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ピエロのおもちゃ箱

作者: 春日陽一

ピエロのおもちゃ箱


そこは奇怪な空間


常識なんて通用しない


ルールはすべてピエロの中


歪んだ不思議な世界


世の理はすべて逆



ぴちぴちとはねる魚は木の枝に


海の底を泳ぐは鳥


翼が折れたそれは


空へと落っこちる



五十一枚のトランプ


あれ?


二枚足らないぞ


ジョーカーはハートのキングと共謀し


お星さまへと逃げってった



やさしい王様


民のためにと農作業


そんなの意味ないのに


民は優雅にティータイム



重力を反比例


機嫌良く燃えていたお日様に


ちょっかい出して


燃やされた



ドアの鍵穴を


鍵へと突き刺して


ドアを開けると


同じ場所



シワシワな赤ちゃん


ギクシャクな若者


ホワホワな老人


全ては罪深き女から始まった



綺麗に着飾った貴婦人達


鏡に映るのは


お化粧をした化け物達


皆一様にピーチク、パーチク



物語の始まりは


全て勇者の不幸から


物語の終わりは


全て魔王の悲しみから



地面の石ころは


自由に空を飛び


ゆらりと舞う葉っぱは


羨ましそうに


水面に沈んでいく



犬の一言に男は動き


猫の一言に女が動く


ねずみの一言に神が動き


猿の一言に魔王が動いた



満面の笑みで泣き叫ぶ


ママはどこ?


黒い子供たちは泣き叫ぶ


ママはそこ?



喜劇はやがて悲劇にかわり


笑い声はやがて泣き声にかわる


人々の悲鳴


動物たちの歓喜


白は黒に


黒は赤に


天は地に


地は空に


過去は明日で


未来は昨日で


見えているようで見えていない


この世の理のうらっかわ


そこの住人はただ一人


世の矛盾にひたすら笑う


奇妙なピエロ


ただ一人。






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