第48話 初めましての2人
久しぶりの更新となります。二章終了までは更新できると思いますのでよろしくお願いします!
今日は俺が参加する競技の練習はないため生徒会室の方で仕事をしていた。結依はクラスの練習の様子を見てから遅れてくると言っていた。ほかの生徒会メンバーもそれぞれ練習があるのかほとんどいない。今ここにいるのは俺と光、そして姫華さんの三人だけだ。白雪さんもさっきまでいたが、何かメッセージを受け取ったのかすごく真剣な表情で出て行ってしまった。少し怖くらいだと思ったのは心の底にしまっておく。
俺と光は全校生徒分の競技参加者の名簿の作成を行っていた。これは当日、体育祭実行委員が進行をスムーズに行うために必要なことだ。
「そっちはどんな感じ?」
一緒に作業をしていた光が聞いてくる。
「うーん、まだかかりそうだ」
「了解、こっちも似たような感じ」
なんだかんだかなりの量があるため結構時間がかかってしまう。すぐに終わらせないといけないものってわけではないが、早く終わらせることに越したことはない。
作業を再開すると生徒会室のドアがノックされる。
「はい、どうぞ」
姫華さんの言葉でドアが開けられる。
「失礼します。この前いただいた資料のことで質問が……」
「陽菜ちゃん?」
「お兄さん!?」
生徒会室の用があって来たのは先日再会したばかりの陽菜ちゃんだった。陽菜ちゃんはこちらを見るなり大きく目を見開く。俺がいると思っていなかったのか驚いている。
「お疲れ」
「お、お疲れ様です」
「生徒会長に用事?」
「はい」
「どうしましたか?」
陽菜ちゃんは俺の横を通り抜けると姫華さんのもとまで行く。その手にはこの前渡した資料がありそれを見せながら質問している。
「ここなんですけどーー」
そんな様子を見ていると隣から肩をつつかれる。
「彼女が一年の聖女様でしょ? 僕初めて見たよ!」
小声ながらテンションが上がっていることが分かる。
「そうらしいな」
「みんなの言う通りギャルっぽい?」
「まぁ……結依や姫華さんとは雰囲気が違うのは確かだな」
「すごいね、何というか雰囲気が陽キャって感じだよ!」
なんとなくだが光の言うこともわかる。
「しかもすっごく可愛いし。話題になるのもわかるなぁ」
納得したようにうんうんと頷いている。
「わかりました。ありがとうございます」
問題が解決したのかお礼を言って姫華さんのもとから離れる。そして帰り際にこちらに話しかけてくる。
「お兄さんは何しているんですか?」
作業の内容を言う。
「それって結構大変じゃないんですか?」
「まだまだ時間はかかりそうだな。でも、すぐに終わらせないといけないわけでもないし」
「そうですか……」
何かを考えこむような様子の陽菜ちゃん。そんな姿を不思議に思っていると、陽菜ちゃんが口を開く。
「それって私も手伝ってもいいですか?」
「え?」
思いもよらない提案に驚く。
「体育祭実行委員の仕事があるんじゃないのか?」
「ありますけど、まだ余裕があるので」
「競技の練習もあるだろ?」
「そっちも大丈夫です」
「うーん……」
手伝ってもらえるのはありがたいが、陽菜ちゃんがわざわざ手伝うことでもないような気がする。
「お願いします! 邪魔にならないようにしますから!」
どういうわけか引き下がろうとしない陽菜ちゃんにどうしてら良いのか分からなくなってしまった。俺が決めていいことではないような気がするし……
そんなことを考えていると姫華さんが話に入ってくる。
「せっかくですからお手伝いしてもらったら良いんじゃないですか?」
そんなことを言う姫華さん。
「今日は生徒会メンバーも少ないわけですから、今だけでも手伝ってもらうのはいかがでしょうか?」
「姫華さんが良いって言うなら……」
「ありがとうございます!」
許可が出たことで満面の笑みでお礼を言う陽菜ちゃん。
「それじゃあさっそく」
そういって椅子を持ってくると俺の隣に座る。座るのは良いんだが……
「……近くないか?」
「そうですか?」
作業がしづらいというわけではないが、肩が触れそうな距離感だ。
「そんなことより作業内容を教えてくださいよ。私こういう作業は得意ですから!」
ひとまず今やっている作業について教える。俺の説明が終わるまでし真剣な表情で聞いていた。
「なるほど……わかりました」
そういって陽菜ちゃんは作業を開始する。得意だっと言っていた言葉通りかなりいいペース進めていく。
「ギャルって色々すごい」
そんな陽菜ちゃんを見ていてつぶやくように言う光。陽菜ちゃんはかなり集中しているのか光の言葉は聞こえていなかったようだ。
「とりあえずここまでできました。確認をお願いします」
「もうできたのか?」
渡されたものを光と共に確認する。
「すごい……出来てる……」
光が驚きの声を上げる。
「本当にすごいな……こんなに早くできるなんて……」
「こういった作業を任せられることが多かったので! これで役に立つってわかってもらえましたか?」
「あぁ、手伝ってくれるなら助かるよ」
「はい! 任せてください!」
陽菜ちゃんを加えた三人で作業を進めていく。一人増えただけだが、体感二倍くらいのペースで進んでいるような気がする。それだけ陽菜ちゃんの影響が大きいということだろう。
しばらく作業をしていると生徒会室のドアが開き結依が入ってくる。
「すみません! 遅れました。雪君に光君、私もお手伝いを……」
結依がこちらを見て固まる。
どうしたのだろうか?
固まってしまっている結依に声をかける。
「大丈夫か?」
「っ! 雪君! いったい何しているんですか!?」
「なにって……生徒会の仕事だけど……」
「違います! それです! それ!」
そういって指をさす先には陽菜ちゃんがいる。
「そんなに近づいて! しかも手! お膝の上に手が乗っています!」
結依に言われて今の状態を確認する。ある程度でき出来上がった資料を三人で確認していたのだ。一つを三人で見ることになるので確かに距離は近くなっている。そして意識していなかったが陽菜ちゃんがのぞき込むように資料を見ていたので寄りかかるように俺の膝の所に手を置いていた。
「かわいい子たちに囲まれて!」
明らかに陽菜ちゃんだけではなく光も含んでいるであろう言い回しに光が小さく抗議する。
「かわいい子たちって……僕、男なんだけど……」
光の言葉など聞こえていないのか陽菜ちゃんに離れるように言う。
「近いです! 少し離れてください! 女の子がそんな簡単に……ダメです!」
「えー、簡単にじゃないです。それに私とお兄さんの仲ですから」
結依に言われて離れるどころかさらに距離が近くなっているような……陽菜ちゃんってこんな感じの子だったか?
ギャルってすごいな。
以前の陽菜ちゃんとの変化に感心してしまう。きっとこの変化も陽菜ちゃんの努力の結果なのかもしれない。その証拠に耳が真っ赤になっている。無理している証拠だ。そんなことを思っていると結依の標的が俺に向く。
「雪君もいつまでもそうしてないで何か言ってください!」
「わ、わかった。陽菜ちゃん、少し離れてくれ」
「はい……お兄さんが言うなら……」
言う通り離れてくれてほっと息を吐く。
だがどういうわけか結依と陽菜ちゃんが視線で牽制しあっているように見える。
先に言葉を発したのは結依だ。
「挨拶がまだでしたね。私は姫野結依です。私の雪君がお世話になったみたいで、よろしくお願いします」
「こちらこそ、お兄さんとは昔から仲良くさせてもらっています。花咲陽菜です。よろしくお願いします」
そういって握手を交わす二人。二人とも笑顔だがまったく穏やかそうに感じないのは一定なぜなのだろうか。
視線を動かすと、なんだかわくわくした表情の光と優しそうに状況を見守っている姫華さんの姿が目に入る。
俺はこの空気感から逃げるように資料に視線を落とした。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
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