第45話 再会
後書きに報告があります!
陽菜ちゃんの大きな声で教室が静まり返っていた。そして少しずつ状況を理解してきたクラスメイトから疑問の声が上がり始めた。
「お兄さんって?」
「陽菜ってお兄さんいたっけ?」
「いや、一人っ子だったはずだよ」
「いとことか?」
「だったらこんなに驚くなんて変じゃない?」
「確かに」
「じゃあ誰?」
「知らないけど」
「兄でもないのに陽菜にお兄さん呼びさせているってこと?」
「は?」
「俺も呼ばれてみたい」
「陽菜ちゃんとどういう関係なんだろう?」
「気になるね」
どんどん教室の疑問の輪が広がっていく。
唖然とこちらを見ていた陽菜ちゃんはふっと我に返り教室を見渡す。教室の雰囲気と自分に向けられる視線に気が付くと慌てて立ち上がりこちらに向かってくる。
「ちょっとこっちに来てください!」
「え? あ、あぁ……」
俺は訳が分からないまま陽菜ちゃんに手を引かれて教室から離れる。後ろのざわめきが大きくなり、多くの視線か背中に突き刺さるような感覚がある。それは教室からかなり離れるまで続いていた。
しばらく陽菜ちゃんに手を引かれながら移動していると、人気のないところまで来たところでようやく立ち止まった。
そしてこちらにぶつかるんじゃないかというほどの勢いで振り返り詰めよってくる。
「お兄さんなんでこんなところにいるんですか!? 急にバイトも辞めちゃうし! 本屋のおばあさんに聞いても知らないっていうから心配してたんですよ!」
「ご、ごめん。俺もいろいろとあって……ちょっと落ち着いて」
そういってぶつかるほどの距離にいる陽菜ちゃんと距離をとる。
「すぅーはぁー」
大きく深呼吸をすると少し落ち着いたのかさっきまでの勢いがだいぶ収まった。
「落ち着いた?」
「……はい、少しだけ……」
まさか俺もこんなところで再開することになるなんて……改めて陽菜ちゃんの姿を見て思う。
「前会った時とはだいぶ雰囲気が違うな。気づかなかったよ」
俺の記憶の中にある陽菜ちゃんはもっとおとなしい女の子という印象だった。本屋に来ていた時は落ち着いた雰囲気の服に三つ編みのおさげ。本が似合いそうな文学少女といった感じだった。少なくともギャルではなかった。
「うっ……」
跋が悪そうに顔をそむける陽菜ちゃん。その頬は若干赤く染まっている。
「地味な自分の変えようと思って……高校生になるから……頑張ろうと……」
声がどんどん小さくなっている。かなり恥ずかしいようだ。だが実際、陽菜ちゃんの頑張りは大成功しているようだ。
「良いんじゃないか? 前の陽菜ちゃんもよかったけど今の陽菜ちゃんも輝いているし可愛いと思うぞ」
妹感とは違うが、仲良くしてくれていた年下の女の子の頑張りを素直に称賛する。きっとかなり努力したのだろう。
「ほ、本当ですか!?」
「お、おう」
再び勢いよくこちらを向く陽菜ちゃんに若干気おされながら答える。
「っ! やった!」
小さくガッツポーズをすると誤魔化すように咳ばらいをして話始める。
「私のことは良いんです! そんなことよりお兄さんほ話です!」
「あー……実はーー」
俺はバイトをやめたときから今日にいたるまでの話をかいつまんで事情を話した。陽菜ちゃんは俺が貧乏な生活だったことも知っていたし、何かと心配してくれたりしてくれていた人だったので少し詳しく話した。バイトをやめたことや、両親が借金を残して消えたこと、幼馴染みの結依のところで借金の肩代わりなどお世話になっているということなどだ。少し長くなったが一通り話終えた。
「……そうだったんですね……」
「そんな顔しないでくれ。今は良い生活をさせてもらっているから平気だ」
「お兄さんがそういうなら……わかりました」
その時昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。
「昼休みつぶして悪かった」
「いえ、こちらこそすみません」
俺な当初の目的を思い出し、手に持っていた資料を渡す。
「これ、生徒会から体育祭実行委員の代表にって」
「ありがとうございます」
そういって俺から資料を受け取る。
「急がないと授業に遅れちゃうな」
「そうですね」
教室に向かった歩き出そうとしたところで陽菜ちゃんから呼び止められる。
「お兄さん!」
「うん?」
「また会えてよかったです! これからもよろしくお願いします!」
「あぁ、こちらこそよろしく」
その時の陽菜ちゃんの笑顔はまるで太陽のように輝いていた。
続刊が決定いたしました!
皆さんのおかげです。ありがとうございます!
続報をお待ちください!
書籍第一巻も発売しておりますのでまだ購入していない方は是非!
そしてまた明日も報告があるかもです……




