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第54話 騎馬戦(予選)

 体育祭も順調に進行していきいよいよ出場する二種目目である騎馬戦が始まろうとしていた。

 リレーの時と同様に待機所で順番を待つ。前の競技が終わりそろそろ俺たちの番だ。

 騎馬戦は予選と本選の二回が行われる。予選は全部で6クラスあるうち3クラスずつ試合を行い決勝に向かう2クラスを決めるのだ。各クラス騎馬を3つずつ用意するため6クラス一斉に試合するには難しくこういう形になっているのだ。


「次の競技に参加する人は準備をお願いします」


 移動のアナウンスが聞こえてきた。


「よし、行こうか」


 騎馬戦の練習でリーダーをしていた剛田が言う。

 運営の指示に従って移動を開始する。俺たちのクラスは最初に予選に出るのでさっそく中村達と騎馬を組む。


「絶対勝とうね」


「そうだな」


「あぁ」


 笹野の言葉に俺と成瀬が答える。中村は何も言っていないがもくもくと準備をしている。中村が頭に鉢巻を巻き終えたところで騎馬を組む。そしてその上に中村がのり準備が完了した。

 周りを見れば他の出場する生徒たちも準備が終わっていた。少し待つとアナウンスが聞こえる。


「予選第1回戦を開始します」


 その言葉を聞くと同時に俺たちは立ち上がる。中村の体重が腕にかかる。


「作戦通りに行くぞ」


 俺たちの斜め後ろから剛田の声が聞こえる。

 作戦はまず俺たちが相手の騎馬に向かって一直線で向かっていき相手の注意引き付ける。そしてその間に他のメンバーが相手の鉢巻を奪い取るというものだ。


「位置について、よーい」


 パンッ


 開始の合図がなる。


「行こう!」


 笹野の言葉と同時に俺たちは目絵の前のクラスに向かって勢いよく動きだす。


「おい! 1組がこっちに向かってきているぞ!」


「一騎だけだ! こっちは数で押すぞ!」


 俺たちの動きに誘われて2つの騎馬がこちらに向かってきた。俺たちはその騎馬に向かってスピードを上げて突っ込む。中村が軽いから出せるスピードを利用する。そしてそのまま相手に向か会って走りそのままその間を素通りする。


「なっ!?」


「おい、後ろだ!」


 俺たちの予想外の動きに動揺する。慌ててこちらを追って来ようとするが、小回りが利かないためバランスを崩してしまっている。動きが鈍ったタイミングで後ろにいた他の騎馬が相手の騎馬が相手の鉢巻を奪い取った。


「しまった!!」


「よし!まずは2つだ!」


 俺たちが突っ込んできたことに意識を奪われて後ろにいた騎馬に気が付いていなかったようだ。


「作戦成功だな」


「だな」


 俺たちはすぐに集まり孤立してしまわないように注意する。俺たちのクラスの騎馬はまだ一つも鉢巻は取られていなく、まだ3騎とも残っている。

 周りの状況を確認する。いま2つの鉢巻を奪ったクラスのもう一つの騎馬は他のクラスの騎馬と奪い合ったのかすでに鉢巻は取られてしまっている。ただ、その手には相手のクラスの鉢巻が握られていた。

 残っているのは俺たちのクラスの騎馬が3つと相手クラスの騎馬が2つだけだ。


「よし、相手は残り二つだ。数でこっちが有利だから落ち着いていくぞ!」


 剛田の指示で俺たちはまとまって動く。俺たちの騎馬が少し前に出て相手に向かって動き出す。

 相手クラスもこちらに向かってきた。俺たちはこういったときに考えていた作戦通り右側にいる騎馬を狙う。スピードを上げて近づいていく。


「来たぞ!」


「絶対に取られるな!」


 俺たちはまっすぐ向かっていき、そしてあいての騎馬が手の届く距離まで近づき中村が鉢巻を奪うべく手を伸ばした。相手も抵抗するためこちらの鉢巻を奪おうとしてくる。その手を避けようと中村が大きく動く。騎馬をしている俺たちに大きく体重がかかり腕が痛い。バランスを崩して騎馬が壊れてしまわないように必死に堪える。


「いまだ!」


 剛田の声が聞こえたと思ったら、味方の騎馬が横からあらわれ奪い合いに参加する。


「取った!」


 剛田の騎馬の上に載っていた男子生徒の声が聞こえる。その手には相手の鉢巻が握られている。


「ナイス!」


 俺たち急いで態勢を立て直す。後ろでは1組の騎馬と相手の騎馬が争っておりちょうどこちらの鉢巻が奪われるところだった。


「挟み撃ちにするぞ」


 剛田の掛け声を聞いてすぐさま指示に従って動き出す。

 相手もこちらの様子を窺いながら距離を取ろうとする。ゆっくりと距離を詰めていきそして俺たちは数の有利を使って最後の最後の騎馬から鉢巻を奪いとることが出来た。1組は決勝へと駒を進めた。


 もう一つの予選も終わり俺たちの相手は3組に決定した。そしてその相手の中には光の姿があった。


「なんで相手チームに女子が出ているんだ!?」


 突如大きな声を上げて言う中村。そんなな赤村の疑問に対して笹野が答える。


「天海くんは女の子じゃなくて男の子だよ」


「はぁ!? あれが男!? どこからどう見ても女子じゃないか!」


 中村の大きな声に驚いてしまい何のことを言っているのか分からなかったが、二人の会話を聞いてようやく理解する。


「そんなこと言ったって……天海君は男子の制服を着て学校にいるじゃん」


「知らない……制服が間違っているんじゃないか?」


 そんなことを言う中村。正直その意見は分からなくはない。俺だって頭ではわかっているつもりでもふとした瞬間混乱してしまうことがあるのだ。それに初対面のころは女子と間違えたのだから何も言えない。


「はぁっ……はぁっ……」


 大きな声を出したからか、中村の息が切れている。


「もういい、準備するぞ」


 そう言って中村は準備を始めてしまった。

 俺と成瀬は顔を見合わせ思わず苦笑いをする。


「おい、そっちも笑ってないで早くしろ」


「はいはい」


「わかったよ」


 中村に言われて終えたちも準備を始める。


「騎馬戦決勝戦を開始します」


 もうすぐで開始の合図だ。俺たちは立ち上がり陣形を組む。俺たちの騎馬が先頭に立ち残りの2つの騎馬は左右後方に立つ。


「決勝戦だ。みんなで勝つぞ!」


「「おう!」」


 俺たちの斜め後ろから剛田の声にこたえる。


「位置について、よーい」


 パンッ


 騎馬戦の決勝戦が始まった。

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