第50話 備品のチェックとお決まりのハプニング
体育祭当日が近づくにつれてどんどんい忙しくなってきている。参加する競技の練習がある日にはそちらの方に行き、練習がない日は生徒会の方で仕事がある。そんな忙しい日々を送っていると時間は瞬く間に過ぎて行った。気が付けが体育祭本番まであと数日となっており、準備も大詰めを迎えていた。
「結依さんと雪哉君、体育祭実行委員の人と一緒に備品の最終チェックに行ってください」
そんな姫華さんの指示が飛ぶ。ちょうど区切りがよかった俺はすぐに返事を返す。
「わかりました」
結依と共に備品のチェックに向かう。その途中で体育祭実行委員の人と合流する。
「あっ! お兄さんと結依先輩! お疲れ様です」
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
俺たちはそれぞれ挨拶を返す。
「陽菜ちゃんだけですか?」
いつの間にか結依は陽菜ちゃんのことを下の名前で呼ぶようになっているし、陽菜ちゃんの方も結依のことを下の名前で先輩付で呼んでいる。最初会ったときの不穏な感じはない。この体育祭の準備期間で一緒に活動することがあり、そのおかげでかなり仲良くなったようだ。
「はい、ほかの人はちょうど手が離せないみたいです」
「そうですか、それなら始めちゃいましょうか」
「はい」
俺たちは備品が置かれているところへと向かいチェックを始める。競技に使うものから当日立てるテントなどもだ。
「えーと……」
必要数が書かれている資料を見ながら数がそろっているのか確認をしていく。一通り確認を終えたところで二人の声が聞こえてきた。
「きゃーーっ」
悲鳴に驚き急いで声のした方へと向かう。
「だいじょ、っ!?」
二人の姿を見て思わず言葉に詰まる。仰向けに倒れこんでいる結依に覆いかぶさるように陽菜ちゃんが倒れこんでいる。さらにどういうわけか二人にはネットが絡んでおり身動きが取れなくなっている。
「……なにやっているんだ」
「少し整理しようとしたら失敗してしまって、上からネットが……」
「ものが落ちそうになるのが見えてとっさに助けようとしたんですけど絡まってしまいました」
視線を逸らしながら二人の話を聞く。その声には恥ずかしさが感じ取られ少し弱々しく聞こえる。
「わかった。今助ける」
「ありがとうございます」
「すみません」
「なるべく見ないようにするから」
「「え?」」
二人の疑問の声が重なる。どうやら今の自分たちの姿がどのようになっているのか分かったいないようだ。
態勢もなかなかにすごいことになっているが、それ以上に問題なのは服の方だ。何とか抜け出そうと思って動いたのか服が乱れている。結依の方はジャージのTシャツがめくれ上がっておりおなかが大きくあらわになっている。陽菜ちゃんの方は結依ほどではないが背中が見えている。さらには、からまったネットのせいでズボンが引っ張られておりお尻の形が強調されてしまっている。
そんな二人が自分たちの状態を確認する。そしてーー
「きゃーーーーーーーーっっ!!」
「っ!? こっち見ないでください!」
陽菜ちゃんが悲鳴を上げ、結依が顔話赤くしながら言う。
「見てない、見てないからっ! 動かないでくれ!」
二人は何とかしようと体を動かすがどんどん悪化していく。
俺は必死に落ち着くように二人に呼びかけようやく落ち着きを取り戻してくれたところで言う。
「なるべく見ないようにするから少し我慢してくれ」
「はい……」
「お願いします……」
二人の近くに腰を下ろしほどいていく。さっき暴れたせいで余計に絡まってしまっている。少しずつ進めていくと途中で結依の体に手が当たってしまった。
「っん」
「わ、悪い」
結依の声に驚き反射的に謝る。
「いえ、少し冷たかっただけなので……」
何とも言えない気持ちになりながら続ける。
「あの……お兄さん、そんなにお尻を見られると恥ずかしいです」
「誤解だ! ほどくために仕方ないことでっ」
そんなことを繰り返しながらようやくほどき終えた。
「ありがとうございました」
「……ぁ,ありがとうございます
結依は顔を赤くしがら言い、陽菜ちゃんは俯きながらなんとか聞き取れるような声量でお礼を言う。顔はよく見えないが、耳が真っ赤になっているのが見える。
「いや、二人が無事でよかった」
二人の恥ずかしい気持ちがこちらにまで伝わってくるようだ。ちょっとした確認作業だったはずがなんだか一気につかれたように感じる。何とも言えない空気を振り払うため本来の目的に話を変える。
「こっちの確認作業は終わったけどそっちはどうだった?」
「はい、こちらも問題ありませんでした」
「そしたら報告するために生徒会室に戻ろうか」
「そうですね」
ちょっとしたハプニングがあったが、本来の目的を済ませた俺たちはこの場を後にした。




