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転生途中で女神様を怒らせてしまい棒人間にされたけどミスって全属性扱えるようにもしてたのは内緒の話

作者: 佐武ろく
掲載日:2021/04/23

俺は高松《たかまつ》 隆史《たかし》。

健全な高校2年生だ。普段は学校に行って適当に授業を受けて放課後に最速で帰る帰宅部のエース。家ではアニメとかゲームとかまぁ色々忙しくして、それなりに悪くない人生を過ごしてる。強いて言えばこの世界が3次元って言うのが不満だな。

まぁそれはいい。むしろ3次元で生きているからこそ2次元の良さをより一層噛み締めれるってもんだ。そう考えると不満ではないな。


とにかく俺は人生を謳歌とまでは行かなくとも十分楽しんでいた。

だがそれはたった今、終わった。

休みの日と書いてきゅうじつと読む土曜日。あの漫画の新刊とあのアニメのスペシャルDVDBOXを買った俺は、気分ウキウキのウッキーお猿で家に帰ろうとしていた。だが横断歩道の信号が赤なのに気が付いたから立ち止まろうとしたその時、不覚にも躓いてしまった。しかも何もないとこで。もうそれは回避不可能じゃん。


そのままあれよあれよと道路に飛び出してしまい後は想像通り終わった。せめて可愛い女の子を助けてとかなら良かったのに。というか買ったこの漫画とアニメぐらいは見せてよ。

なんて愚痴を言う暇もなく呆気なく俺は人生に幕を閉じた。


―――はずだった。


「起きなさい」


その風のような声に俺は目を開ける。そこは広さも分からない真っ白な世界。眠い訳じゃなかったが夢見心地で不思議な感じがした。そんな状態で体を起こし辺りを見回してみるがどこまでも白が続くだけ。


「こっちですよ」


また聞こえたあの声に導かれ後ろを振り返る。俺は自分の目を疑った。

そこには玉座のような椅子に優雅に腰かける女性の姿。だがその大きさは今までに見た事ない程のものだった。


「残念ですがあなたは命を落としてしまいました。ですが―――」

「もしかして」


もちろん混乱はあった。だがこういう状況は既に見慣れている。もし俺の知識通りならこの人は。


「女神様!?」


俺の問いかけに女性は仏のような笑みを浮かべた。もし本当に女神なら神が仏のような笑みをっていいのか? まぁいいか。別に対立してるわけじゃないでしょ。


「はい。私は女神セルティア・カミュ―ダ」


すると女神は椅子から立ち上がり徐々に体を小さくしながら俺の目の前まで近づいて来た。

おぉ。どここからどう見ても女神だ。色んなアニメで見た女神だ。


「この状況で冷静を保っていられるとは中々に見どころのある人間ですね」

「まぁそうっすね。予習済みなんで」


アニメの世界と同じならこっちのもんよ。

すっかり慣れた俺は気が付けば腕を組み目の前の女神を観察するように眺めていた。女神をお目に罹れるなんて普通ならないから今の内に堪能しておこうってことさ。

だがじっくり見ているとあることに気が付いた。


「ていうかセルティアさんって思ったより...」


微笑みを浮かべながら少し首を傾げる女神は中々可愛い。だけど今の俺はこのことが残念でしかたない。


「貧乳じゃん」

「は?」

「えっ?」


今、は?って言った? そんなまさか。しかも結構低い声だったし気のせいだろう。


「いや、俺の想像してたっていうより見てきた女神様ってもっとこう」


俺は胸部分で大きさを表すジェスチャーをした。


「大きくて、飛び込みたくなるような、全てを包み込んでくれそうなものを持ってるイメージだったんだけど」


そう言いながら視線は相変わらず胸へ。


「セルティアさんのは飛び込んだら痛そうというか。随分と控えめというか。さっきは全体的に大きかったから気が付かなかっ―――」


一瞬何が起きたか分からなかったが、ゼルディアさんの手が真っすぐ伸びてきて俺の口を塞ぐように掴んでいた。しかも力強っ。


「あお、えういああん?(あの、セルティアさん)」

「こちとら好きで控えてるわけじゃねーんだよ。つーか女神をそんな目で見てんじゃねー。キモイんだよ、〇ね」


急に口悪っ。こわっ。というか。え? どゆこと? 二重人格なん? 白と黒ぐらい正反対な口調に急になるじゃん。そういうスイッチでもあるの? 押しちゃった?


「いいおういんえるあら(いや、一応死んでるから)」


セルティアさんの表情は相変わらず微笑みを浮かべていたがこれは確実に怒ってるな。むしろ微笑みが怖いまでもある。


「あぁー、もうかったりー」


天を仰ぎながら如何にもめんどくさそうに叫ぶと投げ捨てるように手を離した。そして背後に現れたさっきの椅子に倒れるように腰かける。

既にガラリとキャラは変わり最初の優し気な様子はもう欠片もなかった。

なるほど、これが本性か。女神恐るべし。


「あんたのせいでやる気なくなったからもう適当でいいよね。で、転生なんだけどどーする?」


あぁーあ。もう頬杖ついて脚組んでそもそもこっち見ないで爪見てるし。というかなんだよあの言葉遣いわ。怖さが無くなって思い出してみたらちょっと腹立ってきたな。女神のイメージが総崩れだよ。100歩譲って貧乳は仕方ない。だけど口悪すぎだろ。萎えるわぁ。


「おーい。きーてるか?」


いやだ。こんな女神に転生させられるなんて。


「チェンジで」

「は?」


俺は内に燃える欲望と言う名の炎を燃料に勢いよく指を指した。


「いやだよ。あんたみたいなのに転生させられるなんて!俺はもっとこう巨乳で優しくて女神のような、って女神か。とにかく巨乳の優しいお姉さん女神に転生させられたいんだよ!あんたみたいなのじゃなくてな」

「知らないわよ。つーか勝手に理想押し付けられても困りまーす」


爪をいじりながら適当に答えやがって。こんなの本当ならクレームものだよ?


「というかみんな似たようなもんだから。あいつらはただ盛ってるだけだから。はい。ざんねーん」

「盛るものすらないくせに」

「は?なんつった?」


やばっ。今、目を合わせたら殺される気がする。死んでるけど。


「よーし分かった」


何が分かったのかそう言うとセルティアは椅子から立ち上がり真っすぐ俺の前まで足を進めた。それを横目で確認していた俺は様子を伺いながら顔を正面に戻した。と同時にセルティアの手が伸びる。だが今度は雑に口を掴まれることはなく撫でるように優しく頬に触れた。


「仕方ない奴め。女神の本気っていうのを見せてあげる」


その声はどこか優しく色っぽい。まさか、本気ってそういうこと? マジ? それはちょっと心の準備が。というかやばっ。勝手にニヤケちゃう。

色々な期待に胸が一杯になっていると突然、目の前が真っ暗になった。何事かと吃驚はしたもののそれは一瞬で元通りになる。

視界が戻るとセルティアは目の前から消え椅子に座っていた。しかも笑ってる。というよりニヤついてる。もしかしてからかわれた?

何て女神だ。女神というより悪魔じゃん。


「いいね。良く似合ってる。ほら、あんたも見てみなさい。新しい姿を」


訳の分からないこと言いながら指を鳴らすと俺の目の前には姿見鏡が現れた。


「えっ?」


そこに映った姿に、俺は戸惑いを隠せなかった。だって。そこに映っていたのは。


「ぼう..にんげん?」


お手本のように丸い頭に一直線に引かれた四肢と胴。そしてその姿をじっくりと見る余裕がある程には遅れてきた感情が一気に俺の中を満たす。


「えええぇぇぇ!うそっ!だって。これ。棒人間...ええぇ?」


動揺が止まることを知らない。一般家庭の一日分の電力を発電できそうなぐらいには動いてるわこれ。


「いいと思うけど?」


姿見鏡は俺を映しながらも後ろのセルティアを透過させた。だからあいつがニヤついて笑ってるのが良く見える。


「何だよこれ戻せよ!」


俺は人間のまま転生したいんだ。もしくはそれに準ずる種族で行ってあわよくばきゃっはうふふとかしたいじゃん。それを期待するのも醍醐味じゃん。なのになんだよこれ。訳の分からん姿して。というかこの姿のやつ他にいるのか? こういう種族がいるのか? いないなら見た目からしてヤバいやつじゃん。嫌だよ。変な目で見られながら転生生活を送るのなんて。


「えぇー。そっちの方がイケてるけど?その何の能力もないただのちゃちな体がよく似合ってるわ。ぷぷっ」


バカにしやがって。

かくなる上は...。女神だからって容赦はしねーぞ。俺は姿見鏡の横を通りセルティアの前まで足を進めた。許さん。

そして。


「お願いします!戻してください。さっきのことも謝りますから」


これぞ大抵の要求を通す秘儀。DOGEZA。しかも俺のはもはや地面と一体化しているといっても過言でない程に頭を下げるという達人の域に達している。ここまでされればさすがに断れまい。むしろ罪悪感さえ生まれて来るだろ。


「やだ」


即答かよ。しかも言葉の前にちょっと鼻で笑いやがった。何なんだコイツ。悪魔かよ。今日から女神じゃなくて悪魔を名乗れよ。


「まぁでもー。そこまでされちゃ、さすがにねぇ」


おっ。やっぱり心が痛むか。多少なりとも善心は残ってるようだ。なら、ここでもう一押し。


「お願いします。何でもしますから」


何でもとは言ってない。ここまでがセットなのは基本だけどさすがに知るまい。

すると頭に何か押し付けるような感覚が。


「まぁ許してあげでもいいかなぁ」


こいつ。俺の頭を踏んでやがる。一部特殊スキルを持つ者にとってはヒール効果があるかもしれないが俺にとっては屈辱以外の何物でもない。というかもう悪魔通り越してもう魔王じゃん。勇者に討伐されろ。もしくはご飯食べようとして炊飯器開けたら保温押してて炊けて無かったって状況になれ。


「はぁー。でも仕方ない。あたしは優しい!からそーだな」


優しいをやたら強調したかと思うと少し黙り、その後に指のパチンという音が聞こえた。


「1億Mu《ミュール》。持ってきたら元に戻してあげる」

「1億!?」

「そう。それをこれに集めたら戻してあげる」


やっと足がどかされ代わりに俺の前に落ちてきたのはがま口財布。カエルの形をしたやつ。


「頭を撫でたら取り出す金額、お腹を撫でたら入ってる金額が表示されるから。それとそれに1億Mu貯まったらあたしに知らせが来る仕組みよ」

「1億ってそんなの稼げるわけないだろ!」

「じゃーそのままでいれば?」

「この鬼!悪魔!人でなし!」


すると半べそをかいている俺の足元に円が出現し光の柱が包体をみ込む。


「残念ながらあたしは女神でーす。じゃ、いってらっしゃーい。頑張ってー」


スッキリしたような満面の笑みを浮かべた上に優雅に手を振るセルティア。

その姿を最後に俺の意識はコンセントを抜いたテレビのように切れた。


              * * * * *


顔や体中に感じる草の感触。俺はうつ伏せで倒れてる。それに気が付いたのはその感触の少し後。

ゆっくりと目を開けながら棒だけの手で体を支え起き上がる。膝立ちの状態になた俺の目に映ったのはどこまでも続く大草原。

何も分からぬ土地のしかも人のいる場所までどれぐらい距離があるのかも分からない所に1人ぽつりと捨てられるように飛ばされていた。

訳の分からない姿にされた上にスタート地点がこんな場所。しかもMuとかいうこれまた訳の分からない通貨単位の金を1億集めなければならないという状況に思わず叫び声を上げる。


「あの女神ぃぃぃ!」


あわよくば聞こえていろと思いながら。溜まった負の感情を空に向けて思いっきり吐き出した。そのおかげか少しばかりは楽になった。気がしなくもない。

少し落ち着きを取り戻した俺は再び辺りを見回した。だけど何度見ても広すぎる草原。


「はぁー。とくにかく歩くしかねーか」


そう呟きながら立ち上がるとがま口財布を片手に歩き出した。

それからどれくらい歩いただろうか。普段、運動など全くしてこなかった俺の体力が無いせいか本当に長時間歩いたのかは分からないが足に大分、疲れが溜まっているが分かる。もう歩きたくない程に。こういう時、よく足が棒になるとは言うが本当に棒になっているのは人類史上俺1人だけだろう。そう思うとどこか誇らしくも感じる。まぁ実際には元から棒なんだが。


「少し休憩するか」


どこか休憩できそうな場所はないか辺りを見回していると後からガサゴソと音が聞こえた。その音に反応して振り向いてみると、そこには犬っぽい何かが3匹。

頭に1本の角を生やし牙を剥き出しにした口から涎を垂らしてる。とりあえず敵意だけは伝わるな。多分、モンスターとかそういう類だと思う。

でも問題はこれが何かよりどう逃げるか。武器どころかがま口財布しかもっていない状態じゃスライムにも勝てる気がしない。だからとりあえず今は逃げることを優先しよう。

だけどそんなことを考えていると先頭の1匹が急に走り出した。一気に間合いを詰めて俺目掛け飛び掛かる。


「うわっ!」


咄嗟に両腕を顔の前で交差させる。2本の棒で身を守ろうとするが心もとなさ過ぎて腰は引け、体は後ろへ倒れていった。そのまま尻餅を着くがその痛みより襲い掛かるモンスターが気になって仕方ない。だけど魔物はもう目と鼻の先まで来ていた。


―――避けられない? 俺の転生生活は訳の分からない女神の所為でこんな場所に放り出されただ歩いて疲れただけで終わるのか? しかもこんな雑魚中の雑魚っぽいモンスターにやられて。


そんなのは嫌だ。だけど今の俺にはどうすることもできない。結局、転生したとこでアニメと違ってダメな奴はダメってことか。


「くそっ」


諦めるように呟いた。その時。辺りが一瞬強い光に包まれたかと思うと空から1本の雷がモンスターへ降り注いだ。黄色い雷はモンスターの体を発光させるように全身に纏うとあっという間に真っ黒に染め上げる。こんがりを通り越し黒コゲになったモンスターは体中から煙を立ち昇らせながら地面にぼとりと落ちた。


―――助かった?


そのモンスターを見ながら唖然としていた俺はまだ状況が理解出来ずぼそりと声にすらしないで呟いた。そして必死に状況を理解しようと回転していない頭を無理矢理稼働させる。


―――もしかして新手?


それは雷の出所を考えると自然に思い浮かぶ可能性の1つ。


―――もしかしてヒロインとの出会い?


それは数々のアニメを見た俺の願望とも言うべき可能性の1つ。

俺はとにかく周りに人影が無いか確かめてみるが人っ子一人居なかった。


―――それじゃあこの雷はどこから?


絶えず溢れ出す疑問。だけどその疑問にあまり付き合ってられないのはまだ奥で俺を威嚇する2匹のモンスターを見れば一目瞭然。こいつらに仲間意識とかがあるのならあの2匹は俺を殺すことに闘志を燃やしているはず。なら一刻でも早くここから逃げ出さないと。


俺は2匹から目を離さぬままとりあえず立ち上がった。先ほどの落雷は俺がしたと思ってるんだろう。2匹は牙を剥き出しに唸るが警戒して動きはしない。でもこの状況で動けないのは俺も一緒。逃げ出そうとすれば襲い掛かってきそうな気がして動けない。クラスの中でさえ足は遅い方だったのに犬になんて速攻で追いつかれるに決まってる。


「はぁ、俺にもあんな魔法が使えれば。せめて何か武器があれば。女神があんなんじゃなければ」


こんな状況なのにここじゃないどこかの世界線をただ羨んでしまう。そこは転生したとて変わってないらしい。


「でも魔法か。確か誰かが魔法はイメージだって言ってたっけ」


多分、強い憧れがそうさせたのだろう。子どもがヒーローの変身を真似するのと同じで。

俺は視線は相変わらず2匹に向けながら片手を胸辺りまで上げると頭で炎をイメージした。火の玉のような燃え盛る球体を。自分の掌で燃える火球を出来るだけ鮮明に想像する。


「いや、無理か」


そうため息交じりで呟いたその時。手がほんのり温かくなり、視界の端で赤いようなオレンジのようなモノがゆらゆらとうねり揺れているのが見えた。俺は思わず2匹から視線を離し手に顔を向ける。そこにはイメージ通りの火球が燃え盛っていた。


「うそ...」


まさか本当に出来るとは思っていなかったせいで思わず動揺してしまった。

だがすぐにモンスターのことを思い出し視線を戻す。モンスターは視線が外れたことを好機だと思ったのだろうすでにそんな俺目掛け走り出していた。

その姿を確認すると俺は手中にある火球がどれほどの威力か本当に魔法なのかなど全く分からなったが半ば投げやりで投げつけた。手から離れた火球は真っすぐ飛んでいくと2匹の内の1匹に見事命中。コントロールのせいで外れたらと心配していたがそれは心配で終わった。

先程の雷同様に一瞬にしてモンスターの体を包み込んだ炎。だが今度は黒コゲでは済まされず灰となって草々に降りかけられた。


「おお!」


思わず歓喜の声が零れる。だがモンスターはあと1匹。しかももう既に地から飛び立ち俺に飛び掛かっていた。まだあの炎を瞬時に出せる気はしない俺は必死になってその攻撃を躱す。アニメや漫画で見るような華麗な躱し方ではなかったが命が助かるのならどうでもいい。それに見てる人もいないし。


再びモンスターと距離を取ることに成功するとまた襲い掛かられる前にもう一度火球をイメージする。すると今度は先程よりもスムーズに火球が現れた。

俺は魔法が使える。そのことを確信するとまるで最強にでもなったかのように自信に満ち溢た。ニヤケずにはいられない。


「さぁ来い!俺が雑魚Aみたいなお前に負ける訳ないだろ!」


言葉は通じていないだろうがどこか怒りに満ちた唸り声を上げるモンスター。


「今更そんな声を出したところで怖いわけ...」


眉間に寄った深い皺。ヤンキーが眼を付けるように鋭い目。剥き出しの牙。


「いや、やっぱこえーな」


そんな俺の恐怖心を感じ取ったのかモンスターは勢いよく走り出しワンパターンの飛び掛かりを見せた。ちょっと。ほんのちょっとビビ...。油断してた俺の眼前まであっという間に迫ったモンスター。顎が外れそうな程に口を大きく開き唾が線を引いている。

そんなモンスターへ俺は若干焦りながらも火球を直接ぶつけようと手を伸ばす。その姿はさながら某漫画の螺〇丸を片手に突っ込む主人公。

そして俺はごうごうと燃える火球を牙が届くより先にその横顔へ殴るように押し付けた。


                * * * * *


転生生活最初の危機を何とか乗り越えた俺は大きな発見に胸を躍らせていた。俺は魔法が使える。そのことに興奮しないわけがない。夢にまで見た魔法。

早速、色々と試してみることにした。どんなことが出来るのか手探りで調べるのは今後にも繋がってくるはず。

そう思いモンスターの骸が転がる傍で時間をかけて色々試してみた。結果、分かったことは火以外にも色々と使えるということ。

これで全部かどうかは分からないが使える属性は火、水、氷、風、土、木。そしてそこから更にどういう風にその属性を扱うかと枝分かれしていく。それは何か決まった技的な何かがあるのか本人の想像力に委ねられるのかは分からない。そしてこれがすごいのか魔法の威力がどうなのかとかは比べる人がいないからもちろん不明。

でもとにかく身を守れる術を持っていることにホッとした。


「あの女神、俺が死ぬなんて知ったこっちゃない。むしろ死ね。みたない感じだったのになんだかんだ気にかけてくれてんじゃん。さてはツンデレか? そう考えるとちょっと可愛いな」


少しだけセルティアのことを見直した。だけどやっぱりこんな姿にしてこんなとこに放り出したことは許すまじ。


「とりあえずはやっぱ情報とか必要だし人のいる町とか目指して移動するか。はぁー」


もしかしたらあと何時間も歩くかもと考えてしまい既に疲れた。


「いや、もしかしたら何時間どころか何日かも...」


想像すらしたくない。こういう時にDエモンのDこでもDアがあれば。

口から出て来るのはもしとため息ばかり。だけどいつまでもこうしてては何も始まらない。


「よし!とりあえず歩いて道でも探そう」


俺は丸い顔を棒で叩き気合いを入れると1歩目を踏み出した。


                * * * * *


こうして高松 隆史の転生生活は幕を開けた。

これから先に待ち受けることを想像し彼の胸は期待で一杯になっていた。まだ見ぬ魔法や美女。様々な種族や美女。想像の存在でしかなかったモンスターや美女。あとは美味しい食べ物や美女とか美女とか。

だが待ち構えている出来事が楽しいものばかりでないことをまだ彼は知らない。


そして人を求め歩き出した彼がこの世界の人間とファーストコンタクトするのも、名前を聞かれた際にかっこつけて『高松 隆史』ではなく『アーサー』と名乗るのもまだまだ先の話だった。

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