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第47話  練習開始

今年もありがとうございました。今年最後の更新となります。

 体育祭当日が近づいてきて、本格的に競技の練習が始まった。各学年各クラスがそれぞれ練習に取り組む。グラウンドや体育館など練習場所がクラスごとに割り振られている。そしてその場所はある程度公平性を出すために日ごとに変わったりするのだ。今日の俺たちのクラスはグラウンドの一角が割り振られていた。周りを見ればほかのクラスも練習している。


「皆さん聞いてください!」


 結依が大きな声を出す。


「今日の練習はリレーと二人三脚を行っていきます」


 今日集められたのはこの二つの競技に参加する人たちだ。


「二手に分かれて練習しますので自分が参加するグループの方に行ってください」


 皆だ動き出す。俺はリレーに参加するのでそちらの方に移動する。集まったのは男女五人ずつの計十人だ。女子のメンバーには結依が、そして男子の方には成瀬がいる。


「まずは走る順番を決めるために一度走ってみましょう。男子の皆さんからお願いします」


 結依に指示された場所まで移動する。


「合図したらこっちまで走ってきてくださーい!」


 思ったより距離がある。結依が手を振りながら声を出してくれている。


 男子五人が横並びになり走りやすいようにある程度距離をとる。


 俺たちの準備ができたことを確認すると再び結依が大きな声を出す。


「いきます。位置について、よーい、どん!」


 結依が上げていた腕を振り下ろす。俺たちは合図とともに一斉に走り出す。全身で風を感じる。一緒に走っている人たちは運動部ということもあってかなり早い。


 負けたくない!


 必死で足を動かし食らいつく。呼吸が邪魔だと感じる。少しでも早く……走って、走ってそしてーー


「ゴールです! お疲れさまでした」


「はぁ、はぁ……っ、はぁ、はぁ……」


 ゴールまで走り抜け立ち止まるが、呼吸が乱れて苦しい。


「はぁ、はぁ……」


 少しずつだが呼吸が落ち着いてきたきた。大きく息を吸ったり少しゆっくり呼吸するようにして乱れを整える。


 そんなことをしていると成瀬が近づいて来る。


「マジで速かったな。驚いた」


「はぁ、はぁ、ありがとう」


 まだ少し喋りにくい。成瀬の方はもう平気そうにしている。ちなみに結果だが、一番は成瀬だ。俺は何地下食らいついて三番目だった。


「負けるかと思った……危なかったぜ」


 そんなことを言いながら二番目にゴールした男子生徒がやってくる。俺と成瀬成もとにほかの三人も集まってきた。


「そんなに早いなんて何かやっていたのか?」


「いや、ずっと帰宅部だった」


「マジかよ、もったいねぇー。今からでも陸上部入らないか? 転校してからまだ部活には入っていないんだろ?」


「あぁ……でも、生徒会が……」


「それって今だけなんだろ?」


「まぁ……」


「なら考えてみるだけでも、な?」


 まさかこんなに誘ってくれるとは思わず勢いにたじろいでしまう。後ろには同じ陸上部の人が期待に満ちた目でこちらを見ている。


「落ち着けって、一ノ瀬が困っているだろ」


 成瀬が間に入ってくれる。


「わ、悪い。あまりにも逸材だったもんだからさ。だったこれで帰宅部だったんだろ? 練習すればもっと早くなるってことじゃん!」


「まぁな、言いたいことはわかる。この足の速さだったら俺たちサッカー部にもほしいくらいだしいな」


「だろ? てか、運動神経良いっぽいしどこの部活でもやっていけそうだけどな」


 もにすごく評価してくれている。まさかこんなにも褒めてくれるとは思っていなく、照れくささと困惑が入り混じる。


 まさかバイトをしていたことと、バイトのために体を鍛えたことがこんな形で評価されるとは……


「盛り上がっているところ悪いんだけど次、女子のほうやるから合図してくれない?」


 俺たちのもとに一人の女子生徒がやってくる。確か陸上部だった気がする。


「はいはい、わかったよ」


 同じ陸上部の男子生徒が答える。


 女子の残りの方はすでにスタート地点に移動していた。


 最後の一人だ駆け足でみんなのところに向かっていく。そして全員がそろったことを確認すると結依と同じように合図をする。


「いくぞ! 位置について、よーい、どん!」


 合図とともに一斉に走り出した。陸上部はやっぱり早いが結依だって負けていなかった。女子の方も結依以外が運動部のはずだがその中でも早い方だ。


 そして一気に走り抜ける。結果としては結依は二位でのゴールとなった。一番は先ほど俺たちに声をかけた人だ。


「はぁ、はぁ……負けちゃいました」


「そこは陸上部の意地ってね!」


 満足気に言う。しかしそこに三位でゴールした女子生徒が横やりを入れる


「胸が小さい分早かっただけじゃん」


「はあー!? 何よ! あんたなんて胸どころか足の速さでも負けてるじゃない!」


「何ですって! あんたより胸あるし!」


「今はそれ関係ないでしょ!? それに誤差みたいなものじゃない!」


 なぜだか言い合いを始めた二人。近くで結依が困ったように笑っている。


 確かに順番的には一位、二位、三位となったが、この三人は僅差だった。陸上部相手に僅差っていう結依がすごすぎるが……


「あの二人、陸上部の中でもライバルなんだよ」


「そうなのか」


「だからいつもあんな感じなんだ」


「仲は良さそうだな」


「まぁーな」


 言い争ってはいるがなんだか仲は良さそうな雰囲気に感じたので言ってみたが間違っていなかったらしい。同じ陸上部が言うのだからきっとそうなのだろう。


 ほっぺの引っ張り合いを始めたところで結依が止める。


「そこまでです。さっそく今の結果をもとに走る順番を決めましょうか。そのあとに陸上部の人たちからアドレスをもらいながらバトン練習をしましょう」


「了解」


「任せて」


 それから俺たちは陸上部を中心に話し合いをした。思いのほか走る順番はすぐに決まった。俺の走る順番は最後から三番目となった。結依は四番目で、俺は結依からバトンをもらうことになった。そしてアンカーは成瀬に決まったのだった。

あらためて今年もありがとうございました!

皆さんの応援のおかげで作家としてデビューすることが出来ました。素敵な一年となりました!

また来年もよろしくお願いします!

それではよいお年を!


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