイツを殺すことが出来る武器が、≪不退のヴィットーリア≫以外にも!!」


「……残念ながら、今はまだ」


「…………まだ?」



思えば、他に神具があるのなら回りくどい真似などせず、それを先に回収させていた筈だ。


レナトゥスがそうさせなかったのは、≪不跪のローデリカ≫を持つヒルシュヘルムをも圧倒する神具が、未だ存在していないことに起因していた。



「私は、再生と創造の女神。その権能を以て私は、≪不退のヴィットーリア≫と≪不跪のローデリカ≫を造りました。厄神デザストロフを討つ為に……」


「……まさか」


「そう、新たに造るのです。魔王ヒルシュヘルムを討つ為の神具……聖剣に代わる新たな武器を」



聖剣≪不退のヴィットーリア≫は失われた。だが、希望は残されている。


女神レナトゥスの権能を以て新たな神具を造ることで、勇者は息を吹き返す。今度こそ、魔王ヒルシュヘルムは討たれるのだと、レナトゥスはシュバルに強く囁く。



「勇者シュバルよ……貴方にもし、魔王ヒルシュヘルムと再び戦う意志があるのなら、神具の材料を揃え、ラトラナンジェの母国にある神殿にそれを捧げなさい。さすれば貴方に、魔王を討つ武器を授けましょう」



あの時、聖剣と共にシュバルの心は折れていた。


差し伸べた手を取りながら、心を改めたと言いながら、ヒルシュヘルムは何の罪も咎もない村人達を虐殺し、ラトラナンジェを屍霊人形にした。

とても許せる行いではない。だが、≪不退のヴィットーリア≫を失ったシュバルには、ヒルシュヘルムを処すことも、犯した過ちを償うことも出来なかった。力無き者に出来ることは、蹲り、のた打ち、己の無力さと愚かしさに苛まれ続けること。それだけだ。


だが、ヒルシュヘルムと再び戦うことが叶うなら――あの男の首を今度こそ斬り落してやることが出来るなら、立ち止まってなどいられない。



「……俺は間違っていなかったと言ってくれたな」



ふら付く足を踏み締めて、シュバルは立ち上がり、ラトラナンジェを真っ直ぐに見つめる。彼の双眸に光は無い。だが、迷いも無い。その眼差しで、レナトゥスは確信した。勇者は此処に蘇った、と。



「だけど俺は……やっぱり間違っていた」



シュバルは握ったままの短刀を腰に納めると、足元に転がっていた聖剣の柄を爪先で蹴り上げ、掴み取った。ただの一撃でへし折られ、それは剣としての役目を終えたが、シュバルはもう二度とこれを手放すまいと心に誓った。



「復讐なんて虚しいだけ……そんなのは嘘だ。俺は……今度こそ必ず、ヒルシュヘルムを殺す」



全て綺麗事に過ぎなかった。この口から出た言葉の悉くは、当事者ではない男が吐いた戯言だ。


血は、血でしか濯げない。

だから人は剣を握り続けてきたのだと、シュバルは聖剣の柄を強く握り締めた。



「教えてくれ、女神レナトゥス。アイツを殺す為に……何が必要だ」


「……貴方が魔王ヒルシュヘルムを討つ為に必要な神具は、四つ。あらゆる傷を癒す指輪≪不滅のアサネジア≫。あらゆる魔法を行使する腕輪≪不尽のペルペトゥア≫。あらゆる力を防ぐ鎧≪不変のコンスタンチェ≫。あらゆる地形に適応する外套≪不落のマリエッラ≫。これら四つの神具の製造と、≪不退のヴィットーリア≫の修繕の為、貴方には四つの材料を用意してもらいます」


「! ≪不退のヴィットーリア≫は直せるのか!?」


「刀身が残っていますので、神具製造材料の余りで繋ぐことが出来ます。四つの神具を身に着ければ、剣を交えるまでもなくヒルシュヘルムに勝利出来るでしょうが……念には念を入れておきましょう」



不幸中の幸いと言うべきか。勇者と聖剣は共に大きな傷を負うことになったが、どちらも完全に失われずに済んだ。


シュバルがヒルシュヘルムに手を差し伸べたがばかりにオロバスの惨劇は起こされたが、それがシュバルの命を救うことになった。何とも皮肉な話だと、レナトゥスはシュバルを憐れみながら、今後彼が行くべき道を指し示す。



「さて、これらを造る為に要する材料ですが……貴方はその一つを、既に持ち合わせています」


「ほ、本当か!?」


「えぇ。≪不滅のアサネジア≫……その材料は、此処に」


「…………え」

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