第56話 体育祭閉幕
2章完結!
俺が出場する予定だった競技がすべて終わった。あとは他の競技を見ながら応援するだけとなった。そのあとも特に問題なく進んでいく。
そしてそのまま体育祭最後の競技が終わり子の体育祭は無事に終わりを迎えた。
ちなみに余談だが、生徒会とした出場することになってしまった男女混合の二人三脚は惜しくも二位という結果となってしまった。見事優勝に輝いたのは成瀬と白雪さんのペアだ。
息ぴったりの二人は他の出場者の追随を許さずそのままゴールした。二人の相性の良さが分かる圧巻の走りだった。俺と結依も頑張ったがあと少しのところで負けてしまった。
この男女混合二人三脚は今回の体育祭で初めて採用され、エキシビションという形だったからか今一つ盛り上がらなかった。それどころか背筋がぞわっとするほどの鋭い視線が向けられて怖いと感じてしまうほどだった。この中を走り抜けられれば二人の絆も鍛えられるような気がしてしまった。
なんとなくだがこの男女混合二人三脚は今回で最初で最後になるような気がする。
今日のすべての日程が終了し片付けを行う。準備は体育祭実行委員がほとんど行ったが片付けはみんなで行うのだ。
体育祭実行委員の指示に従ってみんなで手分けをしてどんどん片付けていく。人手が多いので片付けはすぐに終わらせることが出来た。片付けが終わり俺たちは解散前に一度教室に集まっていた。
前には結依が立っている。
「皆さん、お疲れ様でした! みなさんのおかげで無事に体育祭を終えることが出来ました。そして、一組は見事学年優勝です!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」
クラスから喜びの声が上がる。立ち上がりガッツポーズをしている人もいればハイタッチをしている人、近くの人と笑い合い喜びを分かちあっている人もいる。
俺たちのクラスはほとんどすべての競技で好成績を収めることが出来た。これはみんなの頑張りが報われたということだろう。
「それではみなさん、お疲れさまでした!」
結依の締めのあいさつでこの体育祭は幕を閉じた。
みんなは家に帰っていったが俺と結依は生徒会室へと向かっていた。
「雪君、体育祭はどうでしたか?」
そんな結依の言葉を聞いて今回の事を振り返る。生徒会のお手伝いするというところから始まった今回の体育祭。結依や光をはじめとした生徒会のメンバーとの交流や協力して作業をしたこと。偶然の再会を果たした陽菜ちゃん。この再会も体育祭の準備を生徒会のメンバーとして参加していたからこそだ。それに今回の体育祭を通してまた話すようになったこともうれしい。
それだけではない。みんなと一緒に競技の練習をしたこともとても楽しかった。転校してきたばかりで話す機会がなかなかなかった人たちとも今回の練習を通して話せたし、仲良くなることが出来た。本番もリレーではみんなと力を合わせた結果一位を取ることが出来たし、騎馬戦では惜しくも優勝することはできなかったがとても楽しかった。準備から本番まであっという間に過ぎ去ってしまったが、それだけ充実して楽しい日々だった。少し前までのバイトばかりの生活では考えられない。
「本当に楽しかった。終わっちゃうのが少し寂しいくらいだ」
「そうですね。私もとっても楽しかったです!」
そう言って笑う結依。俺もつられて自然の笑顔にある。
体育祭の終わりを改めて感じていると生徒会室に到着した。
「入りましょうか」
結依に続いて生徒会室に入る。すでに俺たち以外の生徒会メンバーが集まっている。光がこちらに向かって小さく手を振っている。
開いている席に座る姫華さんが口を開く。
「みなさんお疲れさまでした。無事に体育祭を終えることが出来たのは皆さんの協力があってこそです。ありがとうございました。」
「いえ、こちらこそ生徒会長には感謝しています。ありがとうございます。」
姫華さんの言葉に対して答える結依。俺たちも結依と同じ気持ちだ。生徒会長として頑張ってくれていた姫華さんには感謝している。
そんなことを思っていると姫華さんの視線がこちらに向けられる。
「雪哉君もお手伝いありがとうございました。体育祭はどうでしたか?」
「とてもいい思い出になりました。それに、一時的でしたけどこうやって皆さんと一緒に活動出来てよかったです」
「私たちとしても本当に助かりました。ありがとうございました。」
そう言って頭を下げる姫華さん。俺も慌てて頭を下げる。
「い、いえ、こちらこそありがとうございました」
体育祭期間中までお手伝いをするという話だったので、こうやって言われると終わるんだと思いなんだか寂しくなってしまう。
「皆さんも疲れていると思いますので、最後に報告をしてお開きにいようと思います」
「報告?」
つぶやくように言う光。姫華さんの報告という言葉に思い当たる事がなく困惑してしまう。どうやら疑問に思っているのは俺だけではないようだ。
「報告? そんな話私は知らないわよ?」
同じ三年生で生徒会副会長である白雪さんで知らないのなら姫華さん以外の生徒会メンバーはだれも知らなあだろう。
「せっかくですからサプライズということで」
そういたずらっぽく言う姫華さん。その表情はいつもより子供っぽく見える。
「そろそろ来るはずなんですけど」
そんなつぶやきと同時に生徒会室のドアがノックさせる。
「来ましたね。どうぞ」
「失礼します」
そう言ってドアが開き一人の女子生徒が入ってくる。
「よく来てくれました。花咲 陽菜さん」
予想外の人物の登場に思わず目を見開く。少し恥ずかしそうにしている陽菜ちゃんはそのまま生徒会室の中へ入ってくる。
「皆さんに報告というのはここにいる花咲さんを新たな生徒会メンバーとして迎えることになりました」
「え!?」
光が驚きの声を上げる。
「生徒会の書記が光君一人だけで足りない状態です」
たしか俺が初めてここに来た時にそんなことを言っていた。それで人手が足りないということで今回の体育祭で俺が臨時メンバーとして手伝うことになったのだ。
「体育祭を通して彼女にはとても助けられました。能力も高く生徒会に是非入ってほしと思いお願いしたところ快く引き受けてくださいました」
たしかに陽菜ちゃんはとても頑張っていたし、いろいろと助けてもらった。生徒会に入るには賛成だ。
「花咲さん、皆さんに挨拶をお願いします」
「はい! えっと……花咲 陽菜です。この度生徒会に入ることになりました。よろしくお願いします!」
勢いよく頭を下げる。そんな陽菜ちゃん挨拶が終わるとみんなか歓迎の拍手が起きる。体育祭の準備期間を通して生徒会と体育祭実行委員として協力してきたこともあり、みんな陽菜ちゃんの能力を知っているのだろう。否定的な人はいなかった。
「すごいよ、学校の聖女様全員が生徒会だなんて」
小さい声で言う光。言われて気が付いたがこれはなかなかすごいことなのでは?
「花咲さんには生徒会書記をお願いします。光君、先輩としてよろしくお願いしますね」
「はい! よろしくね、陽菜ちゃん!」
「よ、よろしくお願いします」
弾んだ声で言う光。同じ書記として後輩が入ってきて嬉しいのだろう。
そんな様子を見て余計に寂しさを感じてしまう。結依に光、新たに生徒会メンバーとなった陽菜ちゃん。俺以外のみんなはこれから生徒会メンバーとして活動していくのだ。なんだか疎外感を感じてしまう。
そんなことを思っていると姫華さんに名前を呼ばれる。
「雪哉君」
「!? なんでしょうか?」
「雪哉君は今日までのお手伝いという話でしたが、もしよろしければ今後も私たちのお手伝いをしていただけないでしょうか?」
「お手伝いですか?」
「はい、雪哉君には生徒会補佐として今後人手が欲しいときに助けてほしいのです。もちろん生徒会室なども自由に使ってもらって構いません。いかがでしょうか?」
姫華さんの話を言いて思わずほほが緩みそうになってしまう。こんなにうれしい提案はない。みんなとまた一緒に活動出来るだけでうれしいのだ。答えなんて決まっている。
「引き受けます。こちらこそよろしくお願いします!」
「ありがとうございます! そう言ってもらえてよかったです」
今日で終わりだと思っていたのでうれしさが込み上げてくる。
「やった! また雪哉君と一緒だね」
そう言ってキラキラした笑顔で言ってくる光。
「あぁ、よろしくな」
「うん!」
「よかったですね」
結依もうれしそうにしている。だけどその表情は光とは少し違う気がする。もしかしたら俺が寂しさを感じていたことに気が付いていたのかもしれない。そう思ったらなんだか恥ずかしくなってきてしまう。
とても楽しい期間だった。きっとこれからも楽しいことがあるに違いない。
体育祭が終われば次は夏休みだ。バイトに追われない夏休みは初めてなのでわくわくが止まらない。これから待っているであろう楽しい日々に胸が高鳴るのを感じずにはいられなかった。
これにて2章完結となります!
お付き合いくださりありがとうございました。楽しんでいただけたら幸いです!
これから書籍第2巻に向けての作業があったり、3章の執筆を全く行っていないということもありしばらく更新はお休みです。
出来るだけすぐに再開できるように頑張ります!
これからも作者共々この作品の応援をよろしくお願いします!
 




